情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

取調の可視化~周辺諸国日弁連調査結果2

2006-08-19 21:48:24 | 適正手続(裁判員・可視化など)
【台湾では、1998年に取調べの全過程について連続してテープ録音し、必要があればビデオ録画することが刑事訴訟法に規定された。これは、1つの人権蹂躙事件(王迎先事件:台北市内で起きた銀行強盗事件に関し、王迎先氏が被疑者として取調べを受け、捜査官から暴行を加えられたことを苦に自殺した事件。自殺直前に真犯人が逮捕されていた。)を契機に制度化されたものである。

 このように日本に先行して実際に取調べの録音録画を行っている台湾については、2004年に日弁連の視察が行われているが、取調べの録音録画制度が導入されて10年近くになることから、制度の運用状況ならびに運用上の問題点を視察調査することが、今回の日弁連視察の目的であった。
 視察初日は、台北律師公会の律師たちと意見交換を行い、刑事弁護に携わる律師が感じている問題点を指摘してもらった。
 そこでは、①内政部の調査局や童大事件を扱う警察の部署では、取調べの全過程を録音録画するが、それ以外の警察では録音のみしか行われていない点、②実際の取調べが始まる前の「事前のコミュニケーション」については録音録画の対象となっていない点、③録音録画の質に問題がある等の問題点が指摘された。
これらの問題点を意識しながら捜査機関の視察を行った。

 まず、警察に対しては、台北中内と苗栗県の2カ所の地域を訪れ、録音録画システム、その運用状況に中央と地方で違いがあるかどうかを視察した。録音録画システム自体は統一約な基準はないものの、概ね取調室内の被疑者の上半身を映し出すカメラが1台設置され、部屋の外にあるモニターで様子を確認することができるようになっていた。音声については、各警察によって部屋の外で聞くことができるか否か扱いに違いがあった。録音録画まで行うのは、錘師たちの指摘どおり重大事件や争いが生じることが予測される事件に限られていることが判明した。
また、「事前のコミュニケーション」については録音録画の対象としておらず、その際自白のメリット等を教えることもあるとの発言もあった。

 次に、検察を訪れ、城調室の様子を見学した。日本の検察とは違って、予審判事のイメージに近く、取調室は警察のそれとは大きく異なり、法廷と同じような造りになっていた。検察での取調べについては全過程を録音録画するということであった。検察官に録音録画制度が導入されたことで取調べに弊害が生じなかったか尋ねたところ、支障はまったくなかったとの返事があり、自信すら示していた。

 さらに裁判所では、実際に証拠として提示された録画物を再生していただいた。音声だけでは被疑者の様子がわからないが、映像をみると飲酒か薬物摂取の影響を受け気怠そうにしている様子が克明に記録されており、被疑者の精神状態に問題があることがよくわかった。

 視察した各機関はいずれも取調べの録音録画制度を高く評価していた。
 特に印象的だったのは、捜査機関が、録音録画制度が導入されても取調べが困難になったことはなく、むしろ取調べ技術が向上し、被疑者・被告人から取調時に暴行を受けた等の訴えも減ったと肯定的な意見を開くことができたことである。
 今回の視察により取調べの録画録音のメリットが弁護側のみならず捜査側にも十分あることがわかり、また実際の運用上の問題点も聞くことができた。】(日弁連委員会ニュース2006年8月1日号)



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取調の可視化~周辺諸国日弁連調査結果1

2006-08-19 21:42:30 | 適正手続(裁判員・可視化など)
取調の可視化については,日本は非常に遅れている。警察の反対が強いからだが,果たして,警察は反対するべきなのか?考えるヒントとして,日弁連の周辺諸国調査の結果を引用します。

【韓国では、検察の取調べについて2004年5月2日から全国10ヶ所の検察庁において、警察の取調べについても2006年1月23日から一部警察署において、取調べの録画が試験的に実施されている。また、取調べの録画録音制度の新設を含む刑事訴訟法改正案が2006年1月6日に国会に提出され、現在審議中であり、可決されれば2007年3月1日から施行されることになっている。
 このように日本に先行する形で取調べの録画録音が始まろうとしている韓国については、昨年、福岡県弁護士会において視察を行ったが、その経験も踏まえ、さらに拡大し具体化していく韓国の取調べの録画制度を視察調査するのが、今回の日弁連視察の目的である。
まず、取調べの録画の試験的実施を行っているヤンチョン警察署を訪問し、実際の取調室や設備を見学した。録画用の取調室は、経済犯係に4室、強行犯係に3室設置されていて、いずれも明るい雰囲気の部屋で、天井の2つのカメラで部屋全体と被疑者のアップを撮影できるようになっており、別室の操作室において、パソコンで録画カメラを調節したり、録画内容をCDに焼いたりすることができる。ただ、部屋ごとに設置されたカメラの種類や設置場所が違ったり、部屋の広さや壁などが異なったが、それはどのような設備が最も望ましいかを見極めるためであり、利用者(?)に後で感想を聞いて改善していくために、あえて違いをつけているということであった。
すでに1月の試行開始から5月までの約4ヶ月間で310件の録画実績があり、自白率が下がるということはなく、取調べにかかる時間が大幅に短縮され、また捜査官が分かりやすい用語を使うようになるなどの成果が上がったそうである。
次に、ソウル南部地方検察庁を視察し、録画用の3種類の取調室を見学した。取調対象者に応じて、それぞれ工夫が凝らされた取調室であり、警察同様、非常に明るい雰囲気の取調室であり、天井2箇所にカメラが設置されていた。
 取調べの録画方法としては、被疑者が入室する時点から録画を開始し、取調べの全過程が録画されるようになっており、担当検事からは身体拘束された被疑者については全て録画すべきであるという心強い意見を聞くことができた。また、録画制度を試行するにあたっては、内部的には様々な憂慮や心配があったものの、実際に試験的実施をしてみると、そのような憂慮や心配は不要であったということであり、日本における議論でも参考になる話を聞くことができた。】(日弁連委員会ニュース2006年8月1日号より)




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敵味方刑法という言葉の怖さ~気づいたら敵ばかり?!

