淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

玉木宏が主演するテレビ朝日系ドラマ「桜の塔」。男って生き物は、嫉妬深くて浅はかで愚かで他者を蹴落としてでも登り詰めたい、そんな哀しい動物なのだ。

2021年05月13日 | Weblog
 誰もがみな、いま働いているその「組織」の中で最上階まで登り詰められるわけじゃない。
 入社した人間たちは激しい出世競争に巻き込まれ、一人ひとり脱落してゆく。もちろん、そういうレースには初めから加わらず、組織内リタイヤを決め込む人間だっているだろう。それでも過酷な出世競争の渦の中には、否が応でも組み込まれ、何らかの影響は受けるはずだ。返り血を浴びるはずである。

 たとえば、キャリア官僚への道を選ぶという場合がある。
 キャリア官僚として省庁に採用されると、その省庁のトップ(主に事務次官)への凄まじいまでの出世レースがそこから始まってゆく。

 大学を卒業して20代で採用されたその後は、同期の中で激しく出世を競い合い、50代後半で最終ゴールとなる事務次官が誕生するまでそれは続いてゆく。事務次官になるための出世レースに敗れた者は、順次「天下り」をして官庁を早期退職して、別の民間企業や関連団体へと再就職する。
 そして、その新しい組織の中でもまた、同じような壮絶なトップ取りゲームは延々と繰り返されてゆく・・・。

 玉木宏が主演するテレビ朝日系ドラマ「桜の塔」は、警察官僚たちの派閥や出世レースを描く警察ミステリー・ドラマだ。
 「桜の塔」とは、桜の代紋を掲げる警視庁をイメージしているのだろう、警視総監の座をめぐる激しい出世バトルが描かれてゆく。

 幼少期、憧れていた警察官の父親の不可解な死を切っ掛けに、警察権力をその手に収めようと警視庁に入った理事官を玉木宏が演じていて、前回第4話のラスト、警視庁の押収品横流し事件の真相を告発しようとしていた警察官の父を自殺に追い込んだ犯人が、自らが所属する「外様派」派閥のトップである(このドラマでは「外様派」、「東大派」、「薩摩派」と、それぞれキャリアたちが属する派閥が描かれる)刑事部長の椎名桔平だったと知る、衝撃的な場面でドラマは終わった。

 ドラマ「桜の塔」は、東京都を管轄する警察組織である「警視庁」を舞台にしたドラマだけれど、日本全国47都道府県の警察官たちを指揮しているのは、「警察庁」の警察キャリア官僚たちである。

 キャリアは「警察庁」に勤務する国家公務員であり、ノンキャリアは都道府県警察に勤務する地方公務員という違いがある。
 キャリアになるためには、難関中の難関である「国家公務員総合職採用試験」を受けることが必要だ。
 そしてそれだけではなく、「国家公務員総合職採用試験」合格者だけが行える「官庁訪問」で、警察庁での複数回の面接試験をすべてパスした者だけが「警察庁」へ採用され、それらの警察官が「警察官僚」と呼ばれているのだ。

 普通であれば、「巡査」、「巡査部長」、「警部補」、「警部」、「警視」、「警視正」、「警視長」、「警視監」、「警視総監」を経て、警察のトップである「警察庁長官」まで辿り着く。
 長い長い道のりだ。

 ところがキャリア組は、採用後いきなり警部補からスタートする。その4年~5年後にはもう警視に昇進。ストレートにキャリア官僚になったら、20代後半で警視に昇進することになる。
 都道府県採用の警察官が40歳以上にならないと昇進できない警視に、キャリア組なら20代後半にはもう昇進してしまうのだ。
 つまり、ほんの一握りの者だけが、警視総監、警察庁長官のポストへとたどり着ける。

 ちなみに、省庁のトップ、事務次官の年収は約2300万円。退職金は5500万円程度だといわれている。そこからまた、引く手あまたの「関係機関」や「民間企業」へと「天下り」したりすると、その都度、高給とボーナスが約束され、「上級国民」として世の中を闊歩できる。

 ドラマ「桜の塔」も、醜い出世欲に駆られた男たちが相手を裏切り、相手を蹴落とし、罠にかけまくるという、エリート官僚らしからぬ(あっ、らしいのかもね)行為を頻繁に繰り返し、ひたすら上を目指すことだけを姑息に考える。

 こういうシーンを観ていると、なんか、ドラマを観ているこっちまで淋しくなる。
 でも、これが現実だし、どこにでもゴロゴロ転がっている真実だ。
 男って生き物は、嫉妬深くて、浅はかで、愚かで、他者を蹴落としてでも登り詰めたい、そんな哀しい動物なのである。








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