すでに3年前、2020年のことになるが、札幌の南、泊原発より南にある寿都町と、北側の神恵内村が「核燃料最終処分場」に応募したとのニュースが流れた。
それよりも前の2007年、高知県東洋町が最初に立候補しようとしたのだが、町内の激烈な反対に遭って断念した経緯がある。
https://cnic.jp/485
寿都と神恵内が立候補した理由は、原発を誘致した泊町の交付金による、全国第五位の裕福な予算を見て羨ましく思ったからに違いないが、何よりも、経産省が最終処分場を誘致した自治体に対して巨額の補助金を交付する政策を発表したことに釣られたということだろう。
以下のNHKリンクによれば、文献調査だけで20億円、概要調査で70億円、さらに、精密調査から建設に至れば、数百億円という途方もない金が地元に注ぎ込まれるのだ。
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/80466.html

寿都町は人口2900名、年間予算66億円程度、神恵内村は人口850名、年間予算33億円程度だ。そこに「調査」受け入れだけで20億円プラス70億円が転がり込むと聞けば、処分場の恐ろしさを知らない首長が飛びつくのもやむをえないかもしれない。
上の自治体が立候補した、「使用済み核燃料最終処分場」に関しては、国は以下のように説明している。(以下引用)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/hlw/hlw01.html
高レベル放射性廃棄物とは
日本では、原子力発電の運転に伴って発生する使用済燃料を再処理し、取り出したウランやプルトニウムを再利用しつつ、廃棄物の量を抑える「核燃料サイクル」を推進する方針です。
再処理の際に生じる放射能レベルの高い廃液を高温のガラスと溶かし合わせて固体化したものが、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)です。高レベル放射性廃棄物の放射能レベルが低下するには長い時間がかかり、その間、人が近づかないようにする必要があります。ただし、高レベル放射性廃棄物は安定した物質で、それ自体に爆発性はなく、放射性物質が連続的に核分裂を起こして大きなエネルギーを放出する臨界を起こすこともありません。
【アマ註=国は、当初、「使用済み高レベル核燃料廃棄物をガラス固化体に封じ込めて保管するから地殻変動が起きても環境に漏れ出す心配はない」と説明していた。
しかし、半世紀以上にわたるガラス固化体の研究と試験を経ても、封じ込めた核廃棄物の超高温と放射線によってガラスが溶融、粉末化するため、結局、当初の目論見だった固化体は作れず、ステンレスキャスターに核廃棄物とガラスを混ぜたものを封じ込めるだけの保管体を作っただけに終わった。
これではガラス固化体の意味は存在しない。ただ添加しただけなのだ。しかし、「ガラス固化体だから安全」と宣伝してきたメンツのために、いかにも成功しているかのように宣伝しているだけだ】
地層処分とは
高レベル放射性廃棄物については、将来の人間の管理に委ねずに済むように、地下深くの安定した岩盤に閉じ込め、人間の生活環境から隔離して処分することにしています。
この処分方法を「地層処分」と言います。深い地層が本来もつ性質を利用し、将来にわたって人間の生活環境に影響を与えないようにします。深い地層が持つ性質とは、① 酸素が少なく、ものが変化しにくい、② ものの動きが非常に遅い、③ 人間の生活環境から遠く離れている、といったものです。
なお、日本では、法律(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(最終処分法))で地表から300メートル以上深い地層に処分すると決められています。
また、再処理の際に発生するTRU(超ウラン元素)廃棄物のうち、放射能レベルが一定以上のものも、高レベル放射性廃棄物と同様に、地層処分が行われます。
【アマ註=「300m以上深い地層中に保管するから安全」という理屈だが、残念ながら日本列島は、世界でも稀な4枚の巨大プレートがぶつかりあう地形のせいで、数千に一度の破局的地殻変動から安全な場所は一箇所もない。
東日本大震災では、太平洋プレートは地下数百メートルで数十メートルを横ずれ移動した。わが岐阜の根尾谷断層、阿寺断層ともに、たった一度の地震で、6~10mのズレが確認されている。また若狭原発群の直下にある巨大断層が原子力政策のため意図的に隠されている「日本列島断層」のような例もある】
なぜ地層処分なのか
地上は地下に比べて自然災害や人の行為の影響を受けやすいため、高レベル放射性廃棄物を地上で人間が管理し続けることは、リスクの観点から適当ではありません。
