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イメージの操作

2008-04-20 23:30:55 | 言葉とイメージ

 人間がものを考えるときは言葉で考えているといわれると、そんなものかなと思いますが、言葉を使って考えるといえば、脳の働きだけのような感じがします。
 たとえば76+87という計算をするとき、暗算ならば「76に80を足して156、156に7を足せば163」というふうに頭の中で言葉にして考えて答えを出しているようにみえます。
 ところがソロバンを使って計算をするときは、同じ桁同士の数の足し算をするときの規則に従って珠を動かすだけです。
 珠を動かした結果を見ればそれで答えが分る仕組みになっています。
 
 ソロバンを使って計算するときは、規則に従って指を動かすことによって答えが得られるのですから、計算過程は指による珠の動きで、珠の動きはソロバンという道具の仕組みに依存しています。
 脳の働きよりも、ソロバンという道具の仕組みを使って、その結果答えが得られるのですから、頭で考えるだけでなく、外部のものの仕組みによって結果が得られています。

 珠を動かすのは脳の働きがあるからで、ソロバンの珠自体に計算の働きがあるわけではないというふうにも考えられますが、ソロバンの物理的構造が変ると計算できなくなりますから、やはりソロバンの仕組みによって計算ができるのです。
 たとえば、図の下のようにソロバンの珠がひとつなくなって、下段が3つの珠になっている場合は、76に87を足して156という結果を正規の四つ球の場合と同じやり方で得られるように見えます。
 ところが76に78を足そうとすると、同じ珠の動かし方ではできなくなります。
 10の位の7に7を加えれば10の位は4になりますが、この珠では4を表わすことができないのです。

 それではこのようなソロバンは全く役に立たないかというと、これは8進法の計算に使うことができます。
 上の珠は5でなくて4として使えば、珠の動かし方は10進法の場合と同じです。
 図の例では二桁目では上の珠が4と下の珠が2で6、一桁のところは上の珠が4で下が1ですから5で、数字で表わすときは65となります(10進法になおすと6×8+5で53)。
 これに66(10進法では8×6+6で54)を足すと6は8-2ですから2を引いて上の位に1を足すという操作で右のように153という結果が得られます(10進法では64×1+8×5+3で107)。
 
 もし8進法の65+66を言葉を使って暗算するとなれば、65と66を10進法に換算して10進法で計算し、さらにこれを8進法に直すというので頭の中だけではとても難しくなります。
 珠の動かし方を覚えれば、8進法のような計算は暗算でするより、専用ソロバンを使ったほうがはるかに楽になります。
 一番簡単なソロバンは2進法のソロバンで、上の珠がなく下の珠が1つのものです。
 ソロバンのように道具を使う場合はこれをイメージ化することができますから、珠を動かすというイメージ操作で結果が得られるから便利なのです。