チョコレート空間

チョコレートを食べて本でも読みましょう

噂(荻原浩/新潮社文庫)

2006-06-21 15:35:20 | 
ねえねえ、聞いた?
レインマンの話。
ニューヨークから来たレイプ魔で晴れた日でも真っ黒なレインコートを着ているのが特徴で、狙うのはティーンエイジャーの女の子ばかり。
逃げられないようにまず女の子の足首を切り落としちゃうんだって。
でもなぜかミリエルの香水をつけている女の子は狙わない。
だからニューヨークの若い女の子はみんなミリエルをつけるんだって。

女子高生達の間でこんな都市伝説的な噂が流行る。
しかし実は制作会社がブランド力のない香水を売るための戦略としてのヤラセの噂だった。
ところがこの噂どおりの連続殺人が起き始める。

前回読んだ『ママの狙撃銃』でなんだ、これ!?と思いましたがこの『噂』は面白かったです。
事件を担当するのは数年前に妻を亡くして高校生の娘とふたり暮らしの小暮と、ぱっと見ハタチくらいにしか見えないが30過ぎ、バツイチ女性警部補の名島。
よくある男性捜査官に辛く当たられながらも頑張る女性捜査官でもなければ一流大卒キャリアでもない。
どちらかというとちょっと癒し系キャラ(?)である。
小暮さんも家にいるときは早起きして娘に海苔弁作っていたり、なんだかほのぼのとしたこのコンビは結構読んでいて楽しかったです。
続編も期待したいくらいなのですが…。
が!
ラスト1行に驚きの仕掛けがあるのですよね~。
これがある限りもしも続編があったら恐ろしいことになるので「続編を」とは気軽に言えません!
というか、このラスト、必要でしたか?
確かにこれがなければ「なんだ、途中で犯人分かっちゃった」で終わる人も多いかも知れません。
でもこのドンデン返しはいただけませんでした。


ミント(ショコレティエ・エリカ)

2006-06-20 12:43:16 | スイーツ♪

有名どころですが。
白金台のショコラティエ・エリカのミントチョコレート。
昔はチョコミントって気持ち悪い組み合わせだと思っていたのにサーティーワンのチョコミントアイスにはまってから結構好きになりました。
とはいえやっぱりアクの強い組み合わせですから、なかなか気に入るものが見つからないのです。
やはりかの有名なイギリスのアフターエイトなんかはあまり好きじゃありません。
同じくイギリスメーカーでもBENDICKsのホワイトミントとこのエリカのミントが好きです。
やはり決め手はミント具合だと思います。
エリカのミントのチョコレートとミントのバランスはほんとにほど良いのです。
ミントが少ないとせっかくチョコミントなのに…と思ってしまうし、勝ちすぎると歯磨き粉を食べてるみたいになっちゃいますしね。
チョコレートの扱いにはとても気を使われているようで、商品と一緒についてくる紙に保存適温は15度~20度くらいで風味を損なう可能性があるので冷蔵庫にできれば入れないでくださいという注意書がされています。
そしてなんといっても凄いなと思うのが、年末年始のほかにチョコレートの品質が保たれないので8月は休業しているという徹底ぶりですね。
でもそうすると7月の暑いときなんかはどうなんでしょ、と思ってしまったりもするのでした。
今回このミントとあわせて買ったボンドメールというスティック状の形で中にマシュマロとオレンジピールが入っているものも、たいへんおいしかったです。
こちらもぜひリピートしたいです


JOUVAUD(広尾)

2006-06-16 12:41:06 | スイーツ♪

6/14オープン。
広尾駅近く外苑西通り沿いのアンナミラーズだったところがいつのまにか変わっていました。
名前はジュヴォーと読むのですね、知らなかった。
オープンカフェが併設されています。
偶然オープン初日に買いに行きました。
以前催事で池袋東武に入ったときにマカロンとプチケーキは買ったことあっておいしかった記憶があるのでアプリコットとルバーブのパイとタルト・フランボワーズを買いました。
パイの方はアプリコットもルバーブも酸っぱいので、さっぱり…というかちょっと物足りないくらい甘味のすくないパイです。
中に少しケーキ生地が入っていてこれが甘いのですが、甘さ控えめが好きな私ももちょっと甘い方がという感想。
タルト・フランボワーズはやはりちょっと甘酸っぱいですがこちらはほど良かったです。
けっこうお手頃価格。
ケーキたちは見た目華やかだけど味は割と男性的な感じ。
今回ここやアンナミラーズが井村屋が経営してると知ってビックリ

ママの狙撃銃(荻原浩/双葉社)

2006-06-11 02:22:15 | 
荻原浩っていうといま渡辺謙主演の『明日の記憶』で話題になってる作家だよな。
どうせなら『明日の記憶』読んでみたいけどとりあえず貸してくれるっていうから読んでみよう。ということで初・荻原浩。

感想。
えーと、これ書く気あって書いたのかなぁ?
なんか無理なスケジュールだったけどなんか連載とか引き受けちゃってやっつけ仕事的に書いたとか?

