久本と次課長の河本がドラえもん声優 (日刊スポーツ)
何も芸能人を起用することが絶対悪とは言いません。その人の芝居がその役に本当に適していたのであれば、それで話題集めにもなって動員に結びつくなら、一石二鳥でしょう。
よく例に挙げるのですが、ピクサー映画の日本語吹き替え版って、最初にキャスティングを聞いたときは「えっ?」と思うことが多いものの、結果的にピッタリな声だったというケースが多いです。唐沢寿明さん、爆笑問題の田中さん、木梨憲武さん、三浦友和さん……みんな本当に上手かったです。多少の話題集めはしつつも、作品を全く壊していないキャスティングに毎回感心します。
しかし、「ドラえもん」映画で、なんでこのようなバクチ的なキャスティングを、あえてする必要があるのでしょうか。それほど観客動員数が絶望的なんでしょうか。相武紗季さんが演じる美夜子の声を予告で聞いたとき、これは絶対に「声(演技力)で選ばれた訳じゃないな」と直感的に悟りましたが、話題集めのため、1人くらいの芸能人起用は仕方がないのかなと、本当は美夜子が重要な役柄なんだから正直嫌だったんですけど、ここへ来てようやく諦めもついていました。それなのに、どうしてこう2人も3人も……
一体どうして作品本位で勝負しないんだろうと疑問を感じざるを得ません。子どもは基本的にネームバリューなんかで作品を観ませんし、大人向けのアピールとしては、人気作家でもある真保さんが脚本を書く、というだけで十分でしょう(ちょっと地味かもしれませんが)。それに「魔界大冒険」は、私たちの世代(30~40歳くらい)のドラえもんファンにとって、特に思い入れたっぷりの作品です。その世代は既に子どもも持っている人が多いし、子どもがいなくても懐かしさに劇場へ足を運ぶケースも十分想定できるじゃないですか。一体誰が久本さんや次長課長の声が聞きたくて映画館へ行くっていうんでしょう……。
ともかく、久本さんの笑い声を「いい感じです」と言ったスタッフの方。「アンタ、一体どこに耳がついてんだ!」なんて思わないで済むよう願いたいものです。
本当に今のテレ朝って、どうしてこういう旧来のテレビ的、バラエティ的な盛り上げ方しか思いつかないんだろう……。これって、本当に安達さん(わさドラのバラエティ化に関与したと思われる放送作家)だけの責任なのかなぁ……テレ朝も小プロもADKも、そしてGOサインを出したのであろう藤子プロも……みんな揃ってどこか病んでるようにしか見えません。
もちろん資本主義の日本にあって、ある程度の商業主義に走るのは仕方がありません。だって、スポンサーがお金を出してくれなきゃ番組は作れないんですから。それをある程度度外視して作品を作ることが可能だとすれば、日本でそれが出来る放送局は、CSなどの有料放送とNHK(※)しかありません。
※そのNHKすら、今は紅白の視聴率に一喜一憂している時代ですからね……視聴率って、そもそも広告主に提示するためのバロメータであって、NHKは関係ないじゃんと思うんですけど。たとえ視聴率が5%であろうと、どれだけ批判されようと、「国民のための番組を作るんだ!」という気概がなくちゃ、公共放送なんてものは資本主義社会の中では成り立ちません。それが無理ならさっさと民放化すべきです。……閑話休題。
今の製作サイドは、まず作品の力があって、初めてヒットするんだという基本を忘れちゃいませんか。そもそもバラエティ化は結果として、全然視聴率に結びついてないじゃないですか。1~2%の上昇なんて、ただの誤差ですよ。
テレ朝など関係各社は、1990年代前半までの長い間、高い視聴率を弾きだしてきた「ドラえもん」という作品の上にアグラをかいて来たんでしょう。そのうち制作の大黒柱であった作者を失い、視聴率の低下も手伝って、迷走の度合いを強めていきます。まず作者が一切関わっていない作品として作られた「南海大冒険」で、芸能人の大量起用を、作者が亡くなるのを「待ってました」とばかりにやってくれました。言葉は非常に悪いですが、F先生ご自身が製作の指揮を執っていた頃は、こういうパターンでの芸能人起用はありませんでしたから、プロデューサーサイドからすれば「制約」がなくなったことで、ずっとやりたかった芸能人起用をやった、というようにも見えなくはありません。この映画の主題歌「ホットミルク」は、言っちゃ何ですが「ドラえもん」の黒歴史そのものです……。
