日曜日。
朝起きたら、外は激しい雪が降っていた。仕事に出るため外に出て車庫から車を出した。今日は3学部の一般入試があるため、いつもの時間に起きていつもの出勤。
すでに雪は足首あたりまで積もっている。ただ、かなり湿った雪だ。今日はそれなりに気温が上がるらしいからすぐに融けそうだ。
大学に着いて、「コンビニ」で新聞を買いに行こうと外に出たら、途中の下り坂で雪に滑ってすってんころりん。右の手のひらを擦り剝いてしまった。
今冬は一度も雪道で滑らなかったのに・・・ちくしょう。
午前中に入試は終了。
家に帰って珈琲を飲みながら「日経」を読む。
新聞一面の「チャートは語る」が興味を惹いた。
新型コロナウイルス蔓延によるワクチン接種の進展で、仮に収束傾向になれば、一気に消費拡大が始まるという(まあ、当然の成り行きだろう)。各国の行動制限は緩和されるから、個人消費も爆発的に活性化されるはずだ。
行動制限と消費は密接に連動して、家計貯蓄率をかなり押し上げている。そして、国におけるワクチン接種のペースは大きく消費回復をも左右する。それらのデータが載っていた。
早期にワクチンの接種に踏み切ったイスラエルは、既に全人口の3割が必要な2回接種を終えている。このままのペースで接種が進めば今春にはイスラエルの人口の7割以上がウイルス自体に免疫を持つ「集団免疫」に達するらしい。アメリカでも秋にはそうなる。
しかし、接種開始が遅れている日本はそういうことにはならないだろう。
こういう部分でも、各国間の格差は少しずつ広がっているのだ。
そんな日曜日の午後、一冊の小説を読み終えた。
2020年の全米図書賞を受賞した柳美里の小説「JR上野駅公園口」だ。
柳美里という一人の人間に対して、これまでずっと興味を抱いてきた。全部ではないけれど、彼女が書いた小説やエッセーなんかも読んできた。かなりハードな生き方をしてきた人だと思う。
「JR上野駅公園口」は、1933年、天皇と同じ日に生まれた福島県相馬郡(今の南相馬市)出身の一人の男の生涯が、硬質な文章のなかで語られてゆく。
男は東京オリンピックの前年、1963年、出稼ぎのために上野駅へと降り立つ。そして、福島に残した妻や子供(長男と長女)のために必死に肉体労働で稼いだ金を仕送りし続ける。男は、日本の高度経済成長期を支え、家族を支え、天皇陛下を遠くから見続けてゆく。
しかし彼はホームレスになってしまう。
愛した息子は早くして亡くなり、苦労をかけた妻もこの世を去り、娘の世話になることが忍びなく、男は独り「上野駅」へと降り立ち、「上野恩賜公園」での辛い生活を始めるのだ。
そして時代は激しく変わる。
「上野恩賜公園」には大きな記念館や博物館が点在しているため、皇族がよくこの地を訪れる。そこにホームレスたちが徘徊していることが役人には目障りなのだろう。「山狩り」と呼ばれる、皇族が訪れる前にホームレスの人たちを公園から追い出す「特別清掃」が行われるのである。
彼らは、それまで住んでいた「場所」を一斉撤去されることに・・・。
重いテーマである。
ひんやりとした言葉が連なる。読後感も切なさが覆う。ラストの、「3.11東日本大震災」と交錯する箇所は圧巻だ。
心に、何かが宿る。
何処にも行けなかった人間、何処にも拠り所を見出せなかった人間、何処にも安寧の地を探せなかった人間の、途轍もない哀しさと孤独がここにある。
柳美里の小説「JR上野駅公園口」。
読むべき小説の一冊だろう。
朝起きたら、外は激しい雪が降っていた。仕事に出るため外に出て車庫から車を出した。今日は3学部の一般入試があるため、いつもの時間に起きていつもの出勤。
すでに雪は足首あたりまで積もっている。ただ、かなり湿った雪だ。今日はそれなりに気温が上がるらしいからすぐに融けそうだ。
大学に着いて、「コンビニ」で新聞を買いに行こうと外に出たら、途中の下り坂で雪に滑ってすってんころりん。右の手のひらを擦り剝いてしまった。
今冬は一度も雪道で滑らなかったのに・・・ちくしょう。
午前中に入試は終了。
家に帰って珈琲を飲みながら「日経」を読む。
新聞一面の「チャートは語る」が興味を惹いた。
新型コロナウイルス蔓延によるワクチン接種の進展で、仮に収束傾向になれば、一気に消費拡大が始まるという(まあ、当然の成り行きだろう)。各国の行動制限は緩和されるから、個人消費も爆発的に活性化されるはずだ。
行動制限と消費は密接に連動して、家計貯蓄率をかなり押し上げている。そして、国におけるワクチン接種のペースは大きく消費回復をも左右する。それらのデータが載っていた。
早期にワクチンの接種に踏み切ったイスラエルは、既に全人口の3割が必要な2回接種を終えている。このままのペースで接種が進めば今春にはイスラエルの人口の7割以上がウイルス自体に免疫を持つ「集団免疫」に達するらしい。アメリカでも秋にはそうなる。
しかし、接種開始が遅れている日本はそういうことにはならないだろう。
こういう部分でも、各国間の格差は少しずつ広がっているのだ。
そんな日曜日の午後、一冊の小説を読み終えた。
2020年の全米図書賞を受賞した柳美里の小説「JR上野駅公園口」だ。
柳美里という一人の人間に対して、これまでずっと興味を抱いてきた。全部ではないけれど、彼女が書いた小説やエッセーなんかも読んできた。かなりハードな生き方をしてきた人だと思う。
「JR上野駅公園口」は、1933年、天皇と同じ日に生まれた福島県相馬郡(今の南相馬市)出身の一人の男の生涯が、硬質な文章のなかで語られてゆく。
男は東京オリンピックの前年、1963年、出稼ぎのために上野駅へと降り立つ。そして、福島に残した妻や子供(長男と長女)のために必死に肉体労働で稼いだ金を仕送りし続ける。男は、日本の高度経済成長期を支え、家族を支え、天皇陛下を遠くから見続けてゆく。
しかし彼はホームレスになってしまう。
愛した息子は早くして亡くなり、苦労をかけた妻もこの世を去り、娘の世話になることが忍びなく、男は独り「上野駅」へと降り立ち、「上野恩賜公園」での辛い生活を始めるのだ。
そして時代は激しく変わる。
「上野恩賜公園」には大きな記念館や博物館が点在しているため、皇族がよくこの地を訪れる。そこにホームレスたちが徘徊していることが役人には目障りなのだろう。「山狩り」と呼ばれる、皇族が訪れる前にホームレスの人たちを公園から追い出す「特別清掃」が行われるのである。
彼らは、それまで住んでいた「場所」を一斉撤去されることに・・・。
重いテーマである。
ひんやりとした言葉が連なる。読後感も切なさが覆う。ラストの、「3.11東日本大震災」と交錯する箇所は圧巻だ。
心に、何かが宿る。
何処にも行けなかった人間、何処にも拠り所を見出せなかった人間、何処にも安寧の地を探せなかった人間の、途轍もない哀しさと孤独がここにある。
柳美里の小説「JR上野駅公園口」。
読むべき小説の一冊だろう。