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寺山修司「われに五月を」

2008-04-12 | 詩、短歌、俳句

われに五月を (愛蔵版詩集シリーズ)寺山修司の第一作品集『われに五月を』の初版本を底本に、平仮名は底本の通りに、旧漢字は新漢字に改めた。内容は、俳句、短歌、詩、散文詩、日記風散文の五ジャンルにわたり、俳句が「燃ゆる頬」「鳥影」「雉子の詩」、短歌が「森番」「真夏の死」「祖国喪失」、詩が、「楔形文字」「三つのソネット」「かずこについて」に分けられている。俳句九一、短歌一一二、詩一八(「序詞」を含む)、散文詩二を収める。

 

五月の詩 ・序詞・

きらめく季節に たれがあの帆を歌ったか つかのまの僕に 過ぎてゆく時よ

 

森番

草の笛吹くを切なく聞きており 告白以前の恋とは何ぞ

日あたりて遠く蝉採る少年が 駈けおりわれは何を忘れし

ねむりてもわが内に棲む 森番の少年と古きレコード一枚

列車にて遠くを見ている向日葵は 少年の振る帽子のごとし

振り向けばすぐ海青し青春は 頬をかすめて時過ぎてゆく

 

少女に

たれでもその歌をうたえる それは五月のうた 

ぼくも知らない ぼくたちの 新しい光の季節のうた

 

桜の実の熟れるころ

君が詩をやめたのは 祖国のため

君があの愛を雲に見捨てたのは 祖国のため

死んでしまったのは 祖国のため

だが 祖国とは何だ  地平に立って  

僕は知る 君のやさしさだけを

花々をふりまこう ぼくたちも 

やさしさだけがもつ強さのため

たったひとつの 確かさのため

 

燃ゆる頬

目をつむりていても吾を統ぶ五月の鷹

ひとりの愛得たり夏蝶ひた翔くる

林檎の木ゆさぶりやまず逢ひたきとき

秋まつり明るく暗く桶の魚



 



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