2006-08-19 00:42:36 | 適正手続(裁判員・可視化など)
松宮孝明立命館大学法学部教授が「刑事立法と犯罪体系」(成文堂)12頁で,敵味方刑法について触れているので,紹介します。刑法ってだけでも何やら怖い雰囲気があるのに,敵味方刑法だなんて…。

■■引用開始■■
 犯罪論においてもそうなのであるが、刑罰論においてはより顕著に出てくるのが、政策目標として犯罪者の社会復帰ないし再社会化を選択するのか、それとも犯罪者の排除ないし監視を重視するのかという問題である。これは近年、ドイツでは「敵味方刑法」(Feindstrafrecht)と呼ばれ、アメリカではnew penologyという言葉で表現されることのある問題状況に類似する。それは「自律」という観点から見れば、「担い手」を増やす政策をとるか敵を増やす政策をとるかという問題でもある。

 この問題は、近年の欧米諸国の刑事政策においてきわめて大きな問題である。Feindstrafrechtやnew penologyでは、犯罪者は社会復帰の主体として「(潜在的)自律」能力を持つ者としてではなく、その行動様式に変化のない社会の「敵」として扱われる。その帰結は、端的には、犯罪者の隔離による危険の分散であり、そのために--アメリカの一部に見られるように--新しい刑務所の建設などの多大なコストもいとわない。そのような政策がとられることは、社会の統合機能の衰退を象徴するものであって、「担い手」の成長・育成という視点からは避けられるべきものである。もっとも、残念ながらその当否はそれだけでは判断できないのであって、前提として、社会の統合能力ないし(再)社会化能力は向上しているか減退しているか、その社会が外部からの参入に親和的か敵対的か、といった諸点を考慮しなければならない。もちろん、その社会の構成員が統合能力の向上に向けて努力をしているか否かが決定的に重要なことは、いうまでもない。同時に、刑事政策に対する影響力を増してきた一般市民の世論--それ自体は、刑事政策を全面的に「お上」に委ねていた時代よりも前進であるといえよう--に対して、社会の統合という見地からの啓蒙活動が、刑事政策の重要課題のひとつとなったことも、認識しておくべきであろう。それは、社会の「自律」を助けるものでもある。
■■引用終了■■

いま,日本,いや世界中で社会の統合能力は間違いなく減退しつつある…。





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令状なし国内盗聴は「違憲」~米連邦地裁が勇気ある判決

2006-08-18 21:49:10 | 適正手続(裁判員・可視化など)
朝日(←クリック)によると,【米ブッシュ政権が対テロ戦争での情報収集を目的に実施している国内での「令状なしの盗聴活動」の適法性が争われた裁判で、ミシガン州デトロイトの連邦地裁は17日、プライバシー、言論の自由や三権分立の原則などに照らして活動は合衆国憲法違反だとし、即時停止を命じる判決を出した。】という。

 この訴訟を起こしていたのは,転載したイラスト(© ACLU)をHP(←クリック)に掲げて判決を喜んでいるACLU(米国自由人権協会)など。

 【政権側は、盗聴活動は大統領に与えられた最高指揮官としての権限の範囲内だと主張。また、そのことを詳細に論証すれば国家機密の漏洩(ろうえい)につながる、と主張していた。】

 しかし,【判決で、アナ・テイラー判事は原告側の主張をほぼ全面的に認め「この問題に関する公共の利益は明らかであり、それは憲法を擁護することだ」「米国には生まれながら権力を持った王は存在せず、憲法によらない権力も存在しない」などと述べ、大統領に無制限の権力を与えることは、建国時の憲法起草者らの意図を逸脱していると指摘した。】という。(判決全文はACLU内のここ←クリック)

格好いいねぇ。この辺りにアメリカの自由の底力を感じてしまうのは,何度も言うようだが,隣の芝生だからだろうか?


 【政権側は判決直後、「全く同意できない」(スノー大統領報道官)と控訴したため、実際に政策が判決に拘束されることはない】というが,【対テロ特別軍事法廷が違法だと断じた今年6月の最高裁判決に続き、対テロ戦の進め方について司法から痛烈な警告を受けたことになる】ため,【議会などからは、立法措置を求める圧力が高まりそうだ】という。

この辺りは,ブッシュ政権のまやかしからまだ覚めやらない人が多いことを示しており,防衛の必要性が市民の思考停止を導くことを示している。

そういう状況から少数者を守るのが司法府の役割であり,今後も,米国の司法府がその役割を果たすよう期待したい。




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「憲法9条を世界遺産に」~太田光・中沢新一

2006-08-18 04:31:16 | 憲法改正国民投票法案そのほか
雑誌「すばる」に連載された太田光VS中沢新一による対談が,集英社新書から発行されました。太田光,いいですよねぇ。中身については,ここ(←クリック)をご参照下さい。

太田光は,対談の合間のコラムで,憲法9条を守ろうと思考するときに「恍惚」を感じるといい,それは戦いの恍惚にも通じるものだという。そして,必要なものは,「自分を否定する勇気だ」と結んでいる。小泉君にも夏休みの宿題として読むよう推薦したい一冊だ。




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「弁護士会で無料で直してね」~法テラスは弁護士会をなんだと思っているのか?

