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精神科医師のブログ。
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「職場を襲う”新型うつ”」いや、「職場でふえる”適応障害”」でしょ。(^_^;)

2012年04月30日 | Weblog
NHKスペシャル「職場を襲う”新型うつ”」
最近、NHKの精神医療を特集した番組の内容がひどいので一応見ておきました。患者さんにも聞かれるしね。
以前の、「ここまで来たうつ病治療」やはり残念な番組でしたし。
一般視聴者を対象にしていてなおかつ限られた時間内に十分に掘り下げることもできない、いわゆる「テレビ番組の特集レベル」だからしょうがないとえばしょうがないのですが・・。
内容やまとめ方はは否定するほどものではないのですが、期待通り?、ツッコミどころや、勘違いしやすい点が多かったので一応指摘しておきます。
だいたい「新型うつ」が職場を「襲う」ってなんでしょうか。奇病でもはやっているというのでしょうか(^_^;)。
そして支援は必要な場合もあるのでしょうが、あえて「うつ」って言わなくてもいいと思うけど、というのが最大のツッコミどころです。


<では番組の再現をば>

・・・
広がる「新型うつ」、「現代型うつ」とも呼ばれている。
理由もわからないままに突然休む、復職しても再発を繰り替えす。
従来型のうつ病と症状は同じ!?ですが、薬が効きにくい。
自責に乏しく、他責的であり、休業中なのに遊びに行ってしまっったりする。
生き方と症状の区別があいまいで、治りにくい。
上司など相手を責めたり仕事以外では活動的な面もあるため周囲からは甘えや怠けと見られがち。
そのことが患者を追い詰めている。
NHKが上場企業2200社に行ったアンケートでは65%に新型うつの社員がいるとの回答。(定義がないのに)
何故増えているのか、甘えか病気か、苦悩する現場を見つめました・・・。

新入社員に自衛隊の設備を借りた軍隊式教育、家庭訪問して乱れた生活習慣を母親同席で指導。休業中は病気を治すことに専念することという就業規則の改定・・・。

企業の人事担当者の匿名座談会・・。

療養休暇中なのに、マラソン大会に出たり、つくっている食事を毎日ブログにアップしたり。
でも会社にでると「うつ状態」がでてしう。
「共通する特徴みたいなのがありますか?」という質問で。
ないんじゃないですかね。あれば採用で落としますから。
・・・・

精神科、徳永雄一郎医師。
「怠けに見えるかもしれないけど症状に波がありますので・・・。
強い抑うつ感があったり集中力が出なくて仕事ができないというつらい状況であるので、
会社も家族も我々(医療者)も「うつ病」という認識をもってしっかり皆で支えながら治療していくことが一番大事ではないか。」

実録ドラマ)

上司の前田に叱責された若手社員、今井。
「オレ、こんなに頑張っているのに、前田のやつ、バカにしやがって・・。あの言い方はひどい。」
医療機関ににかかり、医師に「うつ病」です(誤診だが)といわれ、「ですよね~。」
「うつ病になるまで苦しんだんだから、もう休んでいいんだ。気分転換にグアムいっちゃいますか!」
そして「うつ病と闘うブログ」を開設。「俺をうつ病に追い込んだ鬼畜上司M田・・・。」とアップ。
その反応にみんな皆俺の味方なんだ、俺は間違っていない・・。

一方上司前田も悩む。
「悩んでいるなら相談に乗る」とメールし、一人欠員した部署の他の部下からも「今の作業量でいっぱいいっぱいですよ。」と言われ、「うちのチームギリギリが大変なんですよ。」と本部に増員をもとめるが断られ・・。

一方で今井さんは「ライブに飲み会w・・仮病乙・・・」、そのブログがネットで炎上して、上司にも見つかり・・・。
「これ以上会社を中傷すると解雇もありうるから・・。」との宣告をうける。




ここでまず言っておきたいのは、「新型うつ」というのは、1つの疾病として定まったこともなく、定義も定まっていないバズワード(※一見専門用語のように見えるがそうではない、明確な合意や定義のない用語のことである)であるということです。
ですので「新型うつ」「現代型うつ」という診断名は存在しない、ってことは前提としてきちんと触れてほしいと思いました。
メディアも「新型うつ」や「現代型うつ」を「うつ病」と言わないで欲しいし、どうしても言うというのなら、せめて「いわゆる新型うつ」といって欲しいと思います。

ます「うつ」「抑うつ状態」と「うつ病」をごっちゃにしていることが問題です。
抑うつ状態は状態像(発熱、咳、などの症状と同様。精神科の状態像には他に幻覚妄想状態、躁状態などがある。)であり、不安や焦りはつのるもの、体は動かなくなり、気分は落ち込みがつづく状態のことです。
単なる「うつ」には明確な定義がありませんが(だからこの言葉を使う)、「うつ病」は内因性の生物学的要因が想定される一群の疾患です。
抑うつ状態をきたす疾患は、うつ病以外にもたくさんあり、精神科医はまず状態像を診断をしてから診断を考えます。
適応障害も、気分変調症も、双極性障害も、パーソナリティ障害や統合失調症でも老化でも癌でも慢性腎不全でも中途障害でも認知症でも抑うつ状態をきします。
日本うつ病学会の資料でも『「新型うつ病」という専門用語はありません。その概念すら学術誌や学会などで検討されたものではありません。』と述べています。
専門家の中では、このあたりの言葉をきちんと使いわけようよと議論されています。
抑うつ状態がつづいてうつ病になることは確かにありますが、うつ病の本態はエネルギー水準の低下、制止です。
そもそも「うつ病」の人は休めといっても自分からはなかなか休もうとしません。
再現映像の人はDSM4TRの基準の「大うつ病エピソード」すらも満たしていません。
よってどう考えても「うつ病」とは診断されません。(再現映像に出てくる医師は誤診だと思う)。
せいぜい、抑うつ状態、適応障害、背景に自己愛性パーソナリティ障害の疑い、職場の環境?・・・くらいかなとおもいます。

インタビューで出てきた徳永雄一郎医師は精神科医らしいですが「うつ病という認識をもって・・」とか言ってしまって大丈夫かな?

