チョコレート空間

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五人姉妹(菅浩江/ハヤカワ文庫)

2006-08-15 00:20:57 | 
短編集です。
表題の「五人姉妹」を始め以下の9編から成ります。
・五人姉妹
・ホールド・ミー・タイト
・KAIGOの夜
・お代は見てのお帰り
・夜を駆けるドギー
・秋祭り
・賤の小田巻
・箱の中の猫
・子供の領分
菅さんの本は以前アンソロジーを読んだときに1編だけ読んだことがありました。
「五人姉妹」はきれいにまとまった無難な感じの小品。
舞台劇にも向いていそうな色合いです。
「ホールド・ミー・タイト」を読み終えたとき、女性らしいというか、もしかしてSFとは冠ばかりの甘々のラブストーリーを読まされるのか?とイヤな予感。
しかしそんな予感は外れてホッ
「五人姉妹」「お代は見てのお帰り」「子供の領分」はブラットベリとか外国のSFを思わせる雰囲気があります。
「KAIGOの夜」はちょっとありふれた世界設定。
タイトルがKAIGOとローマ字なのは介護と悔悟を兼ねているんでしょうね。

個人的に好きだったのは「夜を駆けるドギー」「賤の小田巻」
2ちゃんねるの世界を思わせるネット掲示板を介して遣り取りがされる「夜を駆けるドギー」
数年経って、もしも2ちゃんが遺物になっていたらどうなんだろう、と思うところもありましたがAIBOを進化させたようなドギーの愛らしさとネットを介した主人公達の友情のあり方が面白い。
「賤の小田巻」は、作者はかなり歌舞伎とかそういった古典芸能が好きな方なんじゃないかなと思わせる作品でした。
老いてなお化粧をして女形であり続ける父を持ち、そんな父に反発して役者を辞めて会社を興した息子。
今もなお父の「老醜」を疎んでいるが…。
確執というよりも父が演目を通して伝えたかったもの、芸というものというのが短い話しながら濃く語られている。

いきなり短編集に行っちゃったので、がっつりと長編をひとつ読んでみたい気もします。