今日DVDが到着しまして、劇場公開から遅れること
9ヶ月、ようやく「
のび太の恐竜2006」を観たのでありました。・・・
遅すぎですね(^^);
ということで、良かった点、気になった点などを、ざっと箇条書きしてみたいと思います。
絵本
いきなり
おまけの話からかい!と
ツッコミが入りそうですが、パッケージを開けて、最初に手にして読んだのが、この絵本だったので(^^); 今さら何をと思われるかもしれませんが、
渡辺歩さん、
いい絵を描くなぁというのが第一印象です。この辺りは好みによると思いますが「
ふしぎ風使い」の頃の、いわゆる
萌えキャラ風しずかちゃんとか、個人的にはあまり好みではありませんでした。でも、以前も書きましたが「わさドラ」のキャラデザインは、すごく良い仕事だなぁと思っていました。渡辺さんは、ちょっと「
やりすぎて」しまうところがあるような気がするんですが、少し引き気味に・・・入れ込みすぎずに描いてくれれば、こんなにも良い絵を描ける人なんだよなぁと、この絵本を読んで感じました。F先生をリスペクトする気持ちがとてもよく伝わってくる、心地よい絵本です。ただ「
あたたかい目」はやりすぎです(笑)。
作画
原画の線を生かしたラフな雰囲気のタッチというコンセプトそのものは、決して嫌いではないです。いかにもアニメ的な、カチッとしたクリーンな線を好む人には、ちょっと嫌かもしれません。まぁ、このあたりも好き好きかと思います。・・・が、ちょっと
崩しすぎの感じが、なきにしもあらず(汗)。なんというか、ドラえもんやのび太たちが、シーンによっては
パチモンキャラに見えてしまいました。時々「クレヨンしんちゃん」並に崩して描いているときもあるんですが、ちょっと「ドラえもん」の世界観で考えると、少し合わない気もしました。せめてキャラクターの顔くらいは、もうちょっと作監修正して欲しかったような・・・。今のところは予告で観た限りなんですが、「新魔界大冒険」の作画は、カチッとしすぎず、ラフにもなりすぎず、ちょうど良い具合なんじゃないかと思っています。(もちろん本編を観てみないことには何とも言えませんが)
映像・背景
まるで「
ドラえもんじゃないみたい」な
ド迫力な映像で、とても素晴らしかったです(笑)。いや、別に皮肉でもなんでもないです。「ねじ巻き都市冒険記」のように、作品の2Dの雰囲気を壊してしまうようなCGを挿入するのは、ちょっと勘弁して欲しかったですが、違和感のないCG技術を融合させることには賛成なんです。F先生も、これだけ迫力のある画面をご覧になったら、きっと喜んでくれたんじゃないかと思います。白亜紀の恐竜世界を描き出すんだから、やはりダイナミックなのが良いですからね。1980年の時点では、これだけダイナミックな映像を作るのは、技術的にも時間的にも絶対に無理でしたからね。出来るものなら、F先生もやりたかったんじゃないかと思いますよ。
音響
やっぱり、
5.1chサラウンドEX・・・
めっちゃ良いです。まぁ、5.1chスピーカーをセットするスペースがないので、
例のヘッドホンで疑似体験したわけですが、それでもスゴイ迫力でした。旧作「のび太の恐竜」のビデオは、ドルビーどころか音声が
モノラルなので、音の迫力なんて求める方が間違っているのですが(笑)、そこは2006年に生まれ変わった映画だけあって、冒頭部分なんて、まるで「
ジュラシック・パーク」でした。・・・そういえば音響に限らず、随所にあの映画を意識したシーンや要素が結構ありましたね。
音楽
わさドラが始まった頃、音楽を担当している
沢田完さんのことは全然知りませんでした。でも回を追ううちに、さらにCD「ミニアルバム」が発売されて、それに収録された曲を聴くうちに、次第に彼の作る音楽が好きになっていきました。そして現在・・・沢田さんは、
あーや(一応書いておきますと平原綾香さん)を語る上で欠かせない存在でもありまして、名曲「
スタート・ライン」の作曲者とあっては、もう語るなという方が無理です(^^); 特に劇中、主題歌の「
ボクノート」をアレンジした曲がありまして、のび太たちがタケコプターで白亜紀の日本を目指して進むことを決意し、飛び立っていくシーンで掛かるのですが、これがまた
音楽集のCDを出して欲しいほどに気に入ってしまいました。前作のビデオは手元になくて確認できないのですが、確か「
ポケットの中に」が掛かっていた気がします(すみません、おぼろげです)。その
まったりした雰囲気も好きなんですが、旅立ちを決意したシーンで掛かる壮大な「ボクノート」のメロディは、心にジーンと響くものがありました。沢田さんって良い曲を作るのみならず、アレンジがとても上手で、あーやもそのことについて、自分の思い通りのアレンジをしてくれる、というように語っていたのを読んだ記憶があります。(ちなみに、あーやの曲では「夢の種」「Hello Again, JoJo」「スタート・ライン」を作曲、「Voyagers」を編曲されています。)