番組に出演していた斎藤環先生も、自著でうつ病を一言でいうと「動けなくなる病気」っていっていましたよね。(;´Д`)
前のNHKの番組では光トポグラフィが診断に有効ってプッシュしまくっていたならそれ使えばいいのではと思いますが、どうしてそれには触れないのでしょう・・・NHKよ。(^_^;)。
「新型うつ病」のような一群の人がいるのは確かですが、現在の標準的な診断基準をもちいるのなら、「適応障害」、それがパーソナリティとも関連して抑うつが慢性的に続くならせいぜい「気分変調症(ディスサイミア)」くらいが適当だと思います。
ちなみに「適応障害」とは簡単に言うと明確なストレス因子で具合が悪くなり、それから離れると良くなるという環境に適応できない状態のことです。
中には「甘え」や「仮病」の人もいると思います。

厳しい社会情勢の中、ブラック企業で、人を育てるという文化が失われパワハラが蔓延するような職場環境やメンタルヘルス体制にも問題があるかもしれないし(いわゆる職場結合性うつ)、一方で、適応していた人が病気によりDysfunctionになったというより、そもそもLowfunctionだったということもあるでしょう。(いわゆる未熟型うつ)

番組の再現映像に出ていた人をみると、背景に職場側にはギリギリの人員でやっておりじっくりと育てられない職場環境の厳しさが、当人側には発達特性やパーソナリティ障害(対人関係のパターンで本人または周囲が悩むもの)の要素はあり、そういったことを診たてて産業医とも協力して労働環境、メンタルヘルス体制の再考や、スキルの付与など支援は必要だとは思います。
(そういう意味で、いわゆる「新型うつ」も精神医療の対象になりうるとは思います。)


座談会パート。「近頃の若者は」・・という論調。ジャーナリストの江川紹子氏が仕切ります。

斎藤環氏他・・
一生懸命頑張っても報われない、製造業などが減り、サービス業などコミュニケーションスキルなど求められる職場が増え適応のあり方が複雑化している社会構造の変化。
社会の変化に適応できないことが「新型うつ」が増えている背景にある。

教育評論家の尾木さん。
教育改革による新学力観、得点能力よりも関心や意欲に態度対して評価されることにより、若者の考え方や行動が変化。他者との比較ばかりになり、他者を異様に気にするようになり自己肯定感が育たず些細な事に傷ついていしまう。親子関係の問題があるという指摘もある。

若手の参加者。
若者だけコミュニケーション能力がないように見えるといって、上が歩み寄ってこないのは違うかな。


実録ドラマの続き)

前田さん。「昔は上司に怒られて凹んで、でも居酒屋に連れて行ってもらって・・・。そこで教わった。一緒に客に喜ぶ顔をみようって・・。」
他の部下。「いまはないですもんね、そういうの。」
・・・
ブログが炎上し今井は会社からは解雇通告。
心配したまわりがオフ会を開いてくれた。
オフ会に参加したメンタルクリニックにつとめる心理士(上司前田が相談に行ったクリニックにいた。オフ会は実はこの心理士が企画。)が指摘する。
「現代型うつを発症する大きな原因は精神的な幼さです。思い込みにとらわれて物事の全体がわからなくなってしまう。誰が悪いわけではない。今井さんにかけていたのは対人関係のスキルや打たれ強さ。一方会社では今の不況では昔のように十分な社員教育がおこなわれない。会社には今井さんを育てる体制や理解がかけていた。・・・」

ガビーン!!!(;´Д`)


カウンセラーも医者もお金を払えば話をきいてくれる。
本当に価値をもっているのはコストと無関係に親密な会話ができる仲間や同僚。いわゆる「人薬」
全員が手に入れられるかは限らない。

仕事を通してうつ病からの回復をサポートしようという企業がある。
一人ひとりにあった仕事を探しだせば、うつ病のひとでも戦力なると考え積極的に雇用している。
定期的にうつ病の社員の配属先が話し合われる。

番組に出てきた「うつ病」+「アスペルガー症候群」。
人間関係を気づくのは苦手だが、集中力は高いと評価される男性。
以前の会社でうつ病を発症したが、自分のペースで仕事が出来るようになり、営業マンの労務管理を自動的に行うプログラムの開発をおこなっている。
一人一人全部違ったら一人ひとりのために違った仕事を作っていかなくてはいけない。ものすごい労力だが企業も個人に合わせていくことが大事だと思う。と職場の上司。

「うつにならない社会を~職場の社会もかわらなければ」・・という論調の座談会パート。

斎藤環氏
「自尊心や自己肯定感を職場から得られる。仕事も薬になる。
一方的なコミュニケーションで無理な成長を押し付けられるよりは、その人にハンディ似あわせた職場を用意してあげたほうが結局能力も活かせ、効率もあがる。」

他の出演者
「成長志向ではなく、安定した場所で仲間たちと生きていきたい。無理をせず、ストレスをそんなに感じず、そこそこ働きたいという人のニーズにも答えられる社会に。一般職のようなものを男性にも女性にも解放していければ・・・。」と主張する男性。
「理不尽なことをなくしていく」というのがいいことだと思っていたが「理不尽なことを排除してきたことがよかったかな。」と思う。


日本企業も。コア業務だけを日本にのこして一般製造業などは海外展開などという流れだと、オーバーアチーブできない一般の人には厳しい世の中です。
そして、即、戦力にならない人を長い目で育ててくれたり、もしもの時のために居場所をつくっておいておいてくれる余裕が会社にもなくなっているんでしょうね。

かつてたくさんの雇用を吸収していた製造業、自営業、農林水産業で働ける人のパイは極端に縮小しているし・・。
コミュニケーション能力がもとめられる感情労働である、第3次産業のサービス業、対人援助職しか残っていない。いわゆる職人的な仕事というのがどんどんなくなっています。