2006-08-17 08:14:17 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
小耳に挟んだのですが,法務省管轄下の日本司法支援センター「法テラス」(←クリック)が,ホームページに法律相談コーナーを設けようとしているらしいんですが,そのコーナーについて外注したところ,あまりにお粗末なので,弁護士会の担当委員会にSOSを出して,弁護士会が無料でその訂正作業をしているとか…。これって本当ですか?しかも,その法律相談コーナーには,弁護士会以外のHPが照会先としてたくさん引用されており,いかにも弁護士会が軽視されているとか…。

あまりに弁護士会は馬鹿にされていませんか?
法テラスはいったい外注にいくらの費用を投じたのか?
それが使えないものだったら,費用を払う必要なんかないのではないか?
使えないものを弁護士会に無料で訂正しろとはどういうことか?
完成した後,弁護士会が監修したものだということを明記するのか?
今後どのように維持するつもりなのか?

弁護士会側も単に「馬鹿にされている」というレベルの問題だけではないように思う。
そもそも,刑事弁護の問題で法テラスには問題があるところ(ここ参照←クリック),民事関係ホームページの訂正協力要請が法テラス=法務省側から出てきたのならば,そういう状況を利用して,刑事部門で弁護士会が主導をとれるように交渉しないのか?
ここ参照←クリック)

この件について,より正確な情報をお持ちの方はコメントお願いします。
私はこの話を聞いて法テラスとの契約は民事についても考え直さないといけないのではないか?とすら思いました。もちろん,扶助の持ち込み事件(ここ参照←クリック)などの必要から契約をしないわけにはいかないのですが,少なくとも,法テラスでの法律相談を担当することについて非常に疑問を感じています。



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NHKの靖国アンケートに関する吉川ひろし県議の抗議~NHKはアクセス容量の問題と言い訳

2006-08-17 07:54:41 | メディア(知るための手段のあり方)
首相靖国参拝に関するNHKアンケートについて批判されているが,吉川ひろし千葉県議から次のような報告がなされています。メディアの問題点を指摘する際の参考になると思うのでメールをそのまま引用させて頂きます。

■■引用開始■■
8月15日の夜にNHKが「アジアの中の日本」という生番組を放映しました。ご覧になった方も多いと思います。
さて、その番組の中で、「生アンケート」が実施されました。
設問は「首相が靖国神社に参拝することの是非」でしたが、結果は以下の通りでした。

参拝に賛成・・・63%
参拝に反対・・・37%

私は、この生アンケート調査結果が、「携帯電話からに限った」ことで大きな疑問を持ちました。ご承知のように、携帯電話でNHKの生アンケートにアクセス出来る人は限定されます。特に、今回の場合は、ダイヤルを回すという方法ではなく、なにか携帯から特別なアクセス操作が必要な方法でしたので、これができるのは若者が多いと推測されます。
私たち夫婦は、携帯電話は持っていますが、アクセスの仕方が分からないので、参加できませんでした。
公器を使った全国的な世論調査で、母集団が特定世代に偏るような結果が、「首相の靖国参拝に賛成63%」といわれても納得できません。
そこで、今朝、さっそくNHKに抗議の電話をして、どうして「携帯」に限ったのか?
しかも携帯電話でむずかしいアクセス操作が必要な方法を取ったのか?」という質問をしました。

視聴者統括局コールセンターの西村部長という人が対応しましたが、

吉川
「携帯からの生アンケートは、世論を誤誘導する恐れがあるので、 何故、携帯に限ったのか説明して下さい」

西村
「私もテレビを観ていて、これでは民意を反映しないのでは? 変だなと思った。今朝、担当に確認したら、サーバーの容量を超える大量アクセスが予想されたので、携帯に限ったとのことです。」

吉川
「一般家庭電話からのアクセスも可能にしないと、携帯操作でのむずかしいアクセスでは中高年齢者の意見が反映されない不平等な結果の恐れもある。今の技術でアクセス容量に対応するのは可能では?NHKの今回のやり方は納得できない!」

西村
「担当に、そのように伝えておきます」

吉川
「NHKとして、今回の生アンケートは不適切な方法であったとテレビで謝罪してほしい」

西村
「本当に申し訳ありませんが、担当に伝えます」

吉川
「やり直しを求めますので、担当ディレクターから電話をほしい」

西村
「私も、はらわたが煮えくり返っています。どうしてこんなやり方をしたのか・・・」


その後、今日の12時30分に「担当の原神プロヂューサーから私に電話がありました。

吉川
「生アンケートのやり方がおかしいので、実態を知りたい。そもそも、この企画をするときに、携帯では高齢者からのアクセスは困難であるという議論はなかったのか?」

原神
「企画段階で、そのような議論がありましたが・・・、容量のことを優先してしまい高齢者からのアクセスが困難であるとの問題については、そのままになってしまった」

吉川
「アクセス件数が首相の靖国参拝の項目は49,264件ということだが、年齢別のアクセス数を知らせてほしい。多分、若い世代に偏っている気がするので・・・」

原神
「16日の夕方までには、データをまとめて、それをFAXさせていただきます」

吉川
「いずれにして、天下のNHKといしてはお粗末である。何等かの対応を考えてほしい」

原神
「わかりました。検討してみます」
************************************
吉川ひろし(千葉県議・無所属市民の会)
http://members.jcom.home.ne.jp/h-yosikawa/