声優
テレビでもおなじみの主要メンバーは全く問題がなかったと思います。私は脚本家の
雪室俊一さん(「キテレツ大百科」などでおなじみ)を大変尊敬しているのですが、彼がその著書で「わさドラ」の声優陣について
メタクソに書いておられまして、「
想像以上のひどさである」「
この声優陣では映画はもたない」みたいなことまで言われていました(そのご著書が、いま引越直後で手元にないので、残念ながら細部までは引用できません)。これまでの雪室さんの仕事を私は好きなのですが、そのご意見だけは・・・少し賛同いたしかねますね(^^); そりゃ超がつくほどベテランの大山さんたちと比較すれば、劣る面だって多々あるとは思いますが、今回の映画を観る限り、彼ら新声優陣はしっかり自分の役柄を演じきってくれていたと思います(この雪室さんのご発言については、色々と書きたいことがあるのですが、また後の機会に・・・先にそのご著書を探さないと・・・)。ゲストでは、まず船越さんの黒マスクは全く問題なし。いや、本当に見事でした。ドルマンスタインは・・・おなじみ
ミスターXで(笑)、声の良し悪し以前に何か新鮮みが(^^); 神木くんは、生まれた直後のピー助の声は、可愛くて意外と合ってました。予告での声はかなりヤバかったのですが、頑張ってくれたと思います。でもピー助が大きくなった後の声は・・・うーん、
人間の声って感じがしてしまって(^^); えーと後は・・・
劇団ひとり・・・出てたっけ?(^^);
演出
・・・やっぱり・・・少し
くどい(笑)。この「くどさ」を良いと思う方がいるのは、まぁ分かるのですが、涙の量と回数を
1/3程度に減らすだけで、もっとグッと来る作品になったんじゃないかなと・・・。まぁ、あまり主人公たちが
号泣しすぎる映画が好きじゃないという、かなり主観的な好みの問題だとは思うんですけどね(^^); なんというか・・・F作品の「
泣きポイント」(こういう言い方はあまり好きじゃないんですが)は、むしろ
演出的に抑制された部分にあるというのが持論なもので、渡辺演出ではそれを逆行してしまってる感があります。だから感動シリーズといわれる映画「ドラえもん」併映作の短編も、それほどは好きじゃなくて・・・やはり同じ話でも原作の方が何倍も泣けたりします。でも・・・うーん、私の好みのタイプの演出にしてしまうと、今度は
一般受けしないのかな(^^); やはり小学生&その親をターゲットにした作品であって、本来的にはマニア向け作品ではないだけに、その辺の兼ね合いが難しいのかもしれませんね。
総合
最初のうち「
これは結構良いかも!?」と思っていたのですが、後半に進むにつれて、少しずつ評価が落ちてきたかな(^^); やっぱり渡辺監督の作品って、好きだって人はものすごく好きみたいですが、苦手な人には苦手なんだと思います。ただ、そういうシナリオや演出的な「くどさ」を割り引いて考えても、総合的に観れば十分に及第点でありました。大山ドラ末期の頃の渡辺演出は、どれだけひっくり返そうと好きにはなれませんし、今回もちょっとフザけすぎてる感じのするシーンもありましたが、少なくとも作品の本質を歪めるほどまで酷くは全然なかったし、良いシーンもたくさんあったことは確かです。私にとっては、渡辺監督作品の中では一番好きな作品だったと、それだけは言っておきたいと思います。
また、ラストが「
うん、ちょっとね」で終わる点に関しては、賛否両論あったみたいですが、これは私は良かったと思っています。映画「ドラえもん」って、
鉄人兵団が攻めてこようが、
魔界が接近しようが、
鬼角弾で
世界滅亡の危機に瀕しようが(のび太たちって、ものすごい経験の数々を・・・)、ひとたび冒険が終わった後は
普通の日常に戻るという点が醍醐味です。どれだけ大変な目に遭おうと、無事に日常に帰ってきた後の感想は、やはり「うん、ちょっとね」なのであって、親や先生やクラスメートなどに、のび太たちが意気揚々と冒険譚を語るような種類のものではなく、この5人の胸に深く刻まれる思い出に他ならないのでしょう。だからこそ、この台詞が映画原作の第一弾の段階でしっかり描かれていたわけでしょうし、これをラストシーンに持ってきたのは、この映画が新生ドラえもん映画の第一作だという点を考えると良かったのではないかと思うのです。
 | 映画ドラえもん
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