不況で、焦らせずに、しっくり育てられる余裕もなくなり、ゆっくりと育て、マイペースで仕事できる環境ならば、「うつ(というか適応障害)」にならずにすんだかも知れない人たちが適応できなくなっているということ・・。
昔は社会のどこかに居場所をみつけられた発達特性の人も、居場所が見つけられず障害状態を呈するする人がふえています。
発達障害というのは社会適応できていれば診断しない。社会の側の問題もあるのです。
今の社会、一見選択肢はたくさんあるように見えるけど支援は少なく、長い目で見て丁寧に育ててくれ、「お前はそのくらいだよ」と言ってくれる存在は少なくなりました。

一方で「第2新卒」などという言葉をつくり、「私の年収低すぎ?今すぐチェック」と宣伝してビジネスを広げる就活業界の誘導のまま、どこかに本当の天職というものがあるはずと転職を繰り返します。
そして自己肯定感は得られず、等身大の自己を受け入れれず、スキルは身につけ損ない、自己愛だけが肥大化する・・。
悲劇です。



実録ドラマでは、職場に復職した今井。

「ありがとう、まっていたよ。これからはもっとコミュニケーションをとって一緒に成長していけたらと思って・・」という上司前田。

「前田さんの言葉をきいて少し気持ちが楽になった。」
「まだ注意されてむかつくこともあるけど相手の言葉を聴くように心がけている。」
「だから上の人達にもお願いしたい、甘えやだらけだと決めつけずにきちんと向きあって欲しい。よろしく」

・・・・でエンディングロールが流れて終了。



悪者をつくるのが得意なジャーナリズムで、いつものように精神医療の批判になるのかとおもいましたが、今回はそういう方向にはなりませんでした。
でも、うつになっても傷病手当金や療休を得られる大手企業や公務員と派遣社員では全く違うなど格差がある。経済的支援や復職支援が受けられるというのはそれだけでも溜めがあるということ・・。
是非、このへんともからめて深めて欲しかった・・。
若者の側の発達障害、パーソナリティ障害、社会や職場側のメンタルヘルスや労働環境、コミュニケーションの問題、そしてその間に生まれる適応障害の話として扱ってくれるなら全然問題なかったんだけどね。

結局「無縁社会」とかのようにNHKが新しいいバズワードを広めようとしているだけのように思えてしまいます。
タイトルも「職場で増える”適応障害”」ならなんにも文句はなかったのにね・・。
NHKは自らの影響力の大きさに自覚的になってほしいものです。

以下のような、2chの書きコミの方が秀逸ですね。

会社:労基守れよ
新型うつ:ただの甘え。小学生かオメーは。
やぶ精神科医:病人創出活動乙

1.病気ではない「新型うつ」を連呼し、病気である「うつ病」を甘えであると認識させる。
2.NHKは、何らかの意図で「うつ病」に対するイメージを混乱させようとしている。
まとめ:クソ番組を作ったNHKはクソ



いわゆる「新型うつ病」とは何か?神庭先生の講演会。

擬態うつ病/新型うつ病―実例からみる対応法
林 公一
保健同人社


「新型うつ病」のデタラメ (新潮新書)
中嶋 聡
新潮社


マジメすぎて、苦しい人たち―私も、適応障害かもしれない…
松崎 博光
WAVE出版

↑これもおすすめです。

カモシカ学習会@大町病院

2012年04月27日 | Weblog
市立大町総合病院で開催された第24回「カモシカ学習会」に誘われて参加。
このブログを読んでくれていた大町病院の医師がさそってくれた。
大町病院内にもけっこうこのブログを読んでくれている方が多くてびっくりした。
安曇総合病院の動向も関心をもってみていただいているようだ。

大町病院では2年前から毎月、医療、経営、地域などのテーマで職員勉強会を開催しているそうだ。
今回の参加者は大町病院の職員約100人程度であり、危機感が共有されているのか皆わりと真剣に聞いている印象を受けた。



今回の、テーマは「大北地域における受療動向調査の結果から見えたもの」
講師は大町病院で総合診療外来もされている信州大学地域医療推進講座 准教授 中澤勇一先生。
中澤先生は、もともと外科医であったが縁あって3年前に地域医療推進学講座に行くことになった先生だ。

先生には以前、このブログを見ていただいき、安曇病院に足を運んでいただいてお話をいただいた。
そしてこの7月18日には信州大学で地域医療に興味のある学生を相手にお話をさせてもらうことになった。
仕組みやつながりをゆっくりではあるが着実つくり育て前進し成果をあげている。

まず選挙人名簿からランダムサンプリングした大北地域の住人1000人の調査の結果の公表。

・・・調査に金かけているな。
医療依存度もさまざまな住民の意見であり救急ニーズ、障がい者ニーズ、高齢者ニーズが拾えずイメージ重視になる危険性はあるが、一定の意味はある調査ではあるだろう。


住民が不自由を感じているのは脳外科との意見が多い。
南部と北部で地域外への受療依存度、意識には明らかな違いがある。
大北地区での完結を望むのは6割。
特に大町市民は約7割と他の市町村より多かった。


大北地域の中心都市としてのプライドもあるのだと思う。
大町市も黒部ダム建設や工場などもあり元気で、地域の立派な総合病院であった時代の名残でもあろう。
池田松川と大町市、さらに北の白馬小谷では松本までの距離感がぜんぜん違うのは実感する。
しかし大北医療圏での医療完結は無理と冷静に見ている方も3~4割はいるということだ。




「医療はすべからく地域医療であるべきで、地域を抜きにした医療はありえない。」
佐久病院の若月俊一先生のこの言葉を知ったのが地域医療推進学講座にきて3年の成果とのこと。

信州大学医学部の学生は長野県出身者は3割、そしてなんと父母会があるそうだ!
そこで聞いても医師不足を感じている人は皆無だったそうで、隣の街の医師不足などのことでもなかなか実感できないようだ。
医師不足は絶対的医師不足、相対的医師不足がある。
地理的偏在、診療科偏在、専門細分化、女性医師の増加など複雑な構造的な問題が原因となっている。
医師不足の大きな原因は細分化、医療需要の増大。需要に供給が追いつかない。
どの科もそれぞれに大変である。
そして医師数を人口で割ったところで実際にどうかということはなかなか言えない。