■■引用終了■■




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靖国神社が取材拒否~職員寮の所在を地図にしたから…

2006-08-16 07:38:40 | メディア(知るための手段のあり方)
確かに自分が住んでいるところが新聞に掲載されたら気持ちはよくはない。特に世論が沸騰している靖国神社の寮であれば,なおさらだろう。しかし,だからといって,謝罪を求めるだけでなく,【本社の取材申請を「当分の間」は許可しないとする抗議書を本社側に手渡した。この結果、小泉首相が参拝した15日、本紙記者の取材申請は拒否された。】(朝日)というのは行きすぎでしょう。

そもそも,この寮の一つは,その名称からいってパソコンソフトで売られている住宅地図からでも簡単に関係者の寮だなって分かるし,その気になれば,不動産登記簿を閲覧すればすぐに分かる。つまり,靖国神社側が特に秘しているわけではないものだ。

確かに,朝日の記事には,地図までは不要だったかも知れないが,掲載されたからと言って,【身辺保護の立場から、極めてゆき過ぎた報道】とまでは言えないのではないか?少なくとも,取材拒否までする必要があるとは思えない。

そういう意味では,【〈朝日新聞広報部の話〉 地図への抗議と取材申請への対応は全く別問題である。報道の自由に抵触する遺憾な行為と言わざるを得ない。取材規制の速やかな解除を求める。】というコメントは正当だと思う。

ただし,【本社広報部は14日、「靖国神社が発行している社報などでも、具体的な地番まで公表されている。紙面では地番を伏せるなど配慮をした上で掲載した」と回答】した点については,地図を掲載しておいて,【地番を伏せるなど配慮をした】というのは,腰が引けている…。




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貧乏人は高い利息で借りればぁ~これでも自民党支持するのか?!

2006-08-15 23:34:19 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
日経によると,【金融庁は来年の施行を目指している貸金業規制法の改正で、貸付金利の上限を引き下げるのに合わせ、少額・短期の貸し付けについては上限金利の上乗せを認める方向で検討に入った。「貸付額50万円以下で返済期間は1年以内」とする案が軸で月内に与党に提案する。上限金利を大幅に下げると、貸金業者が信用力の乏しい利用者に資金を貸さなくなるとの指摘があることに対応する。】という。

特例措置の対象になるのは【担保や保証人をつけない少額・短期の貸し付け】だというから,つまり,生活に苦しんで仕方なく,借り入れる人たちが対象ということだ。

せっかく,最高裁判決を受け,【金融庁と与党は出資法の上限金利(29.2%)と利息制限法(15―20%)に挟まれたグレーゾーン(灰色)金利を撤廃、利息制限法の水準に上限金利を下げる方向で議論を進めている】のだが,【特例対象には出資法の上限に近い金利水準での貸し付けを認める見通しだ】というから,低所得層は,見直しの恩恵を被ることができないかもしれない…。

弱者につけを押しつける…まさに,小泉改革の象徴的な政策だ。

日経の記事に対し,ロイターは,【与謝野経済財政・金融担当相は15日の閣議後会見で、同日付日経新聞が、貸金業規制法の改正で上限金利が引き下げられる際、少額・短期の貸付は適用外とする方向で検討に入ったと報じたことに関連し、金融庁として結論を出したわけではない、と述べた。】と報じている。

ロイターによると,【与謝野担当相は少額・短期に例外措置を設ける場合の問題点として、「少額とは何か、短期とは何かとの問題がある。また、複数の業者にまたがって借りた場合、多重債務の発生につながる問題がある。(これを)技術的に抑止できるかという問題がある。また、恒久的な措置としての例外を作るのか、激変緩和的要素を考えて暫定的経過措置としての例外を認めるのか意見が分かれる」と指摘。「月末までに(金融庁としての)考え方をまとめて党に答えを出したい。金融庁としてまだ結論を出したわけではない」と述べた。】らしい。

確かに,【複数の業者にまたがって借りた場合、多重債務の発生につながる問題がある】というのは正論だ。

何とか,このような方針の実現を阻止したい!ぜひ,弁護士会が行っている署名運動にご協力下さい!!また,新聞社に投書するなどプレッシャーをかけてほしい。

それにしても,ロイターが関心を持つのは,サラ金の多くに外資が入っているからだが,外資に日本の市民の生き血を吸い取られているかと思うと,「愛国心」めいたものがめらめら燃えてくるのは,しょうがないなぁ…。




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小泉の靖国参拝問題で小泉のずる賢さ明らかに~というか,メディアは何やってんねん

2006-08-15 21:54:07 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
小泉首相が8月15日,参拝をした。まぁ,もう首相を辞めることになっており,先のことを考える必要がない(と思ってる)んだから,参拝を止めることはできんわなぁ…。それにしても,小泉首相のインタビューを聞いていると小泉のずる賢さがよく分かる。小泉は次のように述べた。

「過去5年間の私の靖国参拝に対する批判は3点に要約される。一つは中国、韓国が不愉快な思いをしているから、やめろという意見。私は日中、日韓友好論者だ。一つの意見の違いがあると首脳会談を行わないことがいいのかどうか。私を批判する方は、つきつめれば中国、韓国が不快に思うことはやるなということだ。もし、私が一つの問題で不愉快な思いをしたから中国、韓国と首脳会談を行わない、と言ったらどちらを批判するか。

