少子化に歯止めがかからず、いよいよ大学全入時代が到来したといわれたものの、中学受験だけはますます厳しい競争になっています。国立・私立中や公立中高一貫校を受験する児童数と受験率が今春、過去最多を更新したようです。
一般的にはその原因が公立中学に対する不安や不信、経済状況の好転と言われますが、はっきり言えばやはり、ゆとり教育に対する拒否反応でしょう。
特に小石川や両国など東京の公立中高一貫校はいまだ実績が出ていないにもかかわらず、非常に高い人気でした。公立学校の信頼回復を願う親が多いことの証明ではないでしょうか。
(両国高校に関しては、以前、教頭先生のインタビューをご紹介しました。ぜひご覧下さい。なかなか魅力的で、人気になるのもうなずけます。
→ 『伝統校の更なる飛躍』 )
さて、本書はご自分の息子と娘さんを、いわゆる関東でいう御三家の中学に合格させた普通のサラリーマンである筆者が記した受験日誌風のアドバイスです。難関をパスしただけあって、なかなか興味深い視点が示されています。
中学受験の難しさは、何といっても子どもの幼さですね。従って親の果たす役割がかなり大きな意味を持ってくるわけですが、高度なテクニックを必要とする“受験” というのは、自分の価値観を教え込む“躾(しつけ)”とは、やはりちょっと観点が違います。
なぜ受験をするのか、させるのかという大きな問題と、もちろん志望校選択から塾選びから家庭学習の方法といずれも親が影響を与えるわけです。しかも通常4年生から受験勉強が始まるとなれば、お気づきでしょうか…、子どもはともかく、親の意識では高校・大学受験以上の長丁場なんです。
もちろんほとんどの親は受験のプロではありませんし、学校がナビゲートしてくれるわけではありませんから、常に迷いが生じますが、子どもにそれが伝染してはまずいわけです。
あれこれ試行錯誤しながら、子どもの表情や、模試結果などを見つつ、軌道修正するというのは、口で言うほど簡単ではありません。塾を変える、志望校を変える、それぞれとても大きな決断です。
そのあたりを本書では、偏差値だけに惑わされてはいけないことを強調します。その通りですね。模擬試験と本番の試験は違いますし、模擬試験の特性もきちんと頭に入れておく必要があります。
大成功の実体験に基いた貴重な意見ですし、よく工夫した勉強方法が書かれていますので参考になると思います。ただし、あくまで筆者の個人的な見解にとどまりますので、全部をまねしたり、鵜呑みにするのではなく、役立ちそうなところを取り入れたらよいと思います。
たくさんのデータに基いた合理的な受験戦略というのではありませんが、筆者の熱意やそこから生まれる子どもに対する態度は大変立派だと感じます。受験生の親だけでなく、塾講師にも読んでもらいたい一冊でした。
中学受験 偏差値40からの大逆転合格法 エール出版社 詳 細 |
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『中学受験偏差値40からの大逆転合格法』有井博之
エール出版社:190P:1575円
もう、VIVAさんってば~、紹介してくださるのは、うちの息子の受験が終わってからにしてくださればよかったのに~。
(半分冗談、半分本気・・・かも。いや、いや、このブログの皆さんは、一緒に合格を目指しましょう!)
そのくらい、この本は私にとってインパクトが強かったです。
息子の通っている塾で、「偏差値○○以上ない子どもさんは、この学校を受けないように。」などという発言が入試報告会であって、がび~ん。
その学校こそ息子の第一志望・・・でも偏差値が○○に全く届いていない・・・。
子どもは気にしていませんが、親の私は落ち込みに落ち込み、蟻地獄へ引きずりこまれました。
そのとき、本棚からこの本を引っ張り出してきて、読み返し、「偏差値が何だ!」と立ち直った案外単純な作りの私です。
やはり、きっとDanさんや他の中学受験生のおやごさんが参考にできる、勉強の工夫みたいなもの、あるいは、受験に対する考え方が載っていますよね。良書だと思います。
本書のご夫婦はかなり積極的に受験に関わっています。まさしく一緒に戦っていますね。ただお仕事でなかなかそこまで時間を取れないご家庭にはちょっと難しい部分もあるでしょう。
おおむね筆者の考え方が正しいと思いますが、生徒の学力や志望校によって、勉強の意味が若干異なるので、過去問を始める時期や、学校に対する考え方などは私とは少し違いますが、自信を持ってお薦めできる一冊であることは確かです。
記事でも書きましたように、全部マネしようとせず、その意味するところを租借し、それぞれのご家庭で決めるのが良いと思います。
ぜひとも参考にさせてくださいませ!
私は大学受験の英語が専門ですのであまり偉そうには申し上げられませんが、まず一つ、筆者の意見で、少し受験者平均と合格最低点を比べるくだりがあります(P27)。これ自体は間違ってはいないのですが、同じ見るなら、合格者平均点と合格者最低点の差を注目すべきだと思っています。
受験者平均というのはトップレベルでも受験日の移動などにより、年度によって大きく影響を受ける可能性があるからです。筆者の息子さんの合格した武蔵を例に取りますと、
http://www.musashi.ed.jp/entrance.html
206点ー192点=14点の差しかありません。つまり合格者のほぼ半分約80人は300点満点のテストのそこに集中していると考えて良いわけです。本当に厳しい勝負です。麻布中学にいたってはわずか9点の間に180人!もいるのです。
本当に紙一重なんですが、そこでです。そういう厳しいテストで仮にそれが記号ではなく、記述や論述が多い場合、過去問を解いてもそれが何点に相当するか、つまり部分点が勝敗を分ける可能性が高いのですが、しろうとでは答えを見ても判断できません。つまり正確な自己採点ができないのです。
国語など特に、5点の配点で自分の解答が2点なのか3点なのか4点かで全く違ってきますので、それに慣れるまでにはかなりの時間が必要です。塾の先生に採点をしてもらい、アドバイスを求めるしかないでしょう。
過去問をはじめる時期について、筆者の書き方はややわかりにくいのですが、12月と二度ほど言及しています。それだけでは訓練ができません。12月以降の忙しい時期に、塾の先生が毎日全員分の解答を丁寧に添削してくれるとも限りませんから、もっともっと早く、夏休み明けには一度目はやっておきたいところだと私は考えています。
本当は生徒の学力によっても変わってきますので、一概には申せませんが、とにかく12月では、弱点が仮に明確に分かったとしても有効な対策を立てる、練習をするだけの時間が足りません。
分かりにくければ、またご質問下さい。
早速、プリントアウトして何度も読み直しました。
(年のせいか、重要なものは、ついつい印刷して、紙の上で読もうとしちゃうんですよ。)
なるほど、なるほど!本当に紙一重なんですね!
確かに過去問を12月からというのは、そのときにできなかったショックと、その巻き返しを考えれば、VIVAさんのおっしゃるとおり、夏休み明けにも開始した方が良さそうですよね。
ありがとうございます。
また何かあればどうぞ。またもっと細かいことであれば、私ではなく、中学受験の担当の方に聞きますので。
今度、有井さんと同じエール出版社から本を出させて頂くことになった只野親(ただのしん)と申します。
本もブログも初めての体験で戸惑うことばかりです。
お時間がありますときにでも私のブログを見に来て 頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。
突然の非礼、何卒お許しください。
そうですか、本をお出しになるのですね。ぜひぜひ我々、塾講師やおやごさんに有益なアドバイスをお願いいたします!