結果として大山ドラの視聴率が下がってきたのは、明らかに「ドラえもん」というアニメがもつパワーの低下が原因です(既に存在する原作の力は、上がりも下がりもしません)。その現状を打破しようと立ち上がったからこそ、スタッフや声優の一新という、非常にリスクの高いことに踏み切ったのではないのでしょうか。この英断自体は今でも素直に拍手を送りますが、リニューアル後に思ったような視聴率が取れなかったことについて、その責任を作品に押しつけるのは明らかに間違いです。ただ単に「新番組」として浸透していないだけです。
思い起こしてみれば、一度はNTV系で放送され、視聴率も振るわず大コケした「旧ドラ」があったにもかかわらず、新作として再アニメ化されるに至った原動力は、一体どこから起きたのか……。ほかならぬ子どもたちの間での浸透だったんです。アニメが終われば連載が終了しても不思議ではないのに、連載はその後も続けられました。その面白さに気がついた当時の小学生(学年別学習雑誌の愛読者)たちの間で起きたドラブームが一大ムーブメントとなり、てんとう虫コミックスがベストセラーとなり、コロコロの創刊に結びつき、再アニメ化、そして爆発的な藤子ブームに繋がったのでした。(ちなみにテレ朝に再アニメ化を決定させた陰の立役者は、現シンエイ動画社長の楠部三吉郎さんでした)
その浸透を、これまでの「26年」という大山ドラに求めるのは間違いです。大山ドラの終了で、一旦アニメ「ドラえもん」は終了したのです。あくまでわさドラは「新作」です。わさドラが子どもたちの間で浸透されなくては、結局は視聴率に結びつけることも不可能だと思います。
仮にいま「ドラえもん」の打ち切りを発表したとすると、「止めないで」という声は当然起きるでしょう。しかし悲しいことに、そういう声を上げる人のほとんどは、今のわさドラを大して観ていなかったり、かつて子どもの頃に「ドラえもん」を観ていた大人ばかりで、子どもたち自身からの声はほとんど起きないように思います。同じことを1980年代に発表すれば、コロコロやテレ朝には、子どもたちから「やめないでコール」が殺到したことでしょう。視聴率が20%から10%に下がったとはいっても、そういう子どもからの声は、単純に半分ということはなく、もっと少ない……もしかすると1/10にも満たないのではないでしょうか。これが浸透力の差なんです。
製作サイドが、本当に「ドラえもん」という作品の力を信じているなら、短絡的な視聴率稼ぎの手段であり、しかもそれが全く結果に繋がっていない「バラエティ化」なんて、この作品に関しては全く無意味なんだと、そのことを早く悟って、子どもたちの間に浸透するための番組作りにシフトさせて欲しいものです。
何も芸能人を起用することが絶対悪とは言いません。その人の芝居がその役に本当に適していたのであれば、それで話題集めにもなって動員に結びつくなら、一石二鳥でしょう。
よく例に挙げるのですが、ピクサー映画の日本語吹き替え版って、最初にキャスティングを聞いたときは「えっ?」と思うことが多いものの、結果的にピッタリな声だったというケースが多いです。唐沢寿明さん、爆笑問題の田中さん、木梨憲武さん、三浦友和さん……みんな本当に上手かったです。多少の話題集めはしつつも、作品を全く壊していないキャスティングに毎回感心します。
しかし、「ドラえもん」映画で、なんでこのようなバクチ的なキャスティングを、あえてする必要があるのでしょうか。それほど観客動員数が絶望的なんでしょうか。相武紗季さんが演じる美夜子の声を予告で聞いたとき、これは絶対に「声(演技力)で選ばれた訳じゃないな」と直感的に悟りましたが、話題集めのため、1人くらいの芸能人起用は仕方がないのかなと、本当は美夜子が重要な役柄なんだから正直嫌だったんですけど、ここへ来てようやく諦めもついていました。それなのに、どうしてこう2人も3人も……