 もうひとつは、A級戦犯が合祀されているから行っちゃいかんという議論。私は特定の人に対して参拝しているんじゃない。一部で許せない人がいるから、圧倒的多数の戦没者の方々に対して哀悼の念を持って参拝するのがなぜ悪いのか。私はA級戦犯のために行っているんじゃない。

 第3点は憲法違反だから、参拝をしちゃいかんと。憲法第19条、思想および良心の自由は、これを侵してはならない。これをどう考えるか。まさに心の問題」(朝日

最初に,一番簡単にクリアできる中国,韓国の話を持ち出している。確かに,小泉の行為が憲法上の問題をはらむような重要なことでなければ,「私を批判する方は、つきつめれば中国、韓国が不快に思うことはやるなということだ」という言い方をすることもできるかもしれない。共感する人も多いだろう。
しかし,ポイントは,小泉がしていることは,憲法違反ではないかという重大な疑義があることだということだ。その前提を無視して,「つきつめれば中国、韓国が不快に思うことはやるなということだ」という言い方をするのが小泉流。
例えば,浮気をした妻がいて,それを夫に問いつめられたときに,「あなたが不快に思うことを一切するなということか?」と開き直っているようなもんだ。確かに箸をつかうときに,左手と右手を交互に使うくせがある妻が,それを注意されたときに「あなたが不快に思うことを一切するなということか」と言うことには一理ある。しかし,浮気した妻が「あなたが不快に思うことを一切するなということか」と言ったら,ただの逆ギレ!

次に,A級戦犯の問題を取り上げ,「私はA級戦犯のために行っているんじゃない」という。これも結構共感されやすい発言だ。
しかし,A級戦犯問題が現に複雑な問題となっていることを知っていながら,参拝した以上,そういう言い訳は通らない。妻が夫から再三,「元同級生の小泉純一郎とは食事に行くな。君は彼のことがいまでも好きなんだろう」と言われていた場合,妻が小泉と食事に行っているところがばれた際に,妻が小泉から重要な相談があるからって言われたんだと言い訳し,「私は自分が小泉に会うために行っているんじゃない」と言ったら,これもやっぱり逆ギレ!

そして,最後に答えようのない,違憲問題。小泉は,「憲法第19条、思想および良心の自由は、これを侵してはならない。これをどう考えるか。まさに心の問題」という。このような言い方をすると「内心の自由」なんだからいいじゃないかという気もしないではない。
しかし,内心の自由が行為となって表れていることが問題なのだ。妻がいまでも小泉を好きでいてもそれは仕方がない。夫だって,内心そう思っている分には,どうしようもない。
しかし,いったん,妻が小泉と食事に行った以上,それは内心の問題ではすまない。小泉と食事に行ったことを批判された妻が「私が小泉をいまでも好きかどうかなんて分からないでしょう。私は小泉から相談をされたから会っただけ。会う会わないは,私が決めること。私の心の問題よ」と言ったら,それも逆ギレ。


結局小泉は,「なぜ,遠くから,頭を下げて祈るのではなく,わざわざ,参拝をするのか」という根本的な疑問には答えていない。

記者達もそのような質問を一切していない。この日あることが分かっていながら,記者達は何を質問すればよいかを考えていなかったのか?

「心の問題」と来たら,「君が代で起立しなかったために,処分される教員の心の問題について,どう思うのか」ぐらいは切り返せないのか!

日弁連のような意思決定に時間が必要な「組織」でさえ,かねてより準備をしていた会長談話を直ちに発表しているのに…。

会長談話は,
【小泉純一郎内閣総理大臣は、公約において表明していたとおり、終戦記念日である本日(8月15日)、広く報道される状況下において、往復に公用車を使用し、内閣総理大臣秘書官を同行させ、内閣総理大臣の肩書で記帳及び献花をして靖国神社に参拝した。このような形で行われた参拝は、内閣総理大臣として行われた公式参拝と評価せざるを得ない。 】
と事実認定し,

【日本国民は、先の大戦において靖国神社の国家神道化が軍国主義を支える重大な役割を果たし、戦争の惨禍を招いたことを教訓とし、日本国憲法を制定し、平和主義とともに、制度的保障の一つとして政教分離の原則を掲げた。これにより、靖国神社は、国の管理を離れ、それまでの特権を失い、単立の宗教法人となった。 】
と歴史を振り返ったうえで,

【日本国憲法の政教分離原則(憲法20条1項後段、20条3項、89条前段)は、政治と宗教の厳格な分離を定めたものであって、厳しく遵守が求められる。国政の最高責任者である内閣総理大臣が、その地位にあるものとして一宗教法人である靖国神社に公式参拝することは、同神社を援助、助長、促進する効果をもたらすものとして、国の宗教活動の禁止を定めた憲法20条3項の精神に悖ることは明らかである。

内閣総理大臣は、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負い、政教分離等の原則をうたう日本国憲法を遵守し、さらにその実現に力を尽くすべき義務がある。しかるに、国政の最高責任者である内閣総理大臣が、政教分離原則に反して靖国神社に公式参拝することは、このような憲法上の各義務にも違背するものである。】
と明確に批判している。

メディアは,小泉参拝に向けていかなる紙面を組む予定でいたのか?そしてそれについて,社内でいかなる協議がなされたのか…。


靖国関連過去エントリー:ここここなど




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橋本勝の政治漫画再生計画-第33回-

2006-08-15 15:43:20 | 橋本勝の政治漫画再生計画
究極のテロ防止法


機内への持ち込み荷物は
透明な袋に入れてください
なお,それから
キケンな思想の持ち主を排除するため
どうぞ,頭も透明な袋に入れてください
最新のハイテク技術を結晶させた
監視カメラが
あなたの脳のキケン度を測定します



