うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

MET ライブ・ビューイング2014-15 ヴェルディ マクベス

2014年11月03日 | 音楽

メトロポリタン・オペラの公演を上演数週間で映画化して世界の映画館で上演するという企画、MET ライブ・ビューイング、今シーズンはヴェルディのちょっと珍しいオペラ、マクベスで幕を開けた

今最も脂ののっているディーヴァ、アンナ・ネトレプコ(このラストネームは苦手で、なかなか覚えられない・Netrebkoね)の名演が前評判としてだいぶ伝わってきていたので、見に行ってきた。

ネトレプコは下馬評通り、はまり役で大変な迫力だった。夫をそそのかして王妃に上り詰めてしまう話だが、この役、彼女本人のことではないかと思うほど、はまっている。

ネトレプコは取り澄ましたような従来型のディーヴァとは違い、野心をむき出しにしたような性格で、その辺のストレートさがアメリカ人(だけじゃなくて世界中の人たちか)に受けているような気がする。このシリーズでは幕間で主役にインタビューをするのだが、彼女の受け答えはとてもポップで楽しい。ロックスターみたい、かな。

マクベス役のジェリコ・ルチッチ。彼の存在感もネトレプコに全然負けていないと思う。立派な体格で、映画俳優をやらせたら警察署長とか、CEOとかやらせたら似合いそうな感じだが、その大男が、妻にそそのかされて、ちょっとうじうじするのである。この微妙な描写を見ていると、ヴェルディのおとこ心、みたいのがわかるようで、実に興味深い。

SNSでも同じことを書いたりしたが、ヴェルディは中年男の悲哀とか、そういうものをとても大切にした人なんじゃないか、という気がしている。マクベスや、オテロ、あるいはリゴレットなどに出てくる、ちょっと屈折した中年男の心理描写が実にうまい。もちろん、シェイクスピアをはじめとする原作者が作り上げた人物像だが、その人物を音楽で描写したのはヴェルディその人だ。ファルスタッフはは中年というか、もう少し年配だが、作曲中ヴェルディはファルスタッフに相当入れ込んでいたらしい。プッチーニが蝶々さんに入れ込んでいたのとは対照的で面白い。

たぶん、ヴェルディなら日本の「寅さん」ものとかも、喜んで見ていたかもしれない。

昔はそういうことはわからなかったし、「椿姫」なんてのはどうもでてくる人物描写がいまいちで、好きになれなかった。歳を重ね、自分が中年男になってからだんだんとそういうことがわかるようになってきた・・。

本作はいわゆる現代ものの演出手法だが、一部に見られるような、演出の自己主張がうるさく出るようなタイプではなく、非常に交換が持てる演出だった。全体に現代と言うより、冷戦時代のような服装で、ほんのすこし懐かしい味わいもある。魔女達は東ベルリンとかどこかの東欧で行列する主婦達という印象(なんちゅう感想だ・・)だ。11世紀の衣装といっても、今の人にはなじみがないし、もし考証通り再現できたとしても、どうしてもそれが自己主張を始めてしまう。むしろ現代版の方が、ストーリーが浮き出しになってわかりやすくなるようだ。

写真は本文とは関係ないが、帰りに見かけた歌舞伎座。夜の部開演だが、席を待つ人々がだいぶ集まっていた。

40歳になったキティ。

秋はいつの間にかやってきている。

 

コメント
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