チョコレート空間

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雪虫 -刑事・鳴沢了-(堂場瞬一/中公文庫)

2006-11-01 00:13:41 | 
湯沢でひとりの老女が殺された。
新潟県警の鳴沢了はこの事件を担当する。
特に大きいとも思えない事件だったが、少ない手がかりを辿ってゆくうちにおよそ50年前、この老女が戦後の新潟で新興宗教「天啓会」の教祖だったことを知る。
そして更に元天啓会の幹部だった老人が殺され、当時の天啓会でも信者による殺人事件が起きていた事も判ってくる。
事件は50年前にまで遡るのか?

主人公、鳴沢了29歳。
祖父は引退まで現場を務め「仏の鳴沢」と異名を取り、周りから今でも慕われている名刑事。
父は「捜一の鬼」と呼ばれ現在は警察署長。
三代続く刑事ながらも父とは確執があり、まともに口も利かない。
しかし自分は刑事に生まれたのだという自負があり、そのストイックさは協調性を欠くところもある。
趣味はバイク。
そしてどんなに忙しくてもきちっと磨いた靴を履き、皺のあるネクタイを締めるなど許さないというこだわり。

なんというか、全体的に登場人物たちに魅力を感じませんでした。
鳴沢も新人が相棒となり彼にいちいち嫌味を言いながらもついてくる様子を見守り、父とも交流が出てき、事件の目撃者となる高校時代の初恋の相手との恋愛模様なども絡んで来て徐々に変化が出てくるのですが、なんともジコチュー。
誰の言葉か忘れましたが、
「ハードボイルド小説は、俺が俺がのヒロイズム」
というのがありますがまさにそんな感じ。
周りの警察官、初恋相手の喜美恵、父親などもぱっとしない。
一番それでもキャラが立っていたのは新人の大西くんでしょうか。
ラストの結末のつけ方にしてもこんなに長かったのにちょっとこれでいいの!?という感じだし…。

鳴沢了シリーズで現在6冊くらい出ているようです。
きっとこのシリーズは堅物で本書のラストで正義はひとつじゃないかもということを悟ったかも知れない鳴沢くん(29歳なんですけどね…)の成長物語でもあるのかも知れませんが、この先も彼の成長を見守りたいわ、続きも読みたいわ、という気分にはなりませんでした