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小川糸「食堂かたつむり」

2008-10-05 | 小説

失ったもの:恋、家財道具一式、声

残ったもの:ぬか床

失恋し、何もかも失った倫子が故郷に戻り、実家の物置を改造し、食堂かたつむりをはじめる。お客は1日1組だけ。メニューは、お客さんの話を聞いて、すべて一から作り上げる。

 

ちょっとできすぎの話でもあるけど、食べることは命であるし、命をいただくんですよね。

だから、鳥をつぶす場面も、なんと大切に飼っていた豚を殺す場面もあるんですけど、その命を一つも無駄にせず、素敵な料理に変えて、いただきます。

 

倫子さんは、大好きな祖母から料理を教わり、水商売のお母さんには懐かなかった。そのことがずっとしこりで…。15で家を飛び出し、料理の修業を10年、故郷に戻って、いろんな人と出会い、自然が一杯で山の幸が簡単に手に入る田舎で、季節を感じながら誰かのために料理を作ることで、生きる喜びを見いだしていくんだけど…

 

やっぱり、おかんをうとましいって想う気持ちは、その他すべてを愛するエネルギーと同じくらい、深く重たい。澄んだ気持ちでなんかいられない。

イライラしたり哀しい気持ちで作った料理は、味や盛りつけに現れるから、いいことを想像して、明るく穏やかな気持ちで台所に立つのよといった祖母の言葉。

 

ラスト、出生の秘密と母の病気と最愛の人との再開と結婚に至ってはちょっと現実離れしたできすぎ感はありますが…。

お母さんの残していった手紙。もう決して戻らないもの。お互いに声に出して伝えられなかった想い。すべてを優しく包む幸せの料理への情熱。

 

私が食いしん坊だからかな?この本は賛否両論あるようですが。私は、いろんな食べ物が出てくるこの本が好きだな。人一倍、食欲旺盛だからかな?

あと、本当に大切な人が亡くなる喪失感とそれからの再生というか、そういうのも共感するからじゃないかな?いいじゃない。夢があってって思いますもん。



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