うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

高野文子 るきさん

2012年04月21日 | 本と雑誌

 ちょうど1年前に買って読んだ。書店の本棚に、表紙を手前にして陳列してあったので手にした。名前は聞いたことがあったが、読むのはじめて。
世の中は復興に向けて動き始めてはいたが、まだ重苦しい空気が抜けきれず、なにより自分自身がどうにも重苦しい気持ちを抱えていた。

ウェブで検索すると、バブル絶頂期の女性誌に掲載され、その華やかな雑誌の中では浮いた存在だった、という書かれ方をしている記事が多い。すこし浮世離れしたるきさんは、時代にかかわらずどこでも浮いてしまうような気がするが、たとえば中尊寺ゆつこさんなんかだと、はまっていた、と言うことなのだろうか。僕は女性誌は読んでないから、よくわからないけど。

ただまあ、今となってみると、るきさんは社会全体に余裕のあった時代だからこそ、書かれたような気もする。今、月に1週間診療報酬の計算をして、慎ましく生きるにしても生活できるのかしら。大体そういう職務って今でもあるのかな?

るきさんは92年12月に連載終了しているのだが、最後の頃になると「ボーナス減の不景気が・・」とか、「世間は景気が悪いらしいしね」「そうらしいわね」みたいな台詞が出てくる。お金に関する話とか、「贅沢」の話も、後半になって出てくる。よく見ると世相の動きが微妙に反映しているようだ。

本筋から離れた感想をもう一つ言うと、やっぱり時代の空気が随所に感じられて、懐かしいんだよね。えつこさんみたいな人はオフィスにいたし、僕はそのころ小川君のような若手(小川君のようにえっちゃんに思われていたという意味ではない)だったわけで、ついそういう視点からこれを読んでしまう。るきさんのようという意味ではないが、ひょうひょうとした人もいたしなあ。
昔が懐かしいなどと、言いたくはないが、毎日今の社会の状況を目にしていると・・いや、そんなことを言うのはやめよう。

絵がうまい。隅々の小道具に至るまで、手抜かりがないし、コマ割が一定の平板な構成なのに、アングルの工夫で見事にそれを補っている(漫画読みではないので、技術的なことはわからないけど)。絵柄は4年半のうちにはだいぶ変わっているが、純粋に絵だけ見ると、比較的初期の89年頃までが一番好きだ。

お話としては、やはり初期のクリスマス・パーティの巻からお正月、火鉢のはなしあたり(この辺は絵も好き)、服をみんな洗濯してしまい、エプロンする話、せんべいをくわえながら自転車に乗って落とす話、かな。ステーキ肉を買ってお米が買えなくなる話はかなり異色。そして最後の回は、文庫版解説の氷室冴子さんも書いているが、僕もとても好きだ。僕が思うに、こういう思い切り、そして後腐れのない人間関係というのは、男性にはなかなかできないものだと思う。


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