また、原子力発電を利用してきた現世代が処分の道筋をつけ、将来世代の負担をできるだけ小さくすることが、世代責任の観点からも適当と考えられます。
こうした考え方に立って、世界各国及び国際機関等で様々な処分方法が検討されてきました。その結果、地層処分が最適であるとの認識が国際的に共有されています。
【アマ註=地層処分は、地下300m以下にトンネルを掘って、近寄れば数十秒で人が死ぬほどの放射線を放つ使用済核燃料をリモートで運んで保管するシステムだが、それが可能になるのは、核燃料が100度以下の冷却水が沸騰しない温度になるまで待つ必要がある。地下深くでは人の関与ができなくなるからだ。
それまでは冷却水を絶えず循環させる必要があり、地表でしか行えない。その期間は、通常ウラン燃料で50年、プルトニウムMOX燃料で500年といわれている。
冷却期間に強制冷却ができなくなると、キャスクがひび割れ、莫大な放射能が環境に飛び出すことになる。人類社会で500年間の安定政権は存在しない。】
地層処分の仕組み
高レベル放射性廃棄物は、放射能レベルが高い期間は地下水と接触しないように、厚い金属容器(オーバーパック)に格納し、水を通しにくい粘土(緩衝材)で覆った上で、一定の間隔を空けて、安定した岩盤に1本ずつ埋設をしていきます。
地層処分を行う上で考慮すべき様々な科学的特性の例
安全に地層処分を行うために、地下深部の科学的特性などを様々な観点から検討します。
法律に基づく処分地選定調査
法律(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律、略称:最終処分法)では、原子力発電環境整備機構(NUMO:ニューモ)が地層処分の実施主体として定められています。NUMOは、処分施設の建設場所を選ぶために、「文献」「概要」「精密」の段階的な調査を行うことが法律上求められています。調査の段階を進めるに当たっては、地質環境が地層処分に適しているか確認するとともに、地元自治体の意見を聴くことが法律上必要とされています。
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引用以上
寿都や神恵内の首長が金に目がくらんで最終処分場に立候補すれば、たちまち20億円が交付されて、わずか数千人の町民はウハウハになるわけだが、いったん調査を受け入れるなら、国は、「はいやめました」と受け入れを翻すことは絶対にできない。ならば「金を返せ!」という結末になるが、交付金はとっくに「すすきののアルコール」に消えているだろう。
問題は、地下処分よりも、500年間という地表保管期間にある。すでに、この問題は、何度もブログに書いてきた。
使用済み核燃料の冷却期間が500年とは、あまりにも無茶苦茶だ! 2021年6月
http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/5827227.html
原発のトイレ 2023年3月
http://hirukawamura.livedoor.blog/archives/6020353.html
もしも、泊原発周辺で、神恵内・寿都を含む震度6以上の地震が起きたとき、あるいは、北朝鮮あたりからミサイルが打ち込まれたとき、地表に置くしかない使用済核燃料に被害が及べば(当然、攻撃対象に設定される)、直接当たらなくとも、冷却不能になるだけで数日程度でキャスクにひび割れが発生し、中から膨大な放射能が環境を汚染することになる。
たぶん、周辺で生き残る人はほとんどいないだろう。
厚いステンレスキャスクであっても、数千度の崩壊熱と強制冷却が繰り返されているので「繰返し熱応力疲労」によって、ステンレス合金といえども健全性が長期間保たれるわけではない。
中には放射性希ガスであるクリプトン85やトリチウムが高い気圧で詰まっっていて、ひび割れから噴出し、さらに、そこからセシウムXやマイナーアクチノイドも吹き出してくる。
メジャー・マイナーアクチノイドは超猛毒発癌アイソトープで、それが無害化するには100万年単位の保管を必要とする。(半減期2万年のPu239が無害化する時間)、セシウム・ストロンチウムXでさえ300年はかかる。
使用済み核燃料を受け入れる自治体の首長のほとんどは、この危険性を理解できない。「国が安全だといえば、それを信じるしかない」という主体性放棄の姿勢しか持ってない。何よりも交付金に目がくらんで危険性が見えないのだ。
先に、「豊かな村」のなかで、全国豊かな自治体ランキング5位のうち3位までが原子力関係の交付金による「豊かさ」であることを書いた。
もしも、寿都や神恵内が設置調査対象になれば、このランキングに食い込むことは確実だ。東洋町は、町内の「未来を守ろうとする良心派」のせいで、濡れ手に粟、落ちてくるぼた餅を食べそこなったのだ。
