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精神科医師のブログ。
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市立大町総合病院、医師不足から再度診療制限へ

2012年03月29日 | Weblog
大北地域(人口約65000人)の中心の長野県大町市(人口約3万人)の中心市街にある市立大町総合病院(284床)は大北地区の中心医療機関としての役割を果たしてきた。
しかし近年では医師や看護師不足などから毎年2億円以上の赤字を計上するなど経営難が続いており、多額の公費が投入されて維持されているような状態だった。

平成19年12月に、内科の医師不足により外来患者を他の医療機関からの紹介に限定するなどの診療制限に踏み切り1年以上継続した経緯があったが、県のテコ入れもなどあり信州大学医局から医師の派遣をうけなんとか首の皮一枚でつながり、住民のなかから「大町病院を守る会」などが発足したり、初の病院祭を開催するなどの動きもあった。
そして内科医師が増えたことから救急車の受け入れも増えていた。

内部からは現実的な「市立大町総合病院の改革プラン」が打ち出されていたが、議会などさまざまな横やりもあり改革は難航していたようだ。

もはや一つの病院だけの問題ではないと大町保健福祉事務所が間に入り市立大町総合病院と安曇総合病院をあわせた地域医療再編の可能性も含め議論されていたが県議会議員や市議会議員、市町村長などのさまざまな思惑が交差し膠着した状態がつづいていた。

市民のおらが町の病院という思いに配慮してか大町市長は「厚生連安曇総合病院との再編ネットワーク化は考慮しないという方針」ということを明言し、歩み寄る姿勢はみられなかった。


(頑張れ!おおまぴょん)

そうこうしているうちに市立大町総合病院では整形外科の常勤医が1人となり、さらにこの3月で内科常勤医師2人が退職し内科全体の常勤医師は5人(病棟をみられる内科医師は実質2~3人程度とのこと!!)になることになった。
このままの状態で、これまで同様の診療体制をつづけていれば全国でみられたように残った医師の疲弊から医療崩壊もありうる状況である。



予測されたことではあったが市立大町総合病院から医師会や近隣医療機関あてに内科病床を削減、患者の受け入れ制限をするというFAXがとどいた。
しかし事務的な内容で、この事態を引き起こした経過を申し訳ないというでもなくまるで他人事のようで、地域住民に対しても近隣の医療機関に対して協力をもとめるでもない。
公立病院として、なんとも一方的で上から目線の内容であると感じた。

医療のことは「おたがいさま」なのではあるが、市立大町総合病院に患者を紹介する立場である地区医師会や、連携先の病院である安曇総合病院や安曇野赤十字病院でもさすがに危機感と驚きの声が聞があがっているようだ。
診療制限されれば赤字額も増えるだろうしさすがに市立大町総合病院をこのままの状態で維持していくことも限界かもしれない。



しかし大北地域のもうひとつの医療機関である安曇総合病院も、現場の知らない所で地域医療再生基金の補助金を活用して身の丈にあわないリニアック(放射線治療機器)の導入やICU新設の計画が推し進められるなどの事態でゴタゴタが続いており、いつまでたっても方向性が見えず、現場の医師や職員の中でもしらけたムードが漂っている。

耐震基準をみたさない老朽化した病棟を早急に建て替えなければいけないというのに再構築の機運がいつまで経ってもたかまらない。
もしこの計画がゴリ押しされればモラール(士気)が低下し医師の離職から医療崩壊もありうる状況のように思われる。

そろそろ地域の住民も情報を知り危機意識を持って地域医療に参加する必要があるのではないか・・・。

安曇総合病院・再構築に関してのまとめ、その1
安曇総合病院・再構築に関してのまとめ、その2
コア・コンピタンスである総合病院精神科病床。
大北地域の医療再編と安曇総合病院の再構築私案
目指すべきは大町病院と安曇病院の連携、協業、そして統合。

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