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気まぐれ読書・映画・音楽の記録。本文に関係のないコメントについてはご遠慮させていただきます。

グェン・ティ「母さんはおるす」

2008-10-22 | 絵本

ベトナム戦争時の南ベトナム、ハウ川のほとりのタム・ガイ村に住む母と子の物語。
ベトナム戦争の戦火のなかでたくましく生きている子どもたち。子どもたちのこころにしっかりと結びついているお母さんのやさしさと強さ。いま再び、子供の命や平和の大切さについて問う。

いわさきちひろの不朽の名作の復刊。 初版は、ベトナム戦争当時1972年。

作者グェン・ティは、1968年南ベトナム解放民族戦線によるサイゴン総攻撃の中で犠牲になる。メコンデルタの一角タム・ガイ村。登場人物は実在。戦いに行っていつも留守のお母さんは、解放戦線の英雄的戦士。

ちひろさんは、この挿絵を手がけた直後「戦火の中の子どもたち」の絵本の創作にかかったそうです。この2冊の本は、セットで読むとより深い結びつきが分かります。

 

ちひろのことば~

お母さんはお勤めに行くみたいに戦争に出かけていくんです。帰りはおまんじゅうを銃の先にぶら下げて帰ってくる。子ども達は楽しそうに戦争ごっこをしながら待っている。ヤシの木に登って”お母さんが見える”なんて、本当は見えなくても。

十歳位を頭に赤ちゃんまでいる。お父さんは戦争に行っているからいない。おそろしい話なんだけれども、子どもは明るくてかわいい。しょっちゅうきょうだい喧嘩をしている。それを見ていると暗い顔は描けない。戦場の中の子どもでも、ベトナムの写真を見ると、子どものかわいらしさはたとえようもない。出来るだけ最高にかわいく描かなければいけないような気がしちゃって…

 

この本は、戦火の中の子どもを中心に、文章も絵も幼い子どもの視線からの戦争が描かれます。お母さんが、故郷のために闘って、毎日笑顔で帰ってくるのを、5人の子ども達は、それぞれ出来ることをしっかり頑張って、本当に無邪気に、健気に、…戦争の意味を問い、子どもの命や平和について考える絵本です。

 

実際、日本は、この戦争に関しても、アメリカに協力し、加担した一方、民間サイドでは、こういった作家や反戦運動が、広がっていった歴史をたどることが出来ます。

 

~タム・ガイの道も、そして畑も、広々としてきれいだった。毎日毎日、敵の砲弾が、そこらあたりをどれほど深くえぐっても、子ども達があちこち走り回るのをじゃますることはできなかったし、お母さんも、やっぱりそこを通って戦場へと出かけ、帰ってくるのだった。

タム・ガイの空は、爆弾の破裂する中でも、あるいは自分たちがうとうとと眠っているときでさえも、やっぱり青く青く、広々としているのだった。



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