うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

村上春樹 蛍、納屋を焼く、その他の短編

2012年04月14日 | 本と雑誌

1年近く前に神の子たちは皆踊る の事を書いた。まだ世の中が震災の影響を抜けきっておらず、僕自身も重い気持ちを抱えたままだった。それにしても、あれからもう1年もたつんだな。
今回はそのときを思い出して、気分を変えたいと思い手に取った。

蛍、納屋を焼くは、ハードカバーの本を持っている。初版ではなかったかもしれないが、文庫になる前に買ったのかな。「蛍」は、「ノルウェイの森」の原型となる作品だが、今読むと何となく奥行きのないような、妙なイメージだ。これはやはり短編ではおさまりきれない内容だったのだろう。
「納屋を焼く」は村上らしい、切れ味の良い短編だ。つまんないこと言うようだけど、おいしいおつまみを食べたな、という満足感みたいなものを感じる。

「踊る小人」(関係ないけどATOKはこびとを小人と変換してくれない・・)は、村上のファンタジーにしては少し重い感じがする。何となく安部公房の作品を連想してしまった。「世界の終わり・・」につながる系列なんだろうけれど、それよりは小さくまとまっているところが良くも悪くもある。これ、以前に読んだという印象がないんだよな。

「めくらやなぎと眠る女」これも、数年前に英訳の本で初めて読んだような気がする。英語版はこれがメインタイトルになっていた。耳を悪くしたいとこを、通っていた高校の近くにある病院に連れ添っていく、休職中の若者の話だ。高校時代に通い慣れていたはずのバスルートなのに、感じる違和感、不安感、診察中のいとこを待ちながら思い出す、高校時代の入院見舞いのこと、帰り道でのいとことの会話。とりとめがないようだが、今の自分に対する違和感のようなものを、水彩画のように書いているような感じがした。優れた作品だと思うが、僕が今回読んで感じたことは、端正で古典的な構成の短編だ、ということと、もう一つは、主人公との世代差を強く意識してしまった、ということだ。作品が若者の不安定な気持ちをみずみずしく描いているからだと思う。

思えば村上作品を読み始めたのは20歳ぐらいの頃で、そのころから作中人物は20台から30台ぐらいの、社会に完全に絡め取られていないような世代の人たちが中心だった。それを僕は自分に投影しながら生きてきた。その頃と、今とでは感想の持ち方が違うのかもしれない。
有り体な言い方をすれば、なんだか自分の年を感じてしまった。

若い頃と今が違うのは、自分と現実社会との関わりがより強くなり、逃げ場がなくなっているところだと(今は)思う。というより、そうしないようにすればいいのだが、いつの間にかそうなっている。昔は簡単に夢の世界に浸ることができるような気がしたのだが。

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