一体どうして作品本位で勝負しないんだろうと疑問を感じざるを得ません。子どもは基本的にネームバリューなんかで作品を観ませんし、大人向けのアピールとしては、人気作家でもある真保さんが脚本を書く、というだけで十分でしょう(ちょっと地味かもしれませんが)。それに「魔界大冒険」は、私たちの世代(30~40歳くらい)のドラえもんファンにとって、特に思い入れたっぷりの作品です。その世代は既に子どもも持っている人が多いし、子どもがいなくても懐かしさに劇場へ足を運ぶケースも十分想定できるじゃないですか。一体誰が久本さんや次長課長の声が聞きたくて映画館へ行くっていうんでしょう……。
ともかく、久本さんの笑い声を「いい感じです」と言ったスタッフの方。「アンタ、一体どこに耳がついてんだ!」なんて思わないで済むよう願いたいものです。
本当に今のテレ朝って、どうしてこういう旧来のテレビ的、バラエティ的な盛り上げ方しか思いつかないんだろう……。これって、本当に安達さん(わさドラのバラエティ化に関与したと思われる放送作家)だけの責任なのかなぁ……テレ朝も小プロもADKも、そしてGOサインを出したのであろう藤子プロも……みんな揃ってどこか病んでるようにしか見えません。
もちろん資本主義の日本にあって、ある程度の商業主義に走るのは仕方がありません。だって、スポンサーがお金を出してくれなきゃ番組は作れないんですから。それをある程度度外視して作品を作ることが可能だとすれば、日本でそれが出来る放送局は、CSなどの有料放送とNHK(※)しかありません。
※そのNHKすら、今は紅白の視聴率に一喜一憂している時代ですからね……視聴率って、そもそも広告主に提示するためのバロメータであって、NHKは関係ないじゃんと思うんですけど。たとえ視聴率が5%であろうと、どれだけ批判されようと、「国民のための番組を作るんだ!」という気概がなくちゃ、公共放送なんてものは資本主義社会の中では成り立ちません。それが無理ならさっさと民放化すべきです。……閑話休題。
今の製作サイドは、まず作品の力があって、初めてヒットするんだという基本を忘れちゃいませんか。そもそもバラエティ化は結果として、全然視聴率に結びついてないじゃないですか。1~2%の上昇なんて、ただの誤差ですよ。
テレ朝など関係各社は、1990年代前半までの長い間、高い視聴率を弾きだしてきた「ドラえもん」という作品の上にアグラをかいて来たんでしょう。そのうち制作の大黒柱であった作者を失い、視聴率の低下も手伝って、迷走の度合いを強めていきます。まず作者が一切関わっていない作品として作られた「南海大冒険」で、芸能人の大量起用を、作者が亡くなるのを「待ってました」とばかりにやってくれました。言葉は非常に悪いですが、F先生ご自身が製作の指揮を執っていた頃は、こういうパターンでの芸能人起用はありませんでしたから、プロデューサーサイドからすれば「制約」がなくなったことで、ずっとやりたかった芸能人起用をやった、というようにも見えなくはありません。この映画の主題歌「ホットミルク」は、言っちゃ何ですが「ドラえもん」の黒歴史そのものです……。
結果として大山ドラの視聴率が下がってきたのは、明らかに「ドラえもん」というアニメがもつパワーの低下が原因です(既に存在する原作の力は、上がりも下がりもしません)。その現状を打破しようと立ち上がったからこそ、スタッフや声優の一新という、非常にリスクの高いことに踏み切ったのではないのでしょうか。この英断自体は今でも素直に拍手を送りますが、リニューアル後に思ったような視聴率が取れなかったことについて、その責任を作品に押しつけるのは明らかに間違いです。ただ単に「新番組」として浸透していないだけです。