ストーリーは、主人公の曜子は41歳の主婦。
中学生の娘と6歳の息子とちょっと呑気な旦那がいる。
去年買った新築だけど小さな一戸建ての猫の額のような庭でのガーデニングが趣味。
ところが彼女は秘密にしている過去がある。
ハーフである彼女は子供のころアメリカに住む祖父に引き取られて10年間アメリカで暮らしていた。
祖父は実はヒットマンで彼女もずっと銃の手ほどきを受けて16歳の頃に暗殺の仕事を請け負ったことがある。
ある日平和で平凡な1日に当時のエージェント「K」から電話が掛かってくる。
彼女にもういちど仕事を依頼したいというのだ。

なんだかどこかで聞いたような設定の寄せ集め。
???と首を傾げてしまうような登場人物たちの行動。
そして最後のオチ、というかも想像どおりで「ああやっぱりね」と思っているうちに勝手にすればと言いたくなるような主人公の開き直りで話は終わる。
話がちょっと荒唐無稽でも吸引力があれば面白いと思うしそれはそれでいいんですが。

ひとことで言うと「時間の無駄」でした。
しかし何故だか今度は別の友達が萩原浩の『噂』を貸してくれました。
どうせなら『明日の記憶』が…。
ああ…

椿山課長の七日間(浅田次郎/朝日文庫)

2006-06-09 15:25:01 | 
浅田次郎の作品は死者と生者が出会う話が多い。
本書もそんな話である。
けれどこちらはノスタルジックなシリアスな話ではなく、エネルギッシュでコミカルな話である。

椿山課長は大手デパートの婦人服売場の課長。
バーゲンの予算達成に追われまさに身を削って必死に働く団塊の世代、脂ぎって禿げている主人公らしからぬ風貌の46歳。
仕事に命を掛けているというのがシャレではなく、とうとう接待の席でぽっくりいってしまう。
まさに過労死。
そしてふと目覚めてみれば彼は冥途で極楽へ行く手続きを待つ身の上となっている。
まるでお役所のような冥途は、簡単な講習を受けて反省ボタンを押したら極楽へ行けるシステムとなっている。
しかし彼はそれでは納得が行かなかった。
そんなに簡単にジ・エンドにしてしまう人生でいいのか?
俺にはひと回り年下の妻と幼い子供とボケてしまった父と回していかねばならない職場がある。
と、そんなに簡単に思い切れないのである。
冥途のお役所にはそんなどうしてもという事情がある人たちが狭き門ではあるが一週間だけ現世に戻れるシステムまであり、当然椿山課長はそこへと向かうのだ。

彼と同じく再審査希望者が2名。
人違いで殺された香具師の武田組長。
事情は判らないが7歳の根岸雄太くん。
彼らは1週間…ただし葬式も済んでいるので3日間条件付きで現世へ戻れる。
その条件とは
・3日間という期限を破らない。
・正体を明かさない。
・復讐をしない。
この条件を破ると「こわいこと」になるらしい。

こうして現世に戻る椿山課長は、なんと似ても似つかぬ美女の姿になっていた。
正体をばらさず心残りをなくすには確かに生前の姿ではばれてしまうので、冥途で別の肉体を用意してくれるのだが。
どうもアイデンティティの一部は肉体に支配されているらしく意思と裏腹に言葉も女言葉に、和山椿という名前での3日間が始まる。
違う姿で現世に戻って外からの視線で見てみれば残された家族も職場も自分が思っていたのとは様子が違っていた。
その様子が物悲しくそしてコミカルに展開する。
このあたりの面白さはさすが!
他の武田組長や雄太くん、椿山の父などの人生にドラマがあり、それぞれの人物の人となりがもとても読み応えがある。
けっこうみんな極端で善人すぎたりもする。
そういう意味では現実感がないといえるのだと思うけれど最近の作家に比べると人物が描かれているという感じがする。
最初から最後までどうでもいいんじゃない、この人。と思ってしまうような人物が主役であったりしないのだ。
そして泣かされる。
こういう読後感の小説はいいです