チョコレート空間

チョコレートを食べて本でも読みましょう

青空の卵(坂木司/創元推理文庫)

2006-08-05 17:59:45 | 
ちょっとルネ・マグリットを思わせる装丁の表紙。
そして、「名探偵は引きこもり」の帯。
なるほどね、ロッキングチェアー・ディティクティブってことか、と買いました。
・夏の終わりの三重奏
・秋の足音
・冬の贈り物
・春の子供
・初夏のひよこ
5編の短編からなります。

しかし!!
まるでBL系
確かにワタクシ高校生くらいの頃、女子の間で雑誌「JUNE」とかそういう耽美ホモ小説(当時はBL=Boys Loveなんて言葉はなかった)とか流行ってました。
しかしこの歳でそんなものを読む気はさらさらなかったのに…。
主人公はワトソン役、外資系保険会社に勤める作者と同名、坂木司。
彼には中学の頃からの特殊な友人がいる。
ホームズ役、鳥井真一。
複雑な家庭環境から友達もいなく、たったひとり友人として付き合い続けているのが坂木。
成長してからも独り暮らしのマンションに引きこもり、人に会わないで済むコンピューター・プログラマーという仕事を選んでいる鳥井のために、坂木は比較的自由に時間を取りやすい外資系保険会社に就職を決めた。
そして会社が終わるとまっすぐ鳥井の家へ向かう。
この設定からして甚だしく異常。
おまけに途中からレギュラーとして歌舞伎の女形若手俳優と美青年カップルも登場。
それ系が好きな人には申し分ない設定なんでしょうが…(苦笑)

そしてまたこの主人公の坂木くんがポロポロとよく泣くのです。
(つられて鳥井も、ですが)
『貴様、それでよく外資系の営業が勤まるな』と、心の中で突っ込みの声が出てしまいます。
作者は覆面作家らしいですが99%女性でしょう。
この小説を書くのが男性だったら、それが一番の驚きです。
男同士のラブシーンが出てこないのが救いでしょうか。

ただしそれでもこの作者の青いながらも細やかな感性は伝わってきます。
文章もキレイだし、登場人物の会話(特に主役ふたりですね)のべたべたした掛合いをやめて洗練したら良くなると思うんですけど。
特に「春の子供」の部屋に閉じこもった鳥井と坂木のやりとりは読んでいる方が恥ずかしくなる。
デパート勤務の巣田香織さんや職人のおじいさんの木村栄三郎さんなどはけっこう好感の持てるキャラです。
なのでBL的世界を卒業してくれれば良い線行くんじゃないかと思うんですけど…このままじゃライトノベル止まりですね。