「ああ、今日はなんていい一日だったんだろう」・・・とまでは思わなくても、煩わしい事など一切起こらず、とても静かで落ち着いた、そんな一日が人生の中にはある。
まあ、一年の内で何日か指折り数える程度しかないだろうけど・・・。
でも、仮にそんな素晴らしい一日であったとしても、心の中を不安の風が不意に吹き抜けたりすることもまたあったりする。
「こんな穏やかな一日なんてそんな続くはずないじゃないか。必ず、明日になればなったで、色んな嫌な事や面倒臭い案件が次から次へと降りかかって来て、俺の心を悩ませ続けるに決まってる」のだと。
そうなのだ。
毎日がすべて満たされ、充実していて、幸福感で満たされる・・・そんな日なんてあるはずがない。春夏秋冬、そんな日が続くなんて絶対ありえない。
楽しい日があれば、その何倍もの数の辛くて哀しい日があり、面倒で煩わしくて気の滅入る日々は、これからもずーっと続いてゆく、人生ってもんは。
数週間前、何日か「凪」のような穏やかな日が続いた。とても久しぶりのことだった。
日中の仕事を終え、車を駐車場から出し、最近系統づけて処女作から順番に聴いている「キング・クリムゾン」を流しながら夕方のラッシュアワーに紛れ込んだ。
家へと帰り、夕食を摂り、いつものように「スポーツ・ジム」に行って汗を流し、サウナとお風呂に入って夜空に輝く星たちを眺めながら空いている夜9時過ぎの国道を走った。
とても穏やかで充実した時間だった。
ほんの少しだけれど幸せな時間に身を任せた。夜もすんなりと眠りに落ちることが出来た。お月様が綺麗な夜空にぽっかりと浮かんでいた。
ところがその翌日から、案の定、また幾つもの気の滅入るような嫌な出来事が雪のように降ってきた。
やっぱり、そうきたかぁ・・・。
いいことがあれば、悪いことがある。こうして日々はまた続いてゆく・・・。これが人生だ。
なんにも起こらない、ただただ平凡な一日、これこそが真の幸福たる一日だろう。心からそう思う。
こうしてまた、重たい荷物を背負い込み、直ぐに終わってしまう幸せな一瞬のことを考えながら、まだまだ続く長い長い路を、歯を喰いしばり歩いてゆくしかほかに術などないのである。
ああ。
人生とはかくも苦しいものなのか・・・。