チョコレート空間

チョコレートを食べて本でも読みましょう

推理小説(秦建日子/河出文庫)

2006-04-20 09:47:12 | 
アンフェアなのは、誰か

そんな文が書かれた木の栞が殺人現場に残される連続殺人が起こる。
被害者同士にまったく接点はない。
その後事件どおりに書かれた『推理小説・上巻』が「3千万で落札せよ」というメッセージと共に警察と出版社に送られてくる。

最初に本ではなくテレビで篠原涼子主演の『アンフェア』というタイトルになっていたドラマを見て、テレビドラマの推理物にしては設定が凝っていて面白い!と原作を読んだという順番でした。
自らの書いた小説にのっとった殺人、その犯人が逮捕されたかと思ったところでまたしても
「アンフェアなのは、だれか」
というメッセージがつけられた幼女誘拐。
その誘拐の身代金は、誘拐を公開して全国に「被害者を助けたければ何億集めろ」と、被害者の母親の口座に募金をさせるという募金型誘拐。
身代金の集金法も母親に指定した会社の株を買わせて一気にその会社の株価を上げるというもの。
そしてこの事件も解決したように思われた後に「X(バツ)」マークを被害者につけた連続殺人が…。

ということだったんですが、原作はなんとドラマの3~4話あたりのところで終わり。
あれ?
募金型誘拐は?
バツマーク殺人は?
ってゆーか犯人違うんだけど…
という驚きが。
小説は小説なりの細かい心理的描写はあるものの、原作よりドラマのほうが手が込んでるというパターンは初めてかも。
それともこの主人公、雪平夏見刑事の続編を書いているというのでそのあたりの話が入っているんでしょうか?
すごく謎。
ドラマもドラマで最終話はちょっとこじつけめいていましたが。
ドラマで手の込んだ推理物の場合、これって犯人を視聴者の意見でいちばん少ないとか意外性があるとかだけで決めたんじゃないの?
ストーリーとしてはどうなの?
と思う時があるんですが(昔やっていた「QUIZ」とか)今回もその感は否めませんでした。
って、小説「推理小説」の感想というよりドラマ「アンフェア」の感想になってしまいました。
だってそのくらいインパクト薄かったんですよ、原作。
言いついでにもうひとつドラマに関して言えば、最終3話目くらいでその回のサブタイトルで真犯人をばらしていたのがなんでそんなことをしやがったのかとても納得いきませんでした。

えーと、原作の秦建日子さんは元々ドラマの売れっ子脚本家でアンフェアは小説デビュー作らしいです。
ドラマ化の脚本は別の方が書かれているということでした。
しかし、最近では映画「チェケラッチョ!」の原作を書かれていたりと作品の幅は広い方のようですね。

華々美人(Fa-Fa Meirin)

2006-04-18 13:02:14 | スイーツ♪
246通り沿いの青山劇場より渋谷寄り、元トライベッカというカフェ跡にできた中華系スイーツのカフェ。
ケーキや中国茶がいただけます。
今回入ったのは2回目、前回は杏仁豆腐のタルトで今回はアップルマンゴーヨーグルトのタルト。
ケーキは見た目も大きさも豪華だしフルーツとか素材素材はおいしいけど全体的にどうもパッとしないんですよねぇ。
マンゴープリンとかパフェの類は食べてないですが、ケーキは食べずに中国茶だけいただいたほうが良い感じ。
または中国茶ともっと渋めのおやつがあるといいんだけど、お店的にお洒落な中華系スイーツcafeなんでしょうね。
私はこのとき普洱茶でしたが、友達の飲んでいた薔薇茶がとってもキレイ
味もひとくち貰ってみましたが飲みやすかったですよ。

GOTH(乙一/角川文庫)

