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気まぐれ読書・映画・音楽の記録。本文に関係のないコメントについてはご遠慮させていただきます。

海猫沢めろん「ニコニコ時給800円」

2012-02-28 | 小説
オレはヒキオタニートのユヅキリュウセイ。この日本の下流社会のさらに最下層で生きるイケメンだけがとりえの天才。

<マンガ喫茶の悪魔>
マンガ喫茶「まんが合衆国」に新人アルバイトとして入ったキノキダくんは、東大法科大学院を修了予定の弁護士の卵。自分とは違う世界の人間に脅威を覚えるカザマ店長や他のバイト仲間たちとの日常を描く。

<洋服屋のいばら姫>
渋谷のファッションビル内に店を構える〈LOVE & DREAM〉。女性店員たちは、夢、恋愛、人間関係に悩みながらも、日々の売上ノルマに追われている。そんな中、リーダー・ミカコさんが、店の服が減っていることに気づいて……。

<パチンコ屋の亡霊たち>
広告代理店の営業部長だったカナモリは、死んだ父親に代わってパチンコ屋の支配人を継ぐことに。あるファイルから、従業員全員に前科があることを知ったカナモリは、娘のサオリを店員として働かせ、内情を探らせることにしたが……。

<野菜畑のピーターパン>
ヨーコは実家で、夫・テツヤと父・トシゾウと三人暮らし。父に負い目を感じたヨーコは、実家の休耕地で野菜を作り自分たちで稼ぐことを決意する。そんな中かつてのバンド仲間キョウイチが、あやしげなクッキーを持って現れる。

<ネットワークの王子様>
親の借金返済に苦しむリンコが出会ったのは、自称イケメンヒキオタニートのリュウセイ。リンコの事情を知ったリュウセイは、リンコの家に居候させることを条件に、ネットゲームのサポートスタッフの仕事を紹介する。

仕事と人間の関係が変わる時、新しい世界への扉が開く。
 
 
新しい小説の世界です。時給800 円。これを高いか安いか。。地方に住んでいるか都会かでも違いはあるだろうが。時給800円は、サービス業界じゃ平均的な数字か。等と考えつつ。連作短編集です。
どれも、読み手を飽きさせない。発想の転換。お金。幸せ。夢って何?そういった価値観について考えさせられる。特に、最終章「ネットワークの王子様」においては、リュウセイとリンコの会話。そして、リュウセイに語らせる働くということの意味。レレレのオジサンの謎。
デジタル世代のネットワーク。ゲームの世界。
若者。引きこもり。オタク。ニートが珍しくもない社会に。
 
「楽しさはカネでは買えない。自分が独自に見つけていくもので、それはカネ儲けとは無関係だ」
「同じモノが好きな人たちと一緒に好きなことやっていたいの。だから働くって事を…あまり意識していないかも」
「答えや心理などクソ食らえだ。みんなそれがある前提で話をするが、オレにはイミフメイだ。誰かが心理というやつをつかんだとして、それはそいつだけのモノだ。オレの心理とは違う。なのに、どうしてみんなただ一つの答えなど信じられるんだ?」
「可能性だけなら誰でも無限だ」
「世界はまだまだ可能性にあふれている」その後のおちも良いのだが、ラストの一行でぐっと締まります。
 
短編だし、ぐいぐい気軽に読めました。

 



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