joy - a day of my life -

日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

『ハッピーノート』 草野たき(著)

2007年09月19日 | Book
草野たきさんが2005年に発表された『ハッピーノート』を読みました。

草野さんの処女作『透きとおった糸をのばして』を読んだときも思ったけれど、この二つの作品は、設定がかなりありふれている。どちらも、主人公はどこにでもいる平凡な女の子です。

しかし、「平凡な女の子」だろうが、変わった女の子だろうが、現実の生活では内面では誰もみな悩んで苦しんでもがいています。

そして、草野さんの小説の登場人物も誰もがみな、「平凡」な生活を送りながら、胸のうちでは激動的な人生を送っているのです。ちょっとしたことでこころを揺さぶられています。

それは実は10代の女の子にかぎったことではありません。

草野さんの作品は、そうした日常に生きる人々の心の機微を自然にとらえていきます。

主人公は、最初は自分を見失って、世の中の価値観に必死に自分を合わせて幸せを求めながら、ちょっとした出来事で自分の中の正直さを見つめるように強いられていきます。その出来事がとても小さなさざ波のようでありながら、登場人物たちのこころの中に大きなショックを与え、彼女たちを本当の自分に連れ戻していくのです。

草野さんの小説は、一つ一つの文章を読むことが、まるで生活を追体験していくようです。流れるように文章を追いながら、読者も主人公と同じような心的体験に直面させられるのです。