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伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」

2011-02-04 | 小説

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?。「オーデュボンの話を聞きなさい」という優午からの最後のメッセージを手掛かりに、伊藤は、その死の真相に迫っていく。

卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作

 

伊坂さんのデビュー作読んでませんでした。

案山子が喋るなんて。ファンタジーな世界。100年以上、轟という外商する男を除いて、外界から閉ざされた島。この島に足りないものをもたらすため。遠い昔から訪れる運命の男・伊藤。

架空の物語に、支倉常長。オーデュボンなど、実在の人物。秘話を織り交ぜ。両親を幼い頃なくした主人公の生い立ちに影響する。祖母の教え。時折、祖母の言葉が人生の分岐点で彼の決断、あるいは後悔など、祖母の末期のことば「そうとも、愛しているさ」彼女の言葉を直接聞くことはできなかった伊藤だけど。

伊藤が、元彼女の静香に出した絵葉書は。ホイラーの公式に当てはまるな「顧客には感覚をビビットに伝えよ」(勝間和代)

第一公式~ステーキを売るならシズルを売れ!→見知らぬ島のあの場所は、シズル感でしょ。言ったときどんな気持ちが沸きたつかという体験を伝えようとしているから。気持ちが動くし。

第二公式~手書きを書くな。電報を打て。→「至急、君に伝えたいことがある」。余分な言葉をそぎ落とし電報のように完結だ。

第三公式~花をそえて言え!→「そういえば、君のアルトサックスが聴きたい」これは愛嬌があるしぐさに相当すると思う相手の気持ちを引き立たせるでしょう

第4公式~もしもと聞くな。どちらと聞け…。これはなかったけどね。

第5公式~「吠え声に気をつけよ」もちろん。まったく威圧感のない洗練された絵葉書だったと思う。

まさに珠玉の言葉でぎゅーっと記憶に焼きつくように整理されているではないか!!

伊坂さんの作品の登場人物の洗練された言葉はまさにシズル感であり。さまざまな感覚を、どうやってビビットに伝えるか。コミュニケーションに生かす。人間の知恵の醍醐味ってことになるのかも。

~名前があるだとか、無名だとか特別扱い、歴史になを残すとか、そういったものに誰ほどの価値があるだろうか。そう思いながら書いた。別れてもなお、嫌みじみた僕を彼女はきっと顔をしかめて無視するだろう。

名前なんてたいした意味がないのだと分かった。そうは思わないか。

~人間ってのは失わないと、事の大きさに気がつかない。

~失ったものは二度と戻らない

~人の人生てのは1回きりだ。楽しくないとか、悲しいことがあったから、なんて言ってやり直せねんだ。だろ。みんな、1回きりの人生だ。わかるか?。だから、何があっても、それでも生きていくしかねえんだ。家族がコロされても、死にたいほど悲しくても、奇形で生まれてこようと、それでも、生きていくしかないんだ。何故ならそれが一度しかない人生だからだ

「1回しかいきられないんだから、全部を受け入れるしかない」

~自分の中に欠如感があるから、外部から与えられるものを求めているんだ。

「島の外から来人間が、欠けているものを置いていく。」

この島に欠けていたもの。。この謎ときが素晴らしかった~。生活になくてはならぬものでもないかもしれないけど。これがないと私も心が荒むかも。改めて伊坂さん。のセンスの良さに唸っちゃうな。

~ロマンチックな演出がいる。そうだろ。女はロマンチックな生き物だし。いや、正確には違うな、女はロマンチックなものが好きなんだ。実際にロマンチックなのは男だからな。

これには納得しますね。ロマンチックな女はいないです。これは真理でしょう。

~真実なんて大嫌いですよ。偽りが嫌いだと公言する人間を、僕はさほど信用していない。自分の人生をすっかり呑みこんでしまうくらいの巨大な嘘に巻かれている方が、よほど幸せに思える。

しかし、デビュー作からして。伊坂の作品は悪役が警察官である。権威あるものの中にある悪はたちが悪すぎるな。

ここでもクールなナイスガイの桜。こわいけどしびれます。

案山子の優午の哲学的な諦観。

読み応えたっぷりでした。

 



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