個々の医師のスタンスやパフォーマンスもまちまちであるし・・・。
専門科はなんであれ、目の前の患者さんにニーズがあればとりあえず何とかしようとするという態度の医師が増えないと・・。


医師が増えても地理的偏在は必ずしも解消されない。大学の医師派遣機能も低下している。
専門医の配置、集約化の説明責任はどこにあるのか?県なのか?市町村なのか?地域の中核病院なのか?大学医局なのか?きちんと説明がなされるべきではあるが、必ずしも明示されない。
偏在の原因は患者のフリーアクセスと医師の自由裁量権である。
免許更新や開業制限、勤務医配置管理などの規制的政策は必要なのかもしれないが現実的には困難である。

医師の地域への意識が不十分であった。
それは、これまで卒前、卒後教育で地域というものを見せて来なかったことにも原因がある。
卒然、卒後教育で地域を見せることは地域に医者をよぶ一定の意義はある。
地域医療粋進学講座の役割であろう。

地域への思いをどう育てるか。
信州大学でも2年後から地域医療実習が必修となる。
大北でも医学生の実習を受け入れられる体制を作りたいとのこと。
1~2週間、グループでまとまって泊り、病院や診療所などあちこちのフィールドに散らばって実習をして戻って話し合うようなプログラム。学生、全体での発表会も出来ればと・・。

地理的偏在への対策として実は地域枠の定員は全国の大学でどんどん増えている。
信州大学は15名。地域枠はセンター試験の点数のみで決めている。
熱意のある人もいるが、動機として奨学金や比較的入りやすいからというのも多い。
地域枠の学生を、卒前、卒後でどう育てていくかも課題だ。
地域枠の学生が卒業するまでにその体制をつくることが急がれる。

地域の医師は地域で育てるのが理想。
診療所総合医と病院総合医の養成が地域医療再生の突破口である。
専門医とともに明確な総合医の要請を目指す。
マンパワーの確保の鍵は教育力。
大町総合病院でも養成プログラムをつくったが、指導者は・・?

また、高校生に医療現場を見せる活動をしている。
どの病院も一生懸命説明してくれる。
たとえ医療者にならなくても、そういうことを感じてもらうことが大事だという。


私も医学生の時に北海道内をはじめ、あちこちの診療所や病院に行かせてもらった。
また研修病院を探しに大学病院、民医連や厚生連、徳洲会・・など全国の病院を見せてもらたった。
医療のネットワークや役割がおぼろげながらにつかめたのは大きかったと思う。
さらに佐久病院では、診療所からICUまで地域の保健医療福祉のさまざまなフィールドで研修をさせてもらった。地域への愛ということに関しては、自分の対象とする患者、人たちに、シンパシーをどうもつか?ということが原点なのでは。
若月俊一先生は農村医科大学では医学生を農家に下宿させるというような案ももっていた。


大北地域の地域医療再生に関しては、フルセットの医療は必ずしも必要ない。
松本地域に高度医療、救急を依存することを前提とする。
感情論的に快く思わない人もいるが、安曇総合病院とのネットワークは本当に組めないのか?
病院間の協力、連携、分担。何が出来て何が出来ないかまず方向性を明らかに出来ないか。
医療を学び、守る活動。住民は医療の当事者、権利と責任がある。
病院を中心にした街づくり。
診療は総合診療科がカギ。

‎6月4日には市立大町総合病院で諏訪中央病院で屋根瓦方式の総合診療部を作った佐藤大悟先生の講演もあるそうだ。

「天寿を全うするは人の本分を尽くすものなり」福沢諭吉。
「人はその長所のみとらば可なり。短所を知るを要せず」荻生徂徠。

大町市は駅周辺に市街地がコンパクトにまとまっており車のない住民でも暮らしやすいだろう。
弱者に注目して中心市街地にケア付き住宅や障がい者の就労の場を増やすなど、医療福祉を展開していけば暮らしやすいいい街になるだろう。(雪のことはあるが)
福祉のまちづくりができる可能性は大きい。


アフターの飲み会にも参加させていただき、大町病院の医師や幹部、事務方とも話ができた。
大町病院には議会の対応など、公立病院ならではの苦労もあるようだ。
地域医療再生基金が厚生連にたくさん回ったり、日赤や厚生連病院の建て替えの際には市町村からの補助金が一括で入るのを「ずるい」と複雑な思いでみているとのこと。
一概に数字だけを見て赤字だといわれても、厚生連や日赤は病棟の建て替え時に半額を市町村から補助を得たりしているが、公立病院は毎年分けて補助をもらっているなど、経営指標や決算方式がちがうため一概には比べられないという。(うちの院長が失礼しました)
事務方は市の中での移動で動くなど医療や医事に関して専門性が深まらないということは確かにあり、大町病院にも公立病院間でのネットワークはあるが、厚生連病院のようなネットワーク組織はうらやましいとのこと。
また病院を元気にしてくれる研修医がいるのがうらやましいという声もきいた。
ただ、時に安曇病院にかかっている患者さんなのに受けてもらえないことがあるのが気になるとのこと。お互い様ではあるがたしかにそういうこともあるだろう。

医療にかかるお金に貸しては、最終的には税金でも出資でもいいが、自分たちがきちんと参加して医療を運営しているんだと思えるような仕掛けが欲しい。
わかりやすい形で情報公開することが前提だろう。
また大町病院にかかっても安曇病院にかかってもちゃんと連携して最適な形で見てくれるという安心感がもてるような感じになればという話もあった。大町病院で、安曇総合病院の得意とする整形外科や精神科の外来に来て欲しいという希望も聞いた。2つの病院をバスでつないだり、カルテを共通にしたりまで出来ればいいが・・・。
まずは勉強会や飲み会をおたがいに声をかけあって共催することぐらいからか・・・。



