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The Mysteries of Harris Burdick「ハリス・バーディックの謎」

2011-04-25 | 絵本

絵・文~C・V・オールズバーグ、訳~村上春樹

7月の奇妙な日、ヴェニスに消えた、ハープ、3階のベッドルーム…謎の人物ハリス・バーディック氏が残した14枚の絵には題名と説明文がついていた。それぞれの絵が物語を語りはじめるモノクローム世界

14の物語のなかの1枚の絵と題名。

さすがオールズバーグ…と。モノクロームの一枚の絵から読み手が、想像する物語の世界が、無限大に広がる。じっと見つめた絵が、語ってくる。

「天才少年、アーチースミス」~小さな声が言った、「あの子がそうなのかい?」

何故、夜の部屋の窓が開いているのだろう。あどけなさの残る少年の寝顔。窓の外。そして部屋の中の電気は消えているのに。ぽっかりと浮かんでいる光の玉は、声の主か?ひとだまだろうか…。

「絨毯の下に」~2週間後にまたそれが起こった。

絨毯の下の盛り上がり、そこにいる物体は何?恐怖と怒りの入り混じった男の表情と椅子を振り上げた後に何が起こるのか、不安がつきまとう

「7月の奇妙な日」~彼は思い切り投げた。でもみっつめの石は跳ねながら戻ってきた。

子供の頃、川や水辺に、投げ石をするのは世界の子どもも同じなのかな。燦めく水の輝きが印象的だが、三つめの石。が物語の続き。男の子と女の子二人。待ち受ける冒険譚が、気になります。

「ヴェニスに消えた」~その強力なエンジンを逆進に入れたというのに、旅客船はどんどん運河の奥の方に引きずられていった。

豪華客船が、細い運河に進んでゆく、町の高い塔までも破壊しながら。操縦がきかなくなった船の行へ、暗い影と不安が広がる。

「別の場所で、別の時に」~もし答えと言うものがあるなら、彼はそこでそれを見つけるだろう。

海の上のトロッコ。風を動力に父と母そして少年二人。家族だろうか彼らはどこに行くのだろうか。遠くに霞む城広がる荒野。海の上に白い靄が立ちこめて行く手を不安にさせる。天井の黒く覆い被さるような雲。

「招かれなかった客」~彼の心臓はどきどきしていた。ドアの把手はたしかに回ったのだ。

部屋のまわりのものに比べて極端に小さな入口のドア。そのどあの向こうに何があるのか。なぜ、こんな小さなドアがあるのだろう?ドアの向こう側では、また同じように感じる。それは異世界への扉?

「ハープ」~じゃあそれは本当だったんだ、と彼は思った。本当のことだったんだ。

なぜ、謎だ。この森の奥ふかくに。一台のハープが。誰が奏でるのだろう。そこだけ。水の流れが止まった川波紋が広がっている。

「リンデン氏の書棚」~彼はその本について、女の子にちゃんと注意を与えたのだ。でももう遅い。

禁断の書を開いた少女が、眠りの世界に?本からは草が生えて彼女を覆い尽くすのかもしれない。

「七つの椅子」~五つめは結局フランスで見つかった

宙に浮かぶ椅子に座る修道女。それを見つめる牧師?二人。聖堂の中だろうか?この光景が5つめだとしたら。他の6つはどこに存在するのだろうか。

「三階のベッドルーム」~誰かが窓を開けっ放しにしておいたときに、それは始まったのだ。

何?壁の絵の鳥たちが、1羽いない。そして2羽めがいままさに、羽を広げて飛び出そうとしている。その壁の鳥たちはどこに向かうのだろうか。

「そんなことやっちゃいけない」~彼女がナイフを入れていくと、なんとそれはますます明るさを増していった。

魔法の南瓜?女の見開かれたヒトミが、恐怖をそそる。

「トリー船長」~彼はランタンを三度振った。するとゆっくりとそのスクーナー船が姿を現した。

船長が少年に見せたかったのは。立派な帆船。高い柱をもつ。船長は、海の男。少年は、憧れの船長と、海のロマンを語るのだろうか。

「オスカーとアルフォンス」~それらを返さなくてはならない時が来たことは、彼女にもわかっていた。毛虫たちは彼女の手の中でもぞもぞとうごめき、「さよなら」という字を書いた。

美しい少女と掌の毛虫は、えっ?とミスマッチな感じだ。けれど、二匹の毛虫が、彼女の手から旅立ち。美しい蝶への変身が、少女から女性への変化とダブって感じる。光の方向に向け虫たちが旅立つ。

「メイプル・ストリートの家」~それは文句のつけようのない離陸だった。

豪快。家一軒。ロケットのように旅立つ夜。ごおーっ。なんだか音も聞こえそう。翌朝、ぽっかりとその空間が空いていて、皆驚くだろうなあ。

とにかく14のお話の想像力を楽しませてもらえる作品。モノクロの光と影の世界だからこそ、そこに色を付けるのも読者の想像力次第だ。

とにかく、不気味で、恐ろしく広がりを感じる。子どもから大人の絵本です。



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