2006サッカーワールドカップ、ドイツ大会のスローガン、ご存知でしたか。
『世界よ来たれ、友のもとへ 』 です。 まぁ平凡ですよね。
でも英語だと、こうなります
『 Say no to racism A time to make friends 』
つまり “人種差別反対! 仲良くなろう(友だちを作るチャンス)” です。
ところが、残念なことに、スペイン対フランス戦の時に、アンリ選手(黒人)などに対して、かなり強烈な暴言がスペインファンから浴びせられ、大問題となってしまいました。
日本では、差別やアイヌ民族などの問題はありますが、総じて単一民族と称され、少なくとも、日々の生活の中で、人種差別をしたとか、されたという感覚は、希薄でしょう。まさか、自分が人種で差別されていると感じている人は、海外にはいても、国内には少ないはずです。ドイツ大会のスローガンも、日本では意識されません。
ところが、世界では違います。ワールドカップのスローガンになること自体、問題があることの裏返しです。
PCつまりPolitical Correctness (政治的妥当性)が強く要請されます。簡単に言えばあらゆる人種、性差別(用語)をなくすということで、“黒人”は“アフリカ系アメリカ人”と、“インディアン”は“ネイティブアメリカン”と言い換えます。受験生だと議長という単語 chairman を chairpersonにするというのが定番ですね。
アメリカにおける人種問題がどれほど根深いかを痛感させられる物語が、本書です。ステインとは“しみ”“汚れ”のことです。著者はピュリッツァー賞受賞作家です。
やり手の大学教授コールマンシルクは、ある授業で、全く出席しない生徒二人のことを、顔も見たことがないために、他の生徒たちに『誰か名簿に載っているこの二人を知っていますか?いったいこの二人はスプーク(幽霊)か』 と何気なく言いました。
ところが、このスプークという言葉には“黒ンボ”という意味があり、二人のうちの一人がたまたま黒人であったために、コールマンは人種差別主義者というレッテルを貼られてしまいます。怪文書や怪メールが飛び交います。
もちろんコールマンはその生徒が黒人であるとは知らなかったし、何よりも幽霊という意味で使ったのでしたが、ついには大学にいられなくなってしまいます。
かつての同僚や先輩、後輩、誰も彼をかばうものがいなくなり、その戦いのさなかに妻を失います。絶望と怒りをかかえながら、自分のことを小説にしてくれと隣人であり小説家のザッカーマンに訴え、本書はコールマンの数少ない友人ザッカーマンが語るという形式で書かれています。
大学での権力闘争、コールマンの隠された過去、人種問題による家族の悲劇などが描かれています。コールマンの死後まで書かれているのですが、後半は特に引き込まれます。 本書は『白いカラス』 という映画になり、そちらの評判も高かったそうです。
http://tokkun.net/jump.htm
ヒューマン・ステイン集英社詳 細 |
白いカラス Dual Editionハピネット・ピクチャーズ詳 細 |
『ヒューマンステイン』フィリップ・ロス
集英社:462P:2310円
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それこそ、「人類は皆兄弟」的に相互理解が出来ないものかと思う反面、人間とは、ある種の優越感を感じる事で存在が支えられているのか、と思ったり。
日本人としては、その差別される側の痛みのようなものをもっと深く知るべきではないか、と最近特に思います。
かつて人種差別問題の講義で先生から
薦められたのが有吉佐和子の「非色」
です。人種差別を正面から扱った作品
ではなく、結果として非常に分かり易
いテキストになってるいるとのことで
す。専門的な本を読むより、小説の方
が説得力がある場合がある例かと思い
ます。一度読まれることをオススメし
ます。