みんなで、夜歩く。
ただそれだけのことがどうしてこんなに特別なんだろう。
文中に出てくるこの一文、本書をひと言でよく表しているのはこの一文だろう。
毎年高校の行事として行われる秋の歩行祭。
全校生徒が朝から夜通し、翌日までをかけて80kmの距離を歩く。
高校三年、最後の歩行祭を迎えた生徒達の話。
このストーリーを聞いたとき、あまりにも堂々と青春小説らしいので、さすがにこの歳で思いっきり青春小説なのはいいや、と恩田陸作品とはいえ手が伸びなかったのでした。
ところが最近映画化され、文庫化されたので読んでみようかと買ってみました。
主人公の貴子はシングルマザーの母子家庭。
同じクラスの西脇融は異母兄弟である。
融の父親が貴子の母と浮気したのだった。
当の父親は数年前に癌で亡くなり、葬式の時に貴子と融は初めて会った。
同じ高校になり(しかも同じ学年)、高三にしてついに同じクラスになってしまうが三年間通して一度も口をきいたことはない。
時々厳しい視線がぶつかる程度である。
もちろんこの事を知っている者はふたり以外誰もいない。
貴子の親友の美和子も、去年アメリカ留学した杏奈も。
貴子はこの歩行祭で自分の中だけで密かに賭けをしていた。
その賭けとは?
貴子の置かれた境遇は小説的ではあるが、舞台は歩行祭当日の二日間のみで、特に物凄い事件も起きない。
心象風景を中心に、歩く工程と絡ませながらストーリーは淡々と進行してゆく。
歩行祭自体も、実際に恩田氏が卒業した水戸一高の行事だったということもあってか辛い行事を美化するというより辛さにリアリティがある。
そしてやはり本書も恩田氏特有のノスタルジーが溢れている。
心の中では思っているけれど明文化されない気持ち。
自分は体験していないのに経験したことがあるような懐かしい出来事。
そんな場面がそこここに散りばめられているのだ。
「麦の海に沈む果実」の世界のようにここに出てくる少年少女もだいだい美しい。
美々しいという派手さではなくて、しなやかで凛とした美しさである。
父の浮気という出来事が出てきたり、高校最後の大々的イベントの中で当然誰が好きとか、誰と誰が付き合っているという話もよく出てくるのだが、彼らに性の匂いはない。
この夜通し(2時間だけ仮眠を取る)行われる歩行祭に自分も参加してみたい気持ちにさせられる。
しかし体力には自信がないので自由歩行の時間になったとしても絶対に走るなんて事はできないだろうなぁ
かなりの「鍛錬歩行」ですよね。
解説にも書かれていますが、ほんとうに世代を超えて読める一冊だと思います。
かなり、お薦めです。
ただそれだけのことがどうしてこんなに特別なんだろう。
文中に出てくるこの一文、本書をひと言でよく表しているのはこの一文だろう。
毎年高校の行事として行われる秋の歩行祭。
全校生徒が朝から夜通し、翌日までをかけて80kmの距離を歩く。
高校三年、最後の歩行祭を迎えた生徒達の話。
このストーリーを聞いたとき、あまりにも堂々と青春小説らしいので、さすがにこの歳で思いっきり青春小説なのはいいや、と恩田陸作品とはいえ手が伸びなかったのでした。
ところが最近映画化され、文庫化されたので読んでみようかと買ってみました。
主人公の貴子はシングルマザーの母子家庭。
同じクラスの西脇融は異母兄弟である。
融の父親が貴子の母と浮気したのだった。
当の父親は数年前に癌で亡くなり、葬式の時に貴子と融は初めて会った。
同じ高校になり(しかも同じ学年)、高三にしてついに同じクラスになってしまうが三年間通して一度も口をきいたことはない。
時々厳しい視線がぶつかる程度である。
もちろんこの事を知っている者はふたり以外誰もいない。
貴子の親友の美和子も、去年アメリカ留学した杏奈も。
貴子はこの歩行祭で自分の中だけで密かに賭けをしていた。
その賭けとは?
貴子の置かれた境遇は小説的ではあるが、舞台は歩行祭当日の二日間のみで、特に物凄い事件も起きない。
心象風景を中心に、歩く工程と絡ませながらストーリーは淡々と進行してゆく。
歩行祭自体も、実際に恩田氏が卒業した水戸一高の行事だったということもあってか辛い行事を美化するというより辛さにリアリティがある。
そしてやはり本書も恩田氏特有のノスタルジーが溢れている。
心の中では思っているけれど明文化されない気持ち。
自分は体験していないのに経験したことがあるような懐かしい出来事。
そんな場面がそこここに散りばめられているのだ。
「麦の海に沈む果実」の世界のようにここに出てくる少年少女もだいだい美しい。
美々しいという派手さではなくて、しなやかで凛とした美しさである。
父の浮気という出来事が出てきたり、高校最後の大々的イベントの中で当然誰が好きとか、誰と誰が付き合っているという話もよく出てくるのだが、彼らに性の匂いはない。
この夜通し(2時間だけ仮眠を取る)行われる歩行祭に自分も参加してみたい気持ちにさせられる。
しかし体力には自信がないので自由歩行の時間になったとしても絶対に走るなんて事はできないだろうなぁ
かなりの「鍛錬歩行」ですよね。
解説にも書かれていますが、ほんとうに世代を超えて読める一冊だと思います。
かなり、お薦めです。