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日本語の由来

2008-04-22 23:12:33 | 言葉と文字

 月本洋「日本人の脳に主語はいらない」によると、日本語は母音を重視する言語で、英語は子音を重視する言語ですが、母音を重視する言語は主語を省略する傾向が強く、子音を重視する言語は主語を省略しない傾向が強いそうです。
 ところで、現代の英語は主語が必要とされる言語の代表ですが、古英語の場合は主語が省略される場合が多かったそうで、そうなると古英語は母音を重視する傾向が現代より強かったのではないかと推測されます。
 上の表はこの本にある現代英語と古英語の対照表の抜粋です。
 古英語の場合の発音は文字通りに読めばよいということですが、この例で見る限り古英語は語尾が母音で終わっているものが多く、現代英語が子音で終わっているのと対照的です。
 つまり英語はもとは母音重視の言語であったものが、子音重視の言語に変化したのです。

 母音の比重が変化するに伴って単語の発音が変化し、同時に単語のつづりも変化しています。
 日本語の旧カナ遣い論者がよく引き合いに出す、knightのようにもとはkが発音されていて、その後発音が変化してもつづりは変っていないというような例ばかりではないのです。
 もとは発音にあわせて綴りができたのでしょうから、発音の変化に応じて綴りが変化しても不思議でないし、自然でもあったのです。

 この本では母音の比重の大きさによって、多くの言語を分類し、母音の比重の高い言語ほど主語を省略する傾向が強いと分析しています。
 この結果世界の言語の中で日本語はポリネシア語と並んで、最も母音の比重が高く、主語の省略傾向が強いとしています。
 世界の大多数の言語に対して、ごく少数派の特異な言語という形になっています。
 
 日本語の語彙の中にはポリネシア語由来のものもかなりあるので、日本語の起源はポリネシア語だという説は以前からあります。
 母音比重が高く主語を省略する傾向も共通なので、いよいよ日本語のルーツはポリネシア語かと思われそうですが、語順など文法的には全く違います。
 文法的には日本語はモンゴル語や朝鮮語と同じ語順で、アルタイ語系といわれ、朝鮮語と同系という説もあるのですが、母音の比重で見ると朝鮮語とは距離があります。
 
 そうなると日本語は朝鮮語などのアルタイ語系の言語と、ポリネシアごとが混交して出来上がったとも言えそうですが、英語のように母音の比重が時代を経るにつれ変化したと考えれば、アルタイ語系だという可能性も棄て切れません。
 アルタイ語系で子音の比重が高かったのに、語尾の子音が落ちて語尾が母音になったと考えられなくもないからです。
 とはいえ、子音の比重が減って母音重視言語に変ったという例が他にあるわけではないので、こうと即断するわけには行きません。
 日本語の場合は、***語と同系だというと、そうではないという証拠がたくさん出てくるので由来を特定することはできないのです。