大町病院の医療の隙間を埋め、アクティブに活躍されている、外科の高木先生ともじっくり話ができた。
高木先生はアニキと呼ばれているそうで、外科医は3人いて週2回の手術と緊急手術をやっているそうだ。
純粋に外科だけをやっていれば半分くらいの仕事量でそれほど忙しくはないのかも知れないが、内科医が少なくなった状態で、外科でも肺炎や動けなくなった高齢者など雑多な入院患者を見ているし、外来でも、ほとんど精神科や総合診療的な患者も見ているとのこと。
地域の病院では特にそういうスタンスの医師は貴重だ。
家は松本だが、月に10日は病院に泊まっている!とのことであった。
若月先生も外科医だったし外科と総合診療は意外と相性がいいのかもしれない。

さらに、先日から、週1コマ枠をつくり、初めてがんの終末期の患者に訪問診療をほそぼそとはじめたそうだ。
訪問看護師さんと一緒に行くのかとおもっていたが、外来の看護師さんといってくれと言われ、時間をつくって出てみたら病院から外に出るのも気分転換にもなって楽しかったとのこと。
いままで気づかなかったが、そういう目でみると訪問診療のニーズはあることに気づいたという。

ここまでやっていれば総合診療を名乗る資格はあるだろう。

大町病院ではベッドはあいいるが見られる医師がおらず、安曇病院に紹介してもベッドが満床で、技術的には地域で見られる方が南の遠い病院までいって入院しなくてはいけないような事態を減らしたい。
これまで安曇総合病院とは現場のコミュニケーションがなく、高木先生も安曇病院にも行ったことがなかったが先日はじめて行ったとのこと。
患者を通じた紹介状での交流に加えて、お互いどんな医療をしているか飲んだことがあったりして、顔と名前がしっているだけでもぜんぜん違う。
安曇野赤十字病院も含めて、お互いに交流し、患者さんや地域住民のためそれぞれの強みを活かせるようにしたいという思いを確認できた。


大町病院の病院祭。

職員全体集会

2012年04月26日 | Weblog
このブログの地域医療再生関係の話題は人気のようで、あちこちからわりと反響もある。
病院職員や関係者にもこのブログは読まれているらしい。

本日勤務などで参加できなかった職員もいるので、今後も問題にならない範囲で経過のレポートを行なっていこうと思う。



さて先日、突然院長から全職員の自宅にこんなハガキが届いた。
「昨年度は若干の黒字となりました。これも皆様方の努力のおかげと感謝します。今年は病院再構築のマスタープランを作る必要があります。全職員一致して新たな病院に向けて歩み始めたいと思います。本年度もよろしくお願いします。
追記 職員全体集会のお知らせ。」

当院では誕生日や年末など院長(「サービスを越える瞬間プロジェクト」)からときどきこの様なハガキが届く。
こういう気遣いはうれしいね。?(^_^)



そして本日、職員全体集会が開催された。
例年、決算がでて新人職員が入るこの時期に院長×1や副院長×2、院長補佐×3、診療部長、事務長、看護部長などの幹部がスピーチを行って気勢をあげる集会だ。
ざっと計算して、250(参加者)×1500(平均時給)×1.5(時間)=約55万円のコスト。

「再構築に向けて元気の出る話が聞けるかな?」とワクワクしながら出席。(途中で救急外来によばれ中座したが)

年度初めでもあり、ハガキの効果もあってか参加者は多めであった。
しかし医局からの参加者はいつも少なく、例年、皆が元気になるようなスピーチをする副院長の二人は出張などで欠席であった。
(それを狙ったのかな?)

院長は期待を裏切ることなく、いつものように最初から経営の数字の話ばかりで、元気になる話、勇気づけられる話、取り組みの話はほとんどなかった。
収支や患者数、単科数を全体、科別に紹介していたが、数字で何を語らせたいのかもよくわからなかった。
こういう数字の詳細は事務管理部門が把握していればいいことであるし、話すとしても事務長が話すことのように思うが・・。
昨年度の収支であるが、主力の内科や整形の医師が抜けていた昨年の夏前の時期には入院患者も減って赤字になっており、一人医師がかけるだけで回らなくなる危うい綱渡りの経営だと思った。
事業利益ベースでは赤字で、最後の最後で特別利益、特別損益、補助金などで帳尻をあわせて若干の黒字になったとのことだが・・。
職員が増えて給与費の伸び率が高いが、それをカバーする収益が確保できていない影響が多いと分析されていた。

個人的には病院の規模の割に、患者に関わる時間を潰してのさまざまな会議(同じメンツばかりが出ている。)とか委員会とか原価計算とかBSCとかにコストをかけすぎていると思う。臨床がおろそかになり職員のモチベーションを上げられていないから収益も上がらないのではと思う?



「精神科病棟は入院平均単価が少ない」とかなり恣意的なグラフで示し精神科部門スタッフのモチベーションを下げる院長。

精神科病棟は身体合併症の患者さんも多く、またさまざまなレクリエーションやグループワークも行っているなど相当頑張っていると思うのだが、一般病棟以上の事をやっても構造的な問題で診療報酬が低くなる。
総合病院精神科病棟の診療報酬を上げるように厚労省や中医協などにも訴えていかなくてはいけない課題でもあるのだが。ここでこの様な形でだすというのは、精神科病床の削減を意図しているのだろうか?



そして、本日の目玉、今年度の目標と方針が発表された。

「病院再構築マスタープランの策定」・・・これは昨年と同じ。(;´Д`)

言い換えれば「どんな医療をするのか。しないのか。どこへ向かうか決める。」
それこそ院長たちの仕事だと思うのだが・・。


あとは「看護師の確保」「初期・後期研修医の確保」、「黒字収支1億円以上」
方針としてはBSCの推進、QC活動の推進、5Sの推進、勤務環境改善、禁煙活動の推進・・・。

たしかに収支安定化は大切なのであるが、「どんな医療をやるのか」というような話は最期までほとんどなかった。

院長補佐①の話は救急や医療安全の話だったそうだが、私が救急外来に呼ばれて中座したので内容不明。

院長補佐②は、がん診療部会の中間報告、クリニカルパスの話など。
「病棟建て替えのために40億が必要でそのためには新しい部門で患者獲得をする必要がある。放射線治療装置を補助金を得て導入するしかない。独自の試算では2年は赤字になるがその後は収益を生む。職員の協力があれば導入可能。」とさらっと述べていた。

コンサルタントの試算とも違うし、スタッフ確保の目処もたっていないし・・・。そもそも誰がやるんだろう?


