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グレイヴディッガー(高野和明/講談社文庫)

2006-03-13 14:18:59 | 
少年の頃から警察のお世話になるような悪事を繰り返しすっかり悪党面も板についた八神俊彦。
彼が決心した一世一代の善行をついに実行できる機会が訪れた。
ドナー登録していた骨髄移植の患者が現れたのだ。
移植準備のために入院先の病院へ向かおうとした矢先、名義交換をして借りていたマンションの自室でその交換相手である男が、両手の親指と反対の足の親指とを縛られた状態で湯の沸騰した浴槽で茹で殺されていた。
移植相手が待っているこの状況で警察に捕まっている時間はない。
その殺害方法は中世の異端審問員を殺すという伝説の墓掘り人『グレイブディッガー』を真似た方法らしいということが明らかになり、逃亡を謀る八神を警察に加えて謎の男達が追跡に加わる。
そして八神の知る由もないところで同じ殺され方をした女性がみつかり、更に同一犯と見られるグレイブディッガーを模した連続殺人が一夜のうちに次々と起こってゆく。
被害者の共通点はドナー登録者であるという以外バラバラだった。
これはカルト集団が絡んだ犯行なのか?

始めにこの本のあらすじを友達から聞いたとき、正直あまり面白くなさそうと思いました。
そして読み始めて浴槽で死体が見つかるあたり、よくあるサイコホラーかな、と軽く思いながら読み。。。
ところが読み進めていくにつれ、どんどん面白くなってくるではありませんか。
まずこの主人公の八神のキャラクターがいいです。
ずっと悪いことをし続けてきてという設定ですがどうも憎めない。
しかし逃亡を謀るためにサラリーマンを恐喝してお金を取ったりなんていうことも当たり前のように平気でやっていきます。
そして明日の朝までに病院に着かなければならないのに2つの追っ手を受けてなんともじれったい速度で徐々に近付いていくところが真骨頂。
解説にもありますが「グレイヴディッガー」という存在について大学教授の口を借りて説明されるのですが、とてももっともらしくてそれが作者の創作であるというのが驚きです。
ただ犯行現場に現れるグレイヴディッガーはちょっとホラー映画のキャラクターめいてちょっと現実感がなく無理を感じました。
それは置いても面白い小説です。
『13階段』も文庫化されているのでこちらも近々読んでみたいと思います


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