2006-04-12 16:06:05 | 
文庫は
・夜の章
・僕の章
の2冊からなる短編集。
主人公「僕」とクラスメイト森野夜の身の回りに起こる猟奇事件の数々をめぐるストーリー。
「僕」と森野はお互いに他人とは違って死や残酷なものにひどく惹かれる性質であることに気付き、話すようになる。
しかし友達になるとか恋人同士になるとかいうのとは違い、ふたりはその興味の対象を共通点に淡々とした付き合いをする…それどころか時には「僕」は森野を猟奇犯罪者の被害者になるようしむけたりもするのだ。
「僕」は探偵役で森野夜は一緒に事件を調べたりもするが、彼女は犯人に誘拐されてしまったり犯人に目をつけられてしまうことも多い。
そして彼らは事件を調べても事件や犯人に憤りを感じたり被害者を悼んだり犯人を捕まえようとするわけではない。
その事件の残虐さや死そのものを味わい、身近に感じたいだけなのだ。
だから被害者の体を解体して木に飾りつけたりする連続猟奇殺人犯の手帳をたまたま拾って、その犯人に肉薄しても警察に通報もしない。
事件の真相を知って自分達の胸にしまって家へ帰るだけである(夜の章)
人や動物の手首をはさみで切り取ってコレクションする犯人(僕の章/リストカット事件)など猟奇事件満載ではあるものの、そこから生々しい感情は抜け落ちているような印象でそれをより気持ち悪いと思う向きもあるかもしれないが、静謐な感じを受ける。
ちょっと江戸川乱歩の世界を思い出す感じ。
コミックス化されているそうですがこっちはグロテスクさが際立っていそうですね、なにしろ絵ですから…。
でも絵がキレイな人のなら読んでみたいです。

陽気なギャングが地球を回す(伊坂幸太郎/祥伝社文庫)

2006-04-11 16:01:49 | 
タイトルどおり4人組の銀行強盗たちが主役のコメディ。
コメディとはいえ伊坂幸太郎独特の世界観があるので好きな人と何これ?という人に分かれそう。
伊坂さんの小説を読むのは3冊目ですが、けっこう伊坂ワールドがクセになってきました。
楽しいです。

とても強盗とは思えない4人組。
リーダー格の成瀬。
普段は市役所に勤めており、絶対に他人の嘘を見抜けるという特技(というより特殊能力)の持ち主。
人の嘘ばかりか何もかもお見通しな感がある。
その成瀬の同級生で喋るの大好き、やや大風呂敷の響野。
彼の喋り好きといったら、銀行強盗の時にも4分とか時間を取って演説をする始末。
天才的にスリのうまい若者、久遠。
彼は人間より動物が好きで強盗で得た金もニュージーランドへ羊に会いに行くという計画に使う予定。
紅一点、雪子。
生まれつき時計を見なくとも秒単位で時間の感覚が判るという特殊能力の持ち主。
銀行強盗ではドライバーの役目。
冷静だが、息子の慎一が絡むとかなり激情的攻撃性を発揮するシングルマザー。
そんな彼らが銀行強盗を決行するのだが、うまく金を手に入れて車で逃走するという段になっていま世間を騒がせている現金輸送車強盗らしき連中に車を襲われ金を横取りされる。
その強盗のひとりから久遠が掏り取った免許証を手掛かりに成瀬たち4人は輸送車強盗を捜し始めるが、免許証の持ち主のマンションを訪れると部屋の主は刺し殺されていたのだった。

ストーリー云々よりも4人のウイットに富んだ、ときに世間からずれた感覚の会話がとにかく楽しい。
合言葉の「ロマンはどこだ!」というのも良い。
いちばん気に入らなかった点はなんで雪子が若気の至りとはいえあんな男と結婚していたかということでしょうか。
もうすぐ映画化になるそうです。
最近色々な映画化が多いなぁ。
でもカカシが喋るような話ならともかく、これは映画化すると普通のコメディ映画になっちゃいそうで、伊坂ワールドの面白さはにじみ出てこなさそう。
4人組の配役は成瀬=大沢たかお、響野=佐藤浩市、久遠=松田翔太、雪子=鈴木京香
だそうです。
最初成瀬と響野が逆かと思いました。
イメージとして成瀬はもっとごついおじさんぽいイメージなんだけど。