診療部長は先日のノロウィルスの騒動の総括。
事務長は何故か農協や厚生連の歴史や病院理念の話。
「愛する人に対するように患者さんに向かい合いましょう」と抽象的な話であった。
看護部長は接遇や省エネや禁煙、院内保育所、ボランティアの話。
「タバコはやめ、服装に気をつけ挨拶しましょう」(^_^;)。大事なことなのだけど、なんだかなぁ。

全体的に抽象的、あるいは微細すぎる内容で現実的なビジョンが見えず個人的には残念な内容であった。
全職員にハガキで案内までしたのだから、本日何か発表があると期待してきた職員も多かったはずだが・・・。
昨年の全体集会で以降、再構築検討委員会などでの検討してきた各部会の案はこの場で公表されないのか?
(何故かがん診療部会のもののみコッソリ公表)
地域医療部会の再構築マスタープラン案も発表させてくれればよいのに。
職場全体集会は毎年、経営情報と病院のリーダーたちの考えを明らかにして士気を鼓舞し、広く議論をする場ではなかったのか?

数字と枝葉末節なことばかりで何だかはぐらかされたような気分である。
医師は自分の頭の中をスタッフや患者さんに対して常にオープンするのがよいと最近は思っているが、あいまいな医師の診たてと、治療方針を聞いた患者さんやスタッフの気分はこの様なものであろうか。




しかたがないのでシーンとしている会場の空気を最大限読んで
「マスタープラン(案)はどのような議論をされてきたのか?いつ発表するのか?どう決めるのか」
ということを質問したら、
「マスタープランはまだできていない。5月7日に公表して、それから議論して決める。決め方に考えがあるがここでは公表しない。最終的には職場運営委員会で決める。また全体集会を開くこともありうる。」
とのことらしい。

連休明けの5月7日は臨床業務で忙しいことが予想されるのであるが、どうして職員をたくさん集めたこの場で経営陣の考えを明らかにして議論しないのだろう?

最後に労働組合長が「再構築に真剣にならなかったらどんどん進んでしまうが、赤字はみなさんの肩にふりかかってくるのですよ。」と言っていたが・・・。

「この病院の将来は大丈夫だろうか?」と職員の多くが感じたのではないか。

まずは情報公開をきちんとして、病院の将来像に関して皆で議論できる場をつくってもらいたいものだと感じた。

安曇総合病院・再構築マスタープラン(案)

2012年04月23日 | Weblog

安曇総合病院では宮澤県議や中川院長が主張するように地域医療再生基金を原資の一部としてリニアックを導入しICUを新設するのかどうかという議論は未だ決着がついておらず、どのような病院にしていくのかという大方針が決まらないためいつまでたっても再構築が先に進めない状況が続いている。
何のためにこれまで再構築検討委員会をつくり1年以上かけて議論してきたのだろうかと思う。
前回の全体の委員会で院長がリニアック導入の方針を強行しようとして反対意見がでて紛糾した時に、新たなワーキンググループをつくりそこで検討するみたいな話も出た。
リニアックの案が通るまでいつまでもグズグズとこういうことを続けるのだろうか。

病院の将来を、だれがどのように決めるのかということがまったくもって不透明だ。
そもそも臨床をほぼしていない院長とは違い、職員は日々の日常の臨床業務、直接ケアに忙しく、再構築といわれてもリアリティが持てない人がほとんどである。
正面からディスカッションすることなく秘密裏にすすめられてきたため、残念ながら、まだ全職員的な議論にもなっているとは言いがたく地域の方の関心も薄い。
このような個人的なブログで個人的な意見を述べるのが精一杯だ。

院長の提唱する「安曇野ホスピタリティ」というBuzzWordのもと、理念やビジョンのあやふやなまま(いや、本気で大学病院や佐久総合病院のような大病院をめざしているのだろ。)迷走をつづけ、医療周辺産業であるコンサルタントに勧められるままにバランスドスコアカードや原価計算、医師貢献度手当(産みだした診療報酬や、サマリーや診断書の期限内提出数、会議への出席、学会発表、院長裁量!?などで比例して医師に手当て入る成果主義を取り入れた仕組み・・。院長に対する貢献度?)、サービスを超える瞬間プロジェクト、目標マネジメントみたいなことに付き合わされてもモチベーションは下がる一方なのではないか。(少なくとも自分のモチベーションは下がる。院長のヒアリングで毎回言っていることではあるが・・。)

もう少し、まじめに普通に丁寧に患者さんと向かい合おうよと思う。

聞くところによると院長としては2,3人の人でこっそり作ったマスタープランをいくつかあげて一部の職員で投票してきめるというようなつもりのようだ。
しかし、せっかくなら、みんなでワイワイと夢を語りながらマスタープランをつくり形にしていきたいものだ。

この様な状況ではあるが、ひろく職員や地域住民の議論のたたき台としビジョンを示すために、私も一つのマスタープラン(案)を作成してみた。
この案は、これまでこのブログでも述べてきたような内容をまとめたものであるが現状の延長線上に、それほど無理なくステップアップできる内容であると思う。
ご意見をたまわりたい。

先日、私も所属する再構築検討委員会地域医療部会でこの再構築のマスタープラン(案)が検討された。
委員会ではこの案に対して、各部署の委員からさまざまな意見があがった。

