肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ハチミツとクローバー』、観ました。

2006-07-23 19:30:54 | 映画(は行)

ハチミツとクローバー

 『ハチミツとクローバー』、映画館で観ました。
ある日、花本先生の親戚のはぐが浜美大に入学してきた。可憐な容姿に似合わず
ダイナミックな絵を描くはぐに一目惚れする竹本。そして、天才的な才能を
持つ奇人(?)森田も一発で恋に落ちる。一方、真山はバイト先の理花に想いを
寄せている。亡き夫の影を追う理花への思いを止められない真山を見つめるのは、
山田あゆみ。勝気な山田もまた、報われない切ない思いを胸に秘めていた……。
 きっとオイラみたいな心の荒(すさ)んだ人には“透明過ぎる”。だから、
言ったじゃないの…、「青春」みたいな“夢物語”って40間近のオジサンには
照れくさくって、もはやまともに見れたシロモノじゃ~ないってね(笑)。
 さて、映画は、今時こんな健全で純朴な美大生なんているものか、っていう
登場人物と、何を今更こんなピュアで不器用な恋愛なんてあるものか、っていう
物語設定。途中、夕日の海に叫ぶシーンは、どうかご愛敬(笑)。それから、
自分の恋の恋敵にわざわざ奮起を促す(主人公)アナタはかなりのお人よし(笑)。
だけど、“一晩中”海へとチャリンコ走らせる(やはり主人公)アナタは一体
何者だ(笑)。ついでに言えば、特に意味なく画面を横切り、ニャオ~ンと
ひと鳴き、又おもむろに去っていく黒い猫、アイツも一体何者だ(笑)。
まぁ、そんな風にツッコミを入れたくなる箇所は山のようにあるのだけど、
あえて今は映画を冷静に分析すると、物語は大きく言って、男女6人、2つの
三角関係が存在する。初恋のほろ苦さ、愛の苦しさ、悩み、そして胸の高鳴り…、
それぞれに抱える愛のカタチは違うのだけど、彼らすべてに共通するのは、
「自分は誰で、何処に進めば良いのか」ということ。例えば、主人公は浜辺で
愛する女性(ひと)のキス現場を目撃する。すると、思わず怖くなって車の影に
隠れるのだけど、彼女は主人公に気付かずに走り去ってしまう。その瞬間、
主人公は、自分が彼女にとって“見えない存在”であることを思い知らされる
わけだ。一方、そんなヒロインにしても、周りが“天才少女”ともてはやすが、
自身は自分に自信が持てないままでいる。しかし、ひとつの恋を経験して、
彼女は変わる‥‥。ラストシーン、画いた海の絵に、それまでの《HAGU》の
ネームじゃなく、《HAGUMI》を記したのは、“未完の天才”から“人間として
完成”したことを意味していたんだろう。ともすれば、作品全体を説明過多な
(竹本や山田による)ナレーションが気になったが、うん、ラストだけは
スッキリ巧くまとまっていると思う。