まったく「持続可能な未来」を求める良心派には困ったものだ。
子供たちの未来など、核開発優先の日本では、すでに存在しないのだから、目先の金をもらって、すすきので爆遊びに興じたらいいのに…と、誘致派は思っているだろう。
原発は、1951年に実用化された段階で、核廃棄物のトイレ=安全処理は存在しなかった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80#:~:text=%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E3%81%AF1951%E5%B9%B4,%E7%82%89%E3%81%8C%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%82
それから、72年を経た今でも核廃棄物の処理方法は定まっておらず、その安全性は保証されていない。
推進派は口を揃えて、「未来の科学技術の発展が解決してくれる」と、未来に下駄を預けて見切り発車=暴走したのだ。
その結果、日本では、凄まじい量の原発のウンコ=使用済み核燃料が溜まってしまった。だが、政府は、どのくらい溜まっているのか正確な情報は決して公開しない。国民を騙し続けたいのだ。
ネット上には、2007年度の推計(NHK)しか見つからない。それによれば約19000トンだというが、現在は、おそらく2万トンを大きく超えているはずだ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%BF%E7%94%A8%E6%B8%88%E3%81%BF%E6%A0%B8%E7%87%83%E6%96%99
これは、現在、各地の原子力発電所構内のプールに保管されている。一部は再処理目的で英国に送られているが、それはプルトニウムに変身して日本に送り返されてくる。
再処理されたプルトニウムは、世界最大の46トンに達し、一部は兵器転用疑惑を逃れるため、超高価で経済性のないMOX燃料として再稼働原発で使用されることになった。
保守系評論家は、原発使用済み核燃料を精製したプルトニウムは純度が60%程度で核兵器には転用できないと言うが、事実は違う。IAEAは明確に8Kgで核兵器転用可能と指摘している。
https://www.asahi.com/articles/ASMDJ6T12MDJPLBJ00F.html
【日本の電力業界などは、日本が保有するプルトニウムは「原子炉級」であり、「兵器用に適さない」と主張してきた。プルトニウムの同位体(同じ元素で中性子の数が異なる)の中で、核分裂の連鎖反応を起こしやすいのがプルトニウム239。米政府などは、これが93%以上のものを「兵器級」、それほど高くないものを「原子炉級」などと分類している。
これに対し、「間違いなく作ることができる」と断言するのが、米国のNGO「憂慮する科学者同盟」のエドウィン・ライマン上級研究員。「原子炉級で核兵器を作れないと主張することは、核物質を厳重に守る理由を失いかねず、危険なウソだ」と指摘する。97年に米エネルギー省が発表した報告書も、「原子炉級プルトニウムでも、より高度の設計技術を用いればより大きな破壊力を持つ核兵器が生産可能」と結論づけた。
IAEAもプルトニウムが原子炉級か兵器級かにかかわらず、1発の核爆弾が作れる可能性がある量を8キロとする。過去には、インドが民生用の原発技術で核兵器を開発。衝撃を受けた米カーター政権は「核拡散につながる」として、使用済み核燃料の再処理と高速増殖炉の開発にストップをかけることになった。】
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引用以上
ただし、94%純度の兵器用プルトニウムに比べると、60%プルトニウムは、マイナーアクチノイドを大量に含み、核汚染の著しい「汚い核爆弾」になる。
しかし、日本政府は、どうも秘密裏に、これを使った核兵器を製造して外国に売り捌く計画を持っているようにしか思えない。
https://www.sankei.com/article/20220508-O2LXDAQSHRPFNEG4SZ43CA4CUU/
「レールガン用核弾頭」などの噂もちらほら聞こえてくるが、正力松太郎による第一号東海原発の導入や、もんじゅ、常陽、六ケ所再処理場などは、明らかに日本政府=自民党による核兵器開発計画の上に存在している。
日本の原子力村企業群のホンネは、実は原発よりも核兵器開発だという思惑が、もんじゅや再処理政策、フクイチ4号機問題などから透けて見えるのだ。
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