そして・・・。
ドイツで暮らしていた友人の最愛なる娘さんが、末期の乳がん(ステージⅣ)で余命数か月と青森の医師から残酷な宣告をされたものの、意を決してドイツへと帰ることを決め、そのドイツ国内で乳がん治療を受けることにした、その後だけれど・・・。
そこからが凄かった。そこからが凄いというか、友人が話してくれたその事の顛末を聞いて、いい意味で唖然としてしまった。
ドイツに戻った友人の娘さんが、どういう伝手と経緯でがん治療を請け負う病院を探したのかまではよく分からないけれど、ドイツにあるがん治療病院へと駆け込み、そこで乳がん治療を行った結果、なんと、完治したのである!
完治!
それも一切乳房を切除するような外科手術は行わず、投薬と若干の放射線治療のみだったという!
なんなんだ? これは・・・。
じゃあ、日本での医師による診断と治療は一体なんだったんだ?
もちろん、定期的な検診と薬の投与はこれからも必要らしい。でも、本人は完全に普段の生活へと戻り、大好きなスキーも再開し、元気にドイツと日本を行き来しているらしい。
これが友人から聞いた話の一部始終だ。
それにしても、なんで日本だとがんを切除しても余命数か月で、ドイツだと外科手術も行わず、薬と若干の放射線治療だけで乳がんが完治することになるのだろう?
これって、完全な医療格差じゃないか・・・。
ただ、がんになったとしても、それぞれの進行度合いや年齢等の個人差が微妙に影響するだろうし、短絡的に、この国では治ってあの国だと治らないなんてことも言えない。
でも友人の告白を聞いて、なんとも遣り切れない気分になったのは事実だ。
坂本龍一氏の「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」を読むと、彼はアメリカ・ニューヨークで世界最高級のがん治療を受けていたことが分かる。それでもそこで見つけられなかったがんの部位が、日本に帰国して治療を受けた病院で見つかったということも書いてあった。
彼は2014年に患った中咽頭ガンから始まり、直腸ガンおよび転移巣の手術を含め、その数は6回にものぼっていた。
「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」は、がんの闘病生活だけが書き込まれているわけじゃない。3.11震災後の福島復旧活動やリリースされたアルバムやコンサート活動の模様も丁寧に綴られている。
最も胸に刺さるのは、彼が死の直前に漏らしたという「つらい。もう逝かせてくれ」という言葉だろうか・・・。
いま、坂本龍一氏のアルバムを年代順に少しずつ聴いている。
そしてぼくもまた、あと何回、満月を見ることができるのだろうか?