八戸「本八戸駅」の高架プラットホームに立って鮫方面からやって来る八戸駅行きの電車を待っていたら、ひんやりとした夜風が吹いてきて線路沿いに消えていった。
時間は夜の7時57分。真っ暗な空に明るい満月がぽっかりと浮かんでいる。
今夜は中秋の名月。旧暦8月十五夜。
でも中秋の名月が必ずしも満月とは限らない。 それが今夜はちょうど満月が見られるという。次に満月と中秋の名月が重なるのは7年後の2030年になる。
7年後・・・いったいどういう自分がそこにいるんだろう?
美しい中秋の名月を眺めながら、ひとり電車に乗る。
今日は八戸市に行ってきた。「八戸高校130周年記念式典」に出席するために、「新幹線」に乗って会場となる「八戸市公会堂」へと出向いたのだ。
いい天気で気温も高い。スーツにネクタイという格好なので、少し歩いただけで薄っすらと汗が滲む。
式典が終わって、「祝賀会」会場であるホテルまでの道を歩く。
夕暮れが迫っている。薄い蜜柑色の空が広がっていた。とても綺麗な夕暮れの空だ。
「祝賀会」は、市長、国会議員を含めて4人もの挨拶があり、もうそれだけで一時間近く掛かってしまった。
乾杯を終えて、円卓の隣同士と名刺交換。学校の主治医だという女性医師と暫しの懇談をする。最後までいたかったけれど帰りの新幹線の時間が迫って来たので、ホテルを出て、そこから歩いて「本八戸駅」へと急いだ。
そこで見たのだ、美しく輝く満月を!
同じプラットホームに手を繋いで離さない高校生のカップルが立っていて、同じように秋の夜空に浮かぶ満月を微笑みながらじっと見ていた。
彼と彼女の7年後はどうなっているんだろう? また二人、手をしっかり繋ぎながら、中秋の名月を見ているんだろうか?
出来たらいいね。
そんな爽やかな高校生カップルを眺めていたら、なぜか突然、高校時代の懐かしい記憶が蘇って来た。
彼女は高校一年で、こっちは高校三年だった。毎日のように放課後待ち合わせてデートをした。いつも手を繋いでじゃれ合っていた。あんな楽しい一途な日々も確かに人生の途上であったのだ・・・。
その頃の様々な場面が、幾つも幾つもフラッシュバックしていった。
ああ、これもまた、こんなにも綺麗な中秋の名月から発せられる、摩訶不思議なちからなんだろうか・・・。