思い起こしてみれば、一度はNTV系で放送され、視聴率も振るわず大コケした「旧ドラ」があったにもかかわらず、新作として再アニメ化されるに至った原動力は、一体どこから起きたのか……。ほかならぬ子どもたちの間での浸透だったんです。アニメが終われば連載が終了しても不思議ではないのに、連載はその後も続けられました。その面白さに気がついた当時の小学生(学年別学習雑誌の愛読者)たちの間で起きたドラブームが一大ムーブメントとなり、てんとう虫コミックスがベストセラーとなり、コロコロの創刊に結びつき、再アニメ化、そして爆発的な藤子ブームに繋がったのでした。(ちなみにテレ朝に再アニメ化を決定させた陰の立役者は、現シンエイ動画社長の楠部三吉郎さんでした)
その浸透を、これまでの「26年」という大山ドラに求めるのは間違いです。大山ドラの終了で、一旦アニメ「ドラえもん」は終了したのです。あくまでわさドラは「新作」です。わさドラが子どもたちの間で浸透されなくては、結局は視聴率に結びつけることも不可能だと思います。
仮にいま「ドラえもん」の打ち切りを発表したとすると、「止めないで」という声は当然起きるでしょう。しかし悲しいことに、そういう声を上げる人のほとんどは、今のわさドラを大して観ていなかったり、かつて子どもの頃に「ドラえもん」を観ていた大人ばかりで、子どもたち自身からの声はほとんど起きないように思います。同じことを1980年代に発表すれば、コロコロやテレ朝には、子どもたちから「やめないでコール」が殺到したことでしょう。視聴率が20%から10%に下がったとはいっても、そういう子どもからの声は、単純に半分ということはなく、もっと少ない……もしかすると1/10にも満たないのではないでしょうか。これが浸透力の差なんです。
製作サイドが、本当に「ドラえもん」という作品の力を信じているなら、短絡的な視聴率稼ぎの手段であり、しかもそれが全く結果に繋がっていない「バラエティ化」なんて、この作品に関しては全く無意味なんだと、そのことを早く悟って、子どもたちの間に浸透するための番組作りにシフトさせて欲しいものです。
そして、実はNTVとスポンサー側は2クール延長を予定していたそうです。日本テレビ動画側も「ドラえもん」自体は黒字だったそうです。ただ会社全体が傾きかけ、社長が金持って逃げてしまい、物理的に製作不可能となって、当初の契約どおり2クールで終了することになったのです。
つまり、「旧ドラ」は失敗でもなんでもなく、普通に始まって普通に終わった番組です。
NTVドラについては資料も少ないので、あまりハッキリしない部分がありますが、NUなどの関係者インタビューで知った背景としては、概ね次のような感じと認識していました。
「1度アニメが作られたが成功しなかった」
「そのため2度目のアニメ化の際、放映局探しに難航した」
「シンエイの楠部現社長が奔走してテレ朝との契約にこぎつけた」
それらのことを踏まえて書いたつもりでした。「大コケ」というのは、ちょっと勢いあまって書きすぎたかと思いますが、視聴率的に「成功とは言い難い結果」となったために、2度目の放映局探しに難航したという関係者の証言が事実であれば、NTV版は少なくとも「失敗」とは言わないまでも、結果として「成功とも言えなかった」のではないかなと思います。営業的に…というのは、私はテレビ局の営業の実態を知っているわけではないので、ちょっと分かりませんけれども(^^); もしかすると社長の持ち逃げ事件などがなければ、2クール延長後に火が点いた可能性もあったのかもしれませんね。NTV版をAプロや東京ムービーが制作していれば、もっと別な展開もあり得たのかも知れません。
旧ドラについては、数年前まで「日本テレビ動画」という会社そのものも含めて謎めいた部分がありましたが、真佐美ジュンさん(下崎闊さん)など、当時の関係者の方々が資料や証言などを出してくださったこともあり、少しずつアウトラインが明らかになってきたのは、喜ばしいことですね。