ヤメ蚊:見ていて自分の脳が空気にさらされたような感触がしました…




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インリン・オブ・ジョイトイ~9月9日,「Be In」に参加

2006-08-14 23:19:21 | イベント情報(行かれた方はぜひご感想を)
ジョー山中,インリン・オブ・ジョイトイ,増山麗奈(桃色ゲリラ)が参加する「Be in」が,9月9日,明治公園で開催される。この催しは、アメリカでベトナム戦争反対の声がくすぶり始めた1967年、編集者アラン・コーエンが若者に呼び掛け,その結果,“コンサートでもなく” “政治集会でもない” “集い”として語り合おう!と“LOVE & PEACE”のかけ声で、西海岸に3万人集まったことが始まり。
 9.11事件が起こった翌2002年、“ひとりひとりが人間に立ち返ろう HUMAN BEING”の考えのもとに「9.11 BE-IN」が始められた。

 昨年から「+WORLD PEACE NOW Special」としてパレードが行われるようになった。平和を求める声を楽しく広げよう!

 ちなみに,インリンは,結構,しっかりした意見を発信するエロテロリストです(ここ参照←クリック)。


◆平和を祈る、愛といのちとARTのまつり 911BE-IN Vol.05
Peace Candle Gathering human BE-IN ‘06
~こころよここにこないか ~
■9月9日12:00~20:46 雨天決行 
■明治公園 JR総武線(各駅停車)千駄ヶ谷駅下車徒歩5分 都営地下鉄大江戸線 国立競技場駅下車(A2)徒歩5分

 http://be-in.jp/
ジョー山中/インリン・オブ・ジョイトイ/増山麗奈(桃色ゲリラ)、他
主催:BE-IN 2006実行委員会



◆WORLD PEACE NOW 9.9
ピースパレード
日時:2006年9月9日(土)開会:13:30
◎パレード出発:14:30 コース:明治公園→原宿駅前→表参道→青山通り→明治公園の一周コース
●電話連絡先:許すな!憲法改悪・市民連絡会 03(3221)4668/アジア太平洋平和フォーラム(APPF)03-3252-7651/日本消費者連盟 03(5155)4765/ピースボート 03(3363)8047/平和をつくり出す宗教者ネット 03(3461)9363
●住所連絡先:東京都千代田区三崎町2-21-6-302市民連絡会気付 FAX03(3221)2558 
メール:worldpeace@give-peace-a-chance.jp
http://www.worldpeacenow.jp/




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日弁連会誌に共謀罪に関する批判論文掲載2~立法事実がない

2006-08-14 18:37:40 | 共謀罪
後半は,理論的な問題点の指摘だ。共謀罪は,私達が一生懸命勉強し,いまも,多くの司法試験受験生,ロースクール生が勉強している理論と本当にかけ離れている。教授の皆様,本気で反対して下さいよぉ。成立したら,いままで教えてきたことはどうなるんですか?

■■引用開始■■

三 理論的な問題点

1 行為主義違反
 第二に、共謀罪は、近・現代の刑法の諸原則に反する可能性が高い。

 まず、最初に指摘しなければならないことは、伝統的な刑法理論が前提としてきた「行為原理」に反するということである。

 行為原理とは、「処罰の対象は社会を侵害する行為に限られる。」という原理をいう。この原理の意義は二つある。一つは、処罰の対象は外部に表れた「行為」に限られ、思想は処罰されないとする原則で、憲法一九条と表裏をなすものである。もう一つは、外部的に表れた「行為」であっても、それが社会に害を与えるものでなければ処刑されないという原則である。ここで、「社会に対する害」とは、一般的には、社会を構成する個々人の権利・利益の侵害及びその危険を指すものと解されている。

 ところが、共謀罪は、とりわけ「実行に資する行為」「実行に必要な準備」を要しない政府案では、「共謀」、すなわち、「合意」のみで完成する。そうであるとすれば、この法案は、上述した行為原理の二つの意義に照らして問題がある。

 すなわち、第一に、共謀罪が思想ないし内心を処罰するのではないかという疑問がある。これに対して、政府は、「合意」という外形的事実があるから行為原理違反とはならないと反論する。しかし、問題は、「合意」という現象それ自体は、日常的な出来事であって、外形的には何ら社会侵害的な作用を持たないということである。すなわち、共謀罪の可罰性は、合意の内容という人の内心に依拠しているのであって、外形的に犯罪的意味を持ちうる行為を構成要件要素として要求しない限り、行為主義の第一の意義に反することは明らかである。

 第二に、たとえ「犯罪行為」の「共謀」であったとしても、それが外部に向けて発せられない限り、社会に害を与えるものではないという問題がある。確かに、「犯罪行為」の「共謀」は望ましいものではないが、合意の内容が外部的に明らかにならない限り、それは社会に対する有害なメッセージとはならない。合意は、本来、当事者間のプライバシーの領域にあるものであって、それだけでは社会に作用するものではないのである。そうだとすれば、共謀のみを処罰することは、行為原理の第二の意義にも抵触する。