再構築マスタープラン(案)の概要

「ささえる医療」を再構築の中心コンセプトとする。高齢者を中心とした安曇病院周辺の質の高い一般医療を担い、精神医療、整形外科ではより広域の医療を担う。将来的にDPC病院を降りる可能性も見据え、在宅医療支援病棟(+緩和ケア)と回復期リハ病棟、整形外科病棟、一般病棟、精神病棟と目的を絞った5つの病棟へと再編し、さらに自前の老人保健施設を併設したケアミックス型とする。病棟の新築をまたず、できるところから始める。安曇野赤十字病院や市立大町総合病院、地域の医療福祉機関も含めネットワークを組む。弱者を守る医療文化を形成し、事業者を超えた地域医療再編の一つのモデルとして全国に発信する。

安曇野市北部、大北地域の医療体制について

人口が少なく松本医療圏に隣接した大北医療圏で3次救急医療、高度手術やがん放射線治療などの高度急性期医療までの自己完結を目指すのは現実的ではない。急性期医療においては松本医療圏の基幹病院、特に隣接する安曇野赤十字病院との連携を強化することで対応する。

市立大町総合病院の医師不足、経営難
→医師不足で6~7割程度まで病床稼働率の低下。4月から内科の入院を48床のみに診療制限。その影響が他の病院に出始めている。

市立大町総合病院、医師不足から再度診療制限へ

JA長野厚生連安曇総合病院の病棟再建、再構築
老朽化した病棟を早急に建て替える必要性があるが、政治的な思惑が交差しいつまでたっても再構築の大方針がきまらず長引くことで院内のモチベーションの低下が懸念されている。

なぜ、安曇総合病院への放射線治療機器という話しに?


大北医療圏で急性期医療をやらないというわけではなく、2次救急の受け入れなどは今よりもう少し頑張る。しかし高度なインターベンションに関しては集約化のな流れには逆らえないため無理はしない。(やるとすれば地理的には松本医療圏の基幹病院からより遠い市立大町総合病院がベターなのだが厳しいか・・。)
しかしいつまでもゴタゴタしていると医療崩壊は一気に進み今のレベルの医療ですら維持できなくなる可能性もある。


内科・外科を中心とした急性期一般病棟(45+HCU5)

内科、外科を中心に多目的に使う混合病棟とする。HCUを設置し、術後の患者や救急外来からの緊急入院を受ける。内科は総合診療方式とし、一つのグループとしてチームで診療をおこなう。この病棟で研修医教育も中心となっておこなう。急性期治療後、集中的なリハビリやケアが必要な患者は、回復期リハ病棟や在宅医療支援病棟へ速やかに転棟する。


内科でも医師間でコミュニケーションをとってチームで診療をおこないクリニカルパスを使うようにしてほしい。


整形外科を中心とした一般病棟(45)

当院の得意分野である整形外科の術後や入院に対応した病棟として特に脊椎や膝関節の手術などでも質の高い医療を提供する。長期のリハの適応となる患者に関しては回復期リハ病棟に転棟する。


整形外科ではクリニカルパスが活用されている。回復期リハもあれば病床数はもっと少なくても良いかも。

リハビリテーションに特化した回復期リハビリテーション病棟(45)

脳卒中、脊髄損傷、頭部外傷、大腿骨頚部骨折、肺炎、外科手術後などの廃用症候群、それに準じる病態など集中的なリハビリの適応となる患者にチームアプローチで原則1日9単位のリハを行う。発症から2ヶ月以内に入棟、疾患群にもよるが最大90日(大腿骨頚部骨折、廃用症候群)~180日(重度の脳卒中)とする。ADLの向上と自宅復帰率がアウトカムになる。松本地区の急性期病院から適応となる地域の患者を積極的に受ける。リハビリテーションセンター鹿教湯三才山病院からもノウハウを得て質の高い回復期リハ病棟を目指す。

安曇総合病院でも一時期、回復期リハ病棟を運営していたことがあったが、都合の良いバッファとして使われ、リハのゴールを迎えた方でも施設に行くまで規定の期間めいいっぱい入院するなどで、本当にリハビリが必要な地元の方が入院できず遠方のリハ病院に行くというようなことがあった。そういうことがないような運営が必要。
経鼻頚管がついて転院してくるなど、かなり早期から重度の人が転院してきての長期のリハニーズはある。


最後の強がり
回復期リハ病棟の使命

高齢者・がん終末期の方と家族の生活を支える在宅医療支援病棟(40+緩和ケアユニット10)


在宅医療支援を要する方は入退院を繰り返すものと考え、それに対応した仕組みを提供する。長寿医療研究センターが提唱する在宅医療支援病棟のコンセプトを取り入れる。当院でも力を入れている訪問看護と訪問診療をバックアップし、地域の二人主治医制を推進する。

・登録した方に対して訪問看護や訪問診療と連携し、急性期疾患、リハビリ、看取りやレスパイトも含めた、福祉施設では対応困難なあらゆるニーズに対して入院医療で関わる。 
・入院適応や大方針の決定(胃ろうの適応、看取りなど)には原則、登録した在宅主治医がおこなう。(丸投げはさせない代わりに一緒にみていくスタンス。)
・入院主治医は疾患や病態ごとで変わりうるが、プライマリナースを固定し、退院支援を連携の中心となって行う。担当者は一度は自宅に訪問することを原則とする。退院時などには在宅主治医も加わり時間を決め構造化した尾道方式でのカンファレンスを行う。

登録者は原則として安曇病院周辺の住人に限る。大町病院や穂高病院でも同様のコンセプトの病棟をつくるようにはたらきかけ在宅医療を推進していく。データを集積し、厚労省や中医協にも制度化を働きかけていく。病棟再建の際には在宅支援科(訪問診療、看護、居宅)の拠点も病棟に連続する場所に設置する。平均在院日数は2週間程度を目指す。退院時カンファはネットを使った遠隔会議も考慮。


