今日は、鈴鹿医療科学大学の大学院東京サテライトの入学式で、東京にいます。この大学院の対象は、診療放射線技師として病院等で働いていらっしゃる社会人の皆さんなんです。このサテライトキャンパスは世界貿易センタービルの31階にある日本放射線技師会の部屋をお借りして運営しているんですよ。サテライトを始めて5年になりますが、今までに、修士課程・博士課程合わせて、約40名の学生さんが日本全国から入学しています。
実は、入学式といっても、講義に使う教室の中で、新入生だけではなく在学生もいっしょに行う入学式で、その後には、研究テーマや指導教員の調整、講義が組まれているんです。
式辞では、まず、昨日の私大協の協議会で文科省の私学部長さんがお話になった資料から、先進国では大学入学生の約20%が社会人であるが、日本は格段に少なく2%に過ぎないことをお話ししました。
このような観点から、大学としては社会人入学に対して、いっそうの充実をしていくべきであるし、また、皆さんのような社会人の学生さんにこの大学院に入っていただいて本当にうれしい。
その次には、昨日の飲み会でお会いしたIさんのお話をしました。その会は、大学病院の経営に興味をもっているさまざまな職種の皆さんの集まりで、昨日は日大病院の経理担当者や教授、銀行のOB、そして、三菱電機の皆さんが参加されました。その三菱電機のお一人が、粒子線治療システム担当部長のIさんというお方でした。
びっくりしたのは、Iさんは僕が学長をしている鈴鹿医療科学大学の大学院の修了生だったということです。世間は狭いですね!!
平成8年に鈴鹿医療科学大に医療情報画像の大学院が初めて開設されたのですが、Iさんはその2期生ということでした。当時は東京サテライトはなく、Iさんはお勤めになっていた福島県郡山市にある病院の放射線技師を2年間休職して、三重にご家族とともにお住みになって、修士課程を修了されたということです。その後、郡山の病院の技師長に戻られ、次いで陽子線治療センターに移られ、三菱電機の部長になられたとのことでした。
Iさんの向学心には本当に頭が下がります。そして、その志の賜物として、今では粒子線治療という最先端の治療機器の推進役になっておられる。
東京サテライトに入学された皆さん、仕事を続けながら、研究を続け、学位をとるということは本当に大変だと思いますが、ぜひとも頑張っていただきたい。
だいたいこんな感じの式辞でしたかね。4月2日の入学式の式辞では原稿を書いてしゃべったのですが、今回は、原稿を書かずに臨機応変にしゃべりました。
さて、式辞の後、全教員が挨拶し、そのあと、新入生と在学生が一人一人自己紹介をしました。その中で、今年の新入生で最高齢であったのは、69歳の市川秀男さんです。
市川さんは、岐阜医療科学大学の教授を5年間お勤めになり、現在は大垣女子短期大学の客員教授をしておられます。たいへん有名な先生であり、学生の皆さんの何人かは、市川先生に学会での座長をしていただいたり、ご指導を受けたことがあるということでした。
僕が式辞で、日本の大学の社会人入学生が少ないことをお話した際に、市川さんは、うんうんとうなずいておられたのですが、自己紹介の時に、海外の大学を訪問された時に、たくさん年配の方々が若者に交じって講義を受けていたのを見て、大学の役割はまさに社会人教育にあると感じたとのことです。そして、今回、それを自ら実践しようと、69歳にして、この東京サテライトに入学されました。
在学生の挨拶では、みなさん異口同音に、授業が終わった後に開いている懇親会がすばらしいとおっしゃっていました。この懇親会では、出身や施設や年齢の差を問わず、横のつながりが形成され、そして、たいへん貴重な情報交換がなされる。学生の中には、先ほどの市川さんのように、ベテランの先生もおられるわけですし、また、一口に診療放射線技師と言っても、いろいろな専門分野があるわけで、学生どうしで、相当高度なことについて教え合うことができるわけです。学生さんに、このサテライトの講師になっていただいてもいいくらいです。
この大学院に入学してくる学生さんの中には、在学生からの口コミで入学される方がけっこうおられます。今回も、自分の部下がこのサテライトに先に入学し、部下に触発されて入学したという学生さんがおられました。
このようなことから、僕は、従来の環境では得られない、アカデミズムを介した新たなコミュニティーに魅力を感じて、学生さんが集まってくるのではないか、と強く感じました。
つまり、この大学院サテライトは、今までの学会や研究会の活動では得られない、また、職場での縦の関係の中での活動でも得られない、また、通常の大学院のような、研究室に閉じこもった活動の中でも得られない、新たなコミュニティー形成の場を提供しているところに、大きな魅力や意義があるのではないか。このことは、社会人対象の大学院のあるべき姿の重要なポイントではないかと思います。
貿易センタービル31階の教室からの眺め。それにしても、このサテライトキャンパスは、羽田空港から近い絶好の場所にありますね。
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