 このような問題は、既に日本政府自身が自認してきたところであり、現に、当初は、「すべての重大犯罪の共謀と準備の行為を犯罪化することは我々の法原則と両立しない。」との意見が出されていたのである。日本政府は、その後、対象となる重大犯罪の範囲が限定され、組織犯罪集団の関与を条件に付すことが可能となったことを理由に、突如として共謀罪新設に積極的に取り組むようになった。しかしながら、「対象」が限定されたとしても、「行為」に関する行為原理との抵触は解消されない。そもそも刑法典その他特別法に規定されている陰謀、共謀の処罰ですら、問題をはらむものであるのである。それを、あえて拡張する理由はどこにもないのである。

2 構成要件の不明確さ
 次に指摘しうるのは、共謀罪の構成要件が極めて不明確(ないしは広範)であるということである。

 共謀罪の構成要件メルクマールは多岐にわたるが、その中核をなすのは、「共謀」という概念である。これについては、酒場で犯罪実行について意気投合し怪気炎を上げただけでも処罰されるのではないかという懸念が示されているところ、法務省は、「特定の犯罪の遂行」の具体的・現実的「合意」が必要であるという理由で、この程度で処罰される危険はないと説明している。

 しかし、このような法務省の説明は、欺瞞に満ちている。法務省の説明は、合意の内容が限定されるというだけであって、共謀の態様については何ら触れるところがない。現に、政府自ら、共謀罪の「共謀」は、共謀共同正犯の「共謀」と同じであり、場合によっては、目くばせでも成立すると説明しているのである。そうであるとすれば、「合意の内容」の立証いかんによって、露骨な言い方をするならば、自白の取り方いかんによって、酒場で怪気炎を上げる行為も処罰の対象となり得るのである。

 しかも、問題を合意の内容に移してみても、実は、法務省が説明する限定解釈の手がかりは存在しない。すなわち、伝統的な共謀共同正犯理論では、共謀は、黙示的なものでもよく、順次共謀でもよいとされている。しかも、共謀の成立にあっては、必ずしも共謀者全員が犯行の細部にわたって認識していることまでは必要とされないとされているのである。このように、共謀共同正犯における「共謀」は、法務省の説明とは異なり、具体的、現実的でなくてもよいと解されており、そうであるとすれば、法務省の主張は、「共謀」という文言を限定解釈しなければ成立しないものである。しかし、これを限定する手がかりは、法文上、全く存在しないのである。

 その結果、共謀罪は、「共謀」という文言を字義どおり適用すると法務省自身が懸念するように広範であるのに、縮小解釈の手がかりがないという避退窮まった事態に陥るのである。

3 刑の不均衡
 さらに、共謀罪については、処罰の不均衡をもたらし、耐え難い法体系の矛盾を引き起こす。

 すなわち、共謀罪については、死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪の共謀に対して5年以下の懲役又は禁錮、長期4年以上10年以下(民主党案では長期5年を超え 10年以下)の懲役又は禁錮の刑が定められている罪の共謀に対しては2年以下の懲役又は禁錮が科されているが、現行刑法典には、殺人、放火、強盗等について、2年以下の懲役を定める予備罪の規定が存在する。これは、害悪が具体化した方が刑が軽いことを意味し、不当である。

 さらに、共謀罪の保護法益が、法務省の説明するとおり、共謀に係る犯罪と同じであるとすれば、共謀が予備段階に達すれば、共謀罪は予備罪に吸収されると解さざるを得ないが、そうすると、予備罪のある犯罪については、共謀で思いとどまるよりも、予備まで実行した方が有利になる。これは、共謀者に対し、予備行為を実現させる動機にもなりかねず、極めて問題である。

 他方、刑の不均衡を回避し、犯罪への動機付けを否定しようとするならば、予備段階に至ったとしても、共謀罪は独立して成立すると解さざるを得ないが、このような解釈は、伝統的な予備、未遂、既遂の解釈を根底から覆すことになろう。さもなければ、共謀罪の保護法益は、共謀に係る犯罪と異なると説明せざるを得ないが、これは、法益に関する法務省の説明と矛盾する。いずれにしても共謀罪は、法体系に矛盾をもたらすのである。

4 自首減刑の問題点
 最後に、共謀罪には、実行前の自首により刑が必要的に減軽又は免除されるとする規定がある。しかし、この規定にも、重大な問題がある。

 既に、共謀罪に反対する論者が繰り返し指摘しているように、この規定は、密告を奨励することになりかねない。すなわち、共謀罪は、2人以上の者が特定の犯罪の実行を合意することによって成立する。したがって、共謀者の1人の自首は、必然的に他人の犯罪の申告を伴うこととなる。結果として、自首をした者は、いわば、他人を国家に売り渡して刑の減軽、免除を手に入れることとなる。これは、他人の犯罪の申告義務を課すに等しいが、このような義務付けに対し、社会の承認を得られるかは難問である。

 さらに、自首規定は、予備や中止未遂規定との不均衡をも生じさせる。すなわち、共謀罪は、共謀によって既遂となる犯罪であるから、論理的には中止未遂の適用はない。そうすると、実行に着手した者は、結果を防止するだけで別の必要的減免を受けられるのに、共謀罪の場合は、自首を要することとなる。

また、予備については、強盗予備を除いて、任意的な刑の免除が認められているから、共謀罪との不均衡は明白である。これも、場合によっては、「共謀までしたなら、予備、着手してから中止した方がまし」ということになりかねず、我が国の法益保護にとって逆効果である。

 なお、民主党の修正案や与党の再修正案は、自首の対象を限定しようとしている。これは、密告奨励という批判に対応するものと解されるが、対象となる犯罪については、同様の危険が依然として存在する上、軽い犯罪の方が必要的減免の範囲が狭くなるという矛盾をもたらすことにもなる。重要なのは、自首減刑の対象を限定することではなく、端的に、共謀者が任意に犯罪の実行を放棄又は結果を防止し
たこと(いわゆる行為による悔悟)を刑の必要的減免事由とすることである。

■■引用終了■■





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日弁連会誌に共謀罪に関する批判論文掲載1~立法事実がない

2006-08-14 18:32:52 | 共謀罪
日弁連会誌である「自由と正義」8月号に,【「治安国家」の代償~自由と社会を破壊する共謀罪】と題する論文が掲載されている。松原祐紀弁護士(大阪弁護士会)の筆になる。問題点が分かりやすく書かれているので一部分を2つに分けて引用したい。
 
■■引用開始■■

二 立法事実の不存在


1 国内における立法事実の不存在
 第一に問題と思われるのは、我が国において共謀罪を必要とする立法事実が存在しないことである。このことは、法案に付された提案理由からも一目瞭然であるし、法務省もそれを認めている。

 もっとも、審議の過程では、「組織暴力団」や、いわゆる「振り込め詐欺」を例として取り上げ、これらの犯罪に対処するために、共謀罪が必要であるかのごとき説明がされている。しかし、これまで、共謀罪を必要とする組織暴力団、振り込め詐欺に関する事件は報告されていない。しかも、殺人、放火、強盗などの重大犯罪については、既に予備罪が存在している上、「組織犯罪対策法」、「携帯電話不正利用防止法」、「本人確認法」等の各種立法も既に存在しているところである。すなわち、上記の説明には、なぜ既存の刑罰や刑罰以外の社会システムでこれらの犯罪に対応できないのか、という説明が欠けているのである。それどころか、この点を真剣に検討したことすらなく、上記の説明が後付にすぎないことを如実に物語っているのである。

 このように、立法事実の厳密な検討なくして、安易に処罰の(広範囲にわたる)早期化をはかることは、刑法の補充性の原則からしても、問題があると言わざるを得ない。

2 「グローバリゼーション」の問題点
 それにもかかわらず、政府が共謀罪の成立を急いだのは、いわゆる国際組織犯罪防止条約の締結を急ぐためである。とりわけ、念頭に置かれているのは、組織犯罪対策に共謀罪を多用するアメリカからの犯罪人引波要求に応じられるようにすることである。しかしながら、これにも問題がある。

 一つは、犯罪人引渡のために、本当に共謀罪が必要なのかという問題である。これについては、そもそも、共謀罪を組織犯罪対策に利用すること自体に問題があるが、そのことをおくとしても、具体的に、共謀罪がなかったために、犯罪人引渡に応じられなかったとする事例は明らかにされていない。周知のとおり、犯罪人引渡に応じるためには、我が国においてもその行為が犯罪とされていること(双罰性)が必要であるが、現行法の共犯規定による処罰可能性を理由に「双罰性」要件を肯定した高裁判例(東京高決平成3年3月30日判例時報1305号150頁)に鑑みると、共謀罪がなければおよそ犯罪人の引渡が不可能となる事態は考えにくいように思われる。

 もう一つは、仮に、犯罪人引獲のために共謀罪新設が必要であるとしても、そのために、「我が国の法原則と両立しない」共謀罪を新設することが妥当なのかという疑問である。共謀罪の新設は、しばしば「グローバリゼーション」という美名のもとで推進されているのであるが、実態は、我が国に対し、外国(とりわけアメリカ)の法規範、文化規範が適用されることにほかならない。これは、我が国の法規範、文化規範が外国のそれに従属することを意味する。しかし、これは、各国に共通の「ミニマム・スタンダード(最低基準)」を設定すべき条約の役割を逸脱し、事実上、我が国の有限の捜査・司法の資源(リソース)をアメリカに贈与したに等しいものと言わざるを得ない。

 さらに、三つ目として、共謀罪の保護法益との関係が挙げられる。すなわち、法務省は、共謀罪の保護法益としては、共謀罪固有のものは想定しておらず、共謀に係る犯罪により保護される法益の保護に資するものと説明しているが、上記のような真の目的と保護法益の説明が整合していないと言わざるを得ない。

■■引用終了■■





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英国皇太子公邸で大衆紙記者が盗聴~しかし,コメントはあっさり

2006-08-14 07:38:55 | メディア(知るための手段のあり方)
CNNによると,【ロンドン──チャールズ英皇太子の公邸クラレンス・ハウスなどで電話が何者かに盗聴されていた疑いが浮上し、ロンドン警視庁は9日、大衆紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドの王室担当記者クリーブ・グッドマン容疑者(48)と、ロンドン郊外在住のグレン・マルケア容疑者(35)を起訴したと発表した。】という。

これを受けて,【同紙は11日、捜査が続く間、グッドマン記者の職務を停止した、と発表した。】らしい。

しかし,The Guardianの9日付紙面では, 【The News of the World confirmed last night that Goodman was one of the men being held. A spokeswoman said: "Clive Goodman, a News of the World journalist, was arrested today and is currently being questioned at Charing Cross police station in London."】とあるだけで,謝罪のコメントはない。


無責任な発言をすれば,対権力での行きすぎた取材は,許したくなってしまうし,こういうあっさりしたコメントにも好感を持ってしまう…。ウェブ上の紙面にも謝罪文言は見つからない…。

これが一般市民などを対象にした盗聴だったら話は別だけど…。




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