ハードのみの議論ではなくネットワークをつくっていく仕組みとしてよい。
医療的に安定しても、なかなか自宅や施設に移れないケースがいつでも入院できるという安心があれば退院できるのではないか。本当に2週間でまわせるのか?収益性はどうか?医療療養型もあってもいいが、そこに入れば上がりという風になってしまう。
どうしても退院できない人はでるが、それに特化した病棟というのはなしで頑張って運営するほうがいいのではないか。
高齢者で意識がなくベッド上、胃ろう、呼吸器という状態にまでさせないような文化をつくるためにもこの様な病棟が必要。
全体を見た病棟をマネジメントは誰がするのか?精神科の医師も関わって欲しい。やる気のあるスタッフを集め根気強くやることが必要。
いい環境の土地なので広域で緩和ケア病棟のニーズはあるかもしれない。

「地域での生活を支え抜くケア」第1回北アルプス地域ケアシンポジウム


広域の精神医療センターとしての精神科病棟(90)

90床の精神科病床(開放45床、閉鎖45床(うち老年期15床))を多目的に利用。mECTやクロザピンによる治療も積極的におこなう。アルコール依存症の入院プログラム治療、身体合併症者、思春期、BPSDの激しい認知症などの入院は広域から受ける。長野厚生連立の「こころのケアセンター」として人材育成を担う。院内外へのコンサルテーション・リエゾン。メンタルヘルス、アウトリーチと相談支援体制、就労支援、地域づくり支援を強化する。


認知症や精神障害者は精神科病棟でというのではなく、身体合併症もあるのだから病院全体、地域全体でみていくような雰囲気にしていきたい。


コア・コンピタンスである総合病院精神科病床。
認知症の地域ケアと総合病院の精神科病床


健康管理増進、地域疾病管理、老人保健施設

富士見高原病院などからノウハウを得て本来の老人保健施設を運営する。健康管理、増進を推進し糖尿病やCKD、心房細動などに代表される慢性疾患の地域疾病管理をベストプラクティスを共有し、Webツールなども活用しアウトカムを設定した上で多職種・多職域で行う。地域循環連携パス、お薬手帳から発展したパーソナルヘルスレコードなどに発展させていく。
職員や地域住民も利用できるジムや温水プールの設置も考慮する。がんの外来化学療法や相談事業を推進する。


地域循環型の医療連携

近隣の老健も特養化し本来の機能が果たせていない。老健があれば病床は少なく出来る。余裕の出た人員で老健を作れる。
プールは是非欲しい。市民や職員にも有料で開放したい。
ハードウェアよりもネットワークを作って地域全体でみていく仕組みであり現実的。
地域でネットワークを作ってベストプラクティスを共有する仕組みはいろんな慢性疾患で応用ができる。
ICTの活用というのもひとつの重要なテーマ。
それぞれの病棟が特色を持って競い合いつつもコミュニケーションをとり、患者さんにとって一番良い場所で治療できるような風通しのよい雰囲気にしていきたい。
外科手術など急性期医療が集約化されていく流れは今後もつづくだろう。急性期医療のほうが上というような雰囲気はまだあり、あれもこれもやっていないと外科の医師などが来ないという院長の意見もわからないわけではない。しかし地域のニーズご実情を考えると、たまたま専門的急性期医療をやれる医師が集まった時期には、それもできるような体制にしつつ、基本的には質の高い生活期医療を丁寧にやっていくしかないのではないか。
地域医療部会としてのマスタープランとして、院内外に問いかけていくことに決まった。
これも一つのたたき台にして財務上の試算も行い、より具体的なマスタープランを作っていきたい。

近々、院長からもマスタープランが出るらしい。
いろんな意見が院内外で広く議論されることを期待したい。


まちの病院がなくなる!?
安曇総合病院・再構築に関してのまとめ、その1
安曇総合病院・再構築に関してのまとめ、その2
大北地域の医療再編と安曇総合病院の再構築私案
目指すべきは大町病院と安曇病院の連携、協業、そして統合。

病院のリストラ

ノロウィルスの集団感染

2012年04月20日 | Weblog
安曇総合病院内でノロウィルスを原因とする食中毒が発端と考えられる集団感染が発生した。

長野県からプレスリリースが出され、ニュースや新聞でも報道された。
「病院は自主的に消毒した」ってなんだ!?
ところで何故、院長名ではなく長野厚生連の理事長の名前で公表されているのだろうか?
確かに今回の件でも院長の動きはよくわからなかったが・・。

4月10日夜に病院に残って仕事をしていたら精神科病棟の離れた部屋にいる複数の患者さんが同時多発的に吐き気や下痢、腹痛を訴え診察した。
どういうことかと思っていたら、翌日にはさらに数人が同様の症状があり、他の病棟でも散発的に同様の症状の人がいたことで給食からの感染が疑われた。
幸いにも今年のノロウィルスは1日程度の嘔吐、下痢、発熱の有症状期間で軽快していったので感染者も重症化することなかった。

保健福祉事務所も入った調査の結果、患者や調理師の複数の人の便からノロウィルスが検出された。
ノロウイルスに感染した調理師が、ウイルスが手についたまま調理し、食品が汚染され、その食品を食べた人が感染したということのようだ。
本年4月のホテルニューオータニの宴会場での食中毒の事例と同様である。
この事態で院内は対策会議が開かれたり、紙皿になったり、新規入院やお見舞いや、感染者の移動の制限をお願いしたり管理職が謝ってまわるなど大変であった。
今週や来週に予定されていた病院のお花見や、病棟や医局の新人歓迎会などは自粛され延期となった。

救急外来などでも胃腸炎は散発的に流行していたが、油断もあったのだろう。
ノロウィルスはいわゆるお腹の風邪の一種でもあるが、100個程度のウィルスでも感染し、吐物が乾いて空気中を漂ったものを吸い込んでも感染するなど感染力が強いのが特徴である。まるで空気感染だ。恐ろしい。
ノロウィルスはアルコール消毒では不活性化されないので吐物は次亜塩素酸をつかって処理しなくてはならない。
以前いた病院で老人保健施設でノロウィルスが大流行したときは片っ端から点滴し、汚染物は密閉して処理するなど収束するまで大変だった記憶がある。
全然のろくないウィルスだ。むしろ呪いのノロウィルスである。

ときどき救急外来でