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三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」

2009-02-17 | 小説

まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.―ありふれた依頼のはずがこのコンビにかかると何故かきな臭い状況に…

 

コンビというより、迷子犬のような謎の居候君・行天

仕事も…、結婚も…、人生のレールから外れたようなかのような二人の味のある生き方に、会話に魅力ある。

「誰かに必要とされるってことは、誰かの希望になるってことだ」~行天

このへんてこりんな男を必要とし、希望とした人間が、広い世界のどこかには、存在するのだろうか

そう信じられないと思う、多田が必要としてくれるんだよね。

空に星。大きく息を吸って…。湿ったような春の夜の匂い。

 

「だけど、まだ誰かを愛するチャンスはある。与えられなかったものを、今度はちゃんと望んだ形で、お前は新しく誰かに与えることができるんだ。そのチャンスは残されてる」「生きていれば、いつだって。それを忘れないでくれ」~行天が、勘違いな親の愛で育つさみしき少年由良公に告げる。

 

一人でいたい。だれかといるとさみしいから。多田はそう思い、しかしそんなことを思う時点で、俺はもうとっくにさびしいのかもしれないと考えた。

 

「理由なんて、だれにも分からないでしょ。たぶん。本人にも。それはあとからついてくるものなんだから」「やっちゃったら、理由なんてあってもなくても同じだよ。やっちゃったという事実だけが残る」~殺人事件にて、行天のコメント

 

空のとても高いところを、黒い鳥の影が舞っていた。

小さな泉は川になり、いつかは清らかな海に流れ着く。

鳥はどんなに強い風の中でも羽ばたいて、いつかは仲間と共に約束の園にたどりつく。

 

「おまえはなにもなくしたことがないだろう。なにも持っていないからだ」

「だが持っていない振りをして、本当はお前は全部持っている。お前を大切に思う人間も、おまえと血の繋がっっていることが明白な子供。そういうものを、失ったり傷ついたりしない距離において、何も持たないつもりでいるお前は傲慢で無神経だ」

~ためらいがちに言う多田の心の叫びは、血が繋がっていないかもしれない息子を亡くし、妻とも別れた男の心情。。

 

「このごろのあんたは、なにかに怯えてるみたいに見えるね」~行天に心配される多田。

勝手なことばかりして、他人も自分もどうでもいいようなそぶりを見せるくせに、本当は誰よりもやわらかく強い輝きを、胸の奥底に秘めている。男。行天。

 

とにかく、この二人の男の魅力。

謎めいた男二人。少年、少女、、自称コロンビア人のルルさん、ハイシーさん、依頼人、警察、ヤクザ、出てくるキャラクターも個性豊かで、楽しめます。

 

 



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