チョコレート空間

チョコレートを食べて本でも読みましょう

クロノス・ジョウンターの伝説(梶尾真治/朝日ソノラマ文庫)

2005-10-17 13:14:59 | 
ソノラマ文庫なんて手に取ったのは何年ぶりか…
梶尾氏の本は『黄泉がえり』映画化のときに興味を持ち、映画を観る前に読みました。
今回も「この胸いっぱいの愛を」の映画コマーシャルを観て、映画の方はとりあえず
観る気はないのですが本の方は読みたくなって。
この映画の原作は2冊あるのですね。
同じタイトル『この胸いっぱいの愛を』
これは映画のノベライズなのですが(未読)、梶尾氏本人がノベライズしているそうです。
そしてもう1冊、元々はこの本から発しているので真の原作というべき本書『クロノス・ジョウンターの伝説』

P・フレックという会社が研究の末過去へ物質を送ることができる物質過去発射装置クロノス・ジョウンターを発明する。
ただしこの機械は過去へは数分(後半の話では数日)しか留まれず、しかも帰るときには元の時間ではなく戻った時間2乗以上の未来へ飛ばされてしまうというけっこう恐ろしいオマケ付き…というか、だったらよっぽどのことがなければ行きたくないよという機械です。
それを人間を被験者として実験するという段階になり、過去への旅をすることになるそれぞれの人物の時間旅行4編の短編からなります。
①吹原和彦の軌跡
②布川輝良の軌跡
③(外伝)朋恵の夢想時間
④鈴谷樹里の軌跡

吹原は通勤途中の花屋の女性に恋心を抱き、ただ挨拶をする間柄からやっと食事の約束を取り付けて天にも昇る気持ちになっていたのも束の間、タンクローリーの爆発事故で彼女は花屋の店ごと跡形もなく消えていた。
彼女を救うために吹原は試験段階のクロノス・ジョウンターに乗って事故の起こる前の時間へ向かう(①)
あるものをひとめ自分の目で見てみたいと思う市川はクロノス・ジョウンターの被験者に立候補する。
そこであるひとりの女性と出会い彼の旅が違う色合いを帯びることになる(②)
③はクロノス・ジョウンターと平行して開発研究がされているクロノス・コンディショナーという機械のお話。
こちらは被験者の心だけが過去のいつか(指定は可)の自分の体の中へ入って戻る。
朋恵には中学時代にあるトラウマがあった。
④は医師/鈴谷樹里がひょんなことからクロノス・ジョウンターの存在を知り、過去自分が医師になるきっかけとなったある人の難病を治したいがために過去へ戻る。

①~④まですべてすてきなラブ・ストーリーです。
このクロヌスという機械の性能上、
・相手のためへ過去へ戻る
・その後自分だけ先の未来へ飛ばされてしまう
というところからも捨身な愛情のプラトニックさが強調される。
『黄泉がえり』といい、梶尾氏の小説はSF的側面よりひとへの愛情、想いというのがとても印象深いものが多いです。
解説に時間もののSFはラブ・ストーリーと相性が良いと書かれてましたが、時間の「すれ違い」という要素も相性が良いのかもしれませんね。
当人同士にしたらえらい事ですけど。
わたしはこの4編では最後の樹里の話がいちばん好きです。
この中に出てくるSF『たんぽぽ娘』、現在では入手困難らしいですが読んでみたいです。
「おとといはウサギ。きのうは鹿。そして、きょうはあなた」





プランタン(洋菓子店/女子栄養大学)

2005-10-11 12:59:55 | スイーツ♪

JR駒込駅近くに女子栄養大学(香川栄養学園)があります。
その入り口あたりに学生さんが作ったお菓子を販売しているプランタンという洋菓子店があります。
接客も学生さんがやっているとのことで初めて行ってケーキを食べ(イートインコーナーも小さいですがあるのです)焼き菓子を買いました。
紅茶とレアチーズケーキ(写真)を食べて約500円
クッキー類も市価よりもかなり割安です。
さすが学校でやっているお店、良心的!
それになんといってもおいしいんです。
写真で見ると青海苔の入ったサラダせんべいにしか見えないですが、小さい写真のイーストの入ったバジル入りイタリア風クラッカー、"レ・スト・レーゲ"もイタリア料理で前菜のパンと一緒に出てきそうでちょっとしょっぱくてバジルの香りが良くてかなりお気に入り
割と大きい袋に入って315円。
このために駒込へ買いに行ってもいいかも
東京お取り寄せ品ガイドみたいな本にも載っているココア味クッキーのレーズンサンドもとてもおいしかったのですが、食いしん坊なためうっかり写真を撮らずに食べてしまいました
缶入り贈答用クッキーなんかも大きさ3種類あります。
日・祝はお休みで土曜は16:00までの営業だそうです。
近いうちにまた行くぞっと。

サバイバー・ミッション(小笠原慧/文藝春秋)

2005-10-11 12:09:34 | 
主人公・麻生律は新米の女性刑事。
管内で起こっている被害者が首を切って持ち去られるという連続女性猟奇殺人事件を調査する一員である。
ある日、律ばかりか全ての女性警察官の憧れの的である先輩のエリート女性警察官が自宅で被害者として無残な姿で発見される。
どうやら彼女は独自の手掛かりを掴んで追っていたらしい。
彼女の死にショックを受ける律は上司・高野に呼び出されて表向きは休職扱いで極秘でこの事件を調査する特別捜査官に任命される。
新米の彼女の相棒として与えられたのはPCの中の2次元の存在のAI(人工知能)、Dr.キシモト。
やがて捜査を進める律の身にも危険が及び始める。
それは単なる連続殺人事件からというだけでなく、警察組織の秘密に係わることだった。

いままで読んだ小笠原慧の作品は、SF的要素はあったもののDNAが絡んでくるものであったり現実に根付いたSFホラーサスペンス(?)といった色合いだったが、今回は震災後の日本という近未来設定で舞台装置からして完全なSF(刑事物でもあるが)になっている。
被害者たちは首を持ち去られているのだが、この時代は脳から記憶を再生させることができる技術があるという設定にもなっており、Dr.キシモトの成り立ちにもそれが大きく係わっている。
刑事とロボットの相棒というとA・アシモフのイライジャ・ベイリとダニール・オリヴォーのコンビなんかは大好きなシリーズで、この女性刑事とAIの相棒というのも面白いし設定としては好き
シリーズ化もちょっと期待したい気もする。
ただベテラン刑事ならまだしも新米で相棒がAI、PCの蓋を閉めちゃえばサヨナラできちゃう存在というのもちょっと心もとない…。
それに身体的な危険が迫ったりしたとき相棒がPC画面上の人じゃなーというのが弱い気がします。
そこらへんをなんとかクリアしてもらってシリーズ化して欲しいかな。