情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

元CIA工作員が米副大統領らを提訴~身元漏えいの賠償を求める

2006-08-01 18:38:29 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
旧聞に属するが,西日本新聞によると,【米中央情報局(CIA)工作員名漏えい事件で、身元を明かされた元工作員のバレリー・ウィルソンさんと夫のジョセフ・ウィルソン元ガボン大使は13日、漏えいを指示したとされるチェイニー副大統領らを相手取り、損害賠償などを求めて首都ワシントンの連邦地裁に提訴した。】という。

この件は,情報源の秘匿の関係で何度か触れてきたが(ここなど←参照),そもそもは,【元大使夫妻は、イラクの旧フセイン政権によるウラン購入疑惑を調査した元大使が同疑惑を歪曲(わいきょく)された情報だとして戦争計画を進めていたブッシュ政権を批判したため、副大統領らが報復のため妻の身元を報道機関に漏らした】という典型的な権力による報復,意趣返しという単純な事件だ。

この問題が発覚した後,特別検察官のパトリック・フィツジェラルドが捜査にあたったが,「チェイニー副大統領は、犯罪には関与していない」と表明し,刑事事件としては広がりを見せなかった。

結局,【司法当局はリビー氏を偽証罪などで起訴したものの、ローブ氏の訴追を見送った。肝心の機密漏えい罪では誰も訴追されていない。】

今回,【訴えられたのは副大統領、ローブ大統領次席補佐官、リビー元副大統領首席補佐官のほか、事件に関与したとみられる政府、政界関係者10人。】で,【元大使夫妻は副大統領らの違法行為によって損害を被ったとして、被告に金額を特定しない賠償や懲罰を請求した。】という。

最初に工作員の氏名を報道した【保守系コラムニストのノバク氏は12日の米紙ワシントン・ポストに寄稿し、情報源がローブ氏、ハーローCIA報道担当官(当時)、政府高官の3人だったことを明らかにしている。】

しかし,副大統領相手に提訴というのが凄い。日本で同じような状況にあった場合,政府高官を相手に訴訟を提起することができるだろうか…。

違いは,どこにあるのだろうか。2大政党制だから,野党がバックアップしてくれるのだろうか…。

こういうところが,アメリカの底力のように思えるのは,隣の芝生だからだろうか…。




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50万円あったら,弁護人は自分で探せ!~これは酷すぎる…

2006-08-01 03:21:51 | 適正手続(裁判員・可視化など)
DANZOさんのご指摘で,【資力の乏しい容疑者に国が弁護人をつける「国選弁護」制度で、法務省は「資力」の基準額を50万円にする方針を固めた】(ここ←クリック)というニュースを見た。これにはあきれるほかない!

これは新たに設けられる起訴前からの国選弁護制度(これまでは扶助協会が費用を出す形で対処してきた)において,【現金や預貯金の合計が50万円以上になる場合、国選ではなく、まずは私選弁護人を弁護士会に選任してもらうよう申し出ることが本人に義務づけられる。】というもので,【基準額50万円の設定について、法務省は(1)平均世帯の1カ月の必要生計費は約25万円(2)刑事事件を受任した私選弁護人の平均着手金は約25万円――としたうえで、「50万円以上あれば、私選弁護人に着手金を払ったうえでひとまず生活できる」と説明している。 】というのだ。

いいっすか,弁護士費用が50万円あっても,被害者がいれば示談で数十万くらいは別途必要になります!反省したことを示すために寄付したりもする。

そもそも,50万円の資産しかない者にその50万円を弁護士費用として支払わせたならば,社会復帰してからの生活が維持できないではないか。

容疑者=犯罪者ではない!国家権力による恣意的な誤認逮捕のケースだってある!だからこそ,これまで国選弁護(起訴後)では,資力要件は緩和して運用されてきたわけだ。

被害者の権利が叫ばれる裏で,適正手続がどんどん侵害されていくことについて,怒りを禁じ得ません。




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テレビ局と新聞の系列化にノーを突きつけましょう~総務省の調査研究会が意見募集中

2006-08-01 03:03:24 | メディア(知るための手段のあり方)
日本では,新聞とテレビの両方を支配することが比較的簡単に認められていることはこれまでにも何度か指摘してきました。総務省令「放送局の開設の根本的基準」(←クリック)の9条3項で,テレビ局,AMラジオ局,新聞の三事業を経営・支配することを原則禁止しているものの,「ただし、当該放送対象地域において、他に一般放送事業者、新聞社、通信社その他のニュース又は情報の頒布を業とする事業者がある場合であつて、その局が開設されることにより、その一の者(その一の者が支配する者を含む。)がニュース又は情報の独占的頒布を行うこととなるおそれがないときは、この限りでない。」という例外,すなわち,ほかにニュースを配信するテレビ局があれば問題なしという大幅な例外を設け,結局,三事業支配禁止の原則をまったく意味のないものとしています。

これがテレビ局と新聞の系列化につながり,テレビ放送というドル箱が免許制度であることを通じて,テレビ局のみならず新聞までもが政府の圧力をもろに受けるシステムとなっており,新聞の権力監視作用が大幅に弱まっている実態があるわけです。

この点,英米では,新聞社がテレビ局を所有することは原則,禁止されています。

今回,総務省の「デジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会」が取りまとめ案を発表し,それに対する意見を受け付けています(ここ参照←クリック)。

この取りまとめ案(←クリック)では,上述の総務省令での【「独占的頒布を行うこととなるおそれ」の有無について、その基準を明確にすることが望ましい】としている。

そのうえで,【例えば、地域における購読シェアが50%を超える新聞社によるテレビジョン放送とAM放送(又はFM放送)の同時支配は「独占的頒布を行うこととなるおそれ」があるとした上で、これに該当する事業者から反論がある場合には透明性が確保された一定の手続により是非を判断する方法などが考えられ、今後、必要な措置を検討することが適当】というような例を挙げている。

しかし,50%を超える新聞社なんて,地元地方紙以外にはありえないから,結局大手テレビ局と大手新聞社のクロスオーナーシップ問題には手つかずとなる。

確かに現状を踏まえれば,この程度のものしかできないかも知れないし,そもそも,この研究会がテレビの集中排除原則を緩和する方向を示すことを目的としているものだから,期待する方が無理かも知れない。

とはいえ,今回の意見聴取は,総務省に対し,多くの市民がクロスオーナーシップに懸念を抱いているということを分からせるチャンスです。

もし,同じ問題意識をお持ちでしたら,8月31日までに意見をまとめて提出して下さい。夏休みの宿題ってことでいかがでしょうか?!

日本のメディアに権力監視機能を回復させるために是非!!





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