日本新聞協会編集委員会が今月発表した全国の報道機関が集団的過熱取材(メディアスクラム)回避を目的とした過去3年間の取り組みを検証する報告書を入手した。その概要は末尾のとおりであるが,気になったのは,この報告書に記載してある集団的過熱取材の対応協議機関の一覧表がどうやらネット上では公開されていないことだ。情報流通を業とする以上,自らの情報流通過程に関する苦情処理方法は透明度を高めるべきであり,その情報を内部に止めるべきではない。現状では,ある現場で集団的過熱取材が問題となった際,当事者あるいは周辺住民の苦情を現場の記者が無視した場合,どこに相談したらいいのか分からないということになる。直ぐに,日本新聞協会のウェブサイト上で公開してほしいもんだ。
なお,対応窓口もわりとアバウトなところ(現場の記者または各社)からきちんとしたところ(幹事社あるいは常任幹事である某社編集局次長などのように責任を明確化しているところ)まであり,この辺からも各地での対応の違いが透けているように思う,というのは少し,うがった見方だろうか?
なお,
共同通信によれば,日本新聞協会編集委員会が10日まとめた集団的過熱取材(メディアスクラム)に関する報告書要旨は次の通り。
一、はじめに
メディアスクラムは、当事者や関係者のプライバシーを不当に侵害するだけでなく、メディアへの不信をさらに高めることになりかねない。日本新聞協会編集委員会は2001年12月、「嫌がる当事者や関係者への強引な取材は行わない」などとするメディアスクラムへの対応策をまとめた「見解」を出した。
02年4月に「集団的過熱取材対策小委員会」を設置。その後、各地でメディアスクラムが発生した場合に解決策を合同で協議する「調整機能を備えた組織」(協議機関)が整備された。
今回の調査は、約3年間の取り組み状況を検証し課題を把握するのが目的で、協議機関にアンケートし報告書にまとめた。各地からメディアスクラム回避に取り組んだ事例が報告され、当事者や関係者から一定の理解が得られつつある現状が示された。一方で、協議機関に加盟していない民放テレビ局や雑誌社などとの調整の難しさも浮かんできた。
「メディア規制」の流れが強まる中、メディア自身がメディアスクラムの被害防止に適切に取り組むことが、報道の自由を守り、メディアへの信頼を高めることにつながると考える。そのためには、メディアの違いを超えた横断的な取り組みや記者教育の徹底が不可欠であり、放送・雑誌など新聞以外のメディアとの連携を、より一層強化していく必要がある。
一、3年間の取り組みと課題
【協議機関の設置状況】
現場の記者らで組織する記者クラブや、地域における各社の取材責任者で構成する支局長会などが協議機関の役割を担うと想定されている。調査の結果、協議機関とその窓口が47都道府県すべてで設置されていた。各協議機関の対応窓口は13道府県が一本化しており、専用電話を設置して番号を公表している県もあった。
【メディアスクラムの回避に取り組んだ事例】
17都府県から報告された。協議機関以外の組織が対応した事例も16都道府県で確認された。双方を合わせると、対応事例があったのは28都道府県(重複を除く)に上った。
対応事例として(1)北朝鮮による拉致被害者らをめぐる報道(2)イラクでの邦人関係事件をめぐる報道のほか、事件事故の被害者の葬儀取材をめぐる事例も複数みられる。
【対応の概要】
(1)節度・良識ある取材の申し合わせ=9都府県
(2)代表取材の形式をとる=6県
(3)本人・代理人に定例会見・レクを開催してもらうか、コメントを発表してもらう=12道県
(4)その他=7都県
今回の調査で報告された報道側の対応は、おおむね「見解」に沿った内容になっている。
【取材対象者からの評価】
調査結果からは「告別式終了後、近親者を通じて被害者両親の感謝のコメントが寄せられた」「小学校などから感謝のコメントが寄せられた」など、取材対象者から一定の肯定的な反応があったことがうかがえる。
【今後の課題】
(1)地元メディア以外のメディア(雑誌・テレビ)との調整・連携
当該地域の協議機関や記者クラブに加盟していない他のメディアとの連携が不可欠。週刊誌やテレビのワイドショーが加わった取材現場では、いくら地元側が対策を申し合わせても協力が得られない例があった。
小委員会は(1)協議機関のうち、在京キー局をはじめとする民放局が未加盟の組織については、民放局の加盟促進を求めていく(2)民放連、雑誌協会に意見交換の機会を求める、の2点を確認した。
(2)取材規制につながらない対応
メディアスクラム対策と連動するかのような警察側の取材・発表規制に対しては、報道側として十分に注意を払う。
一、メディアスクラムへの対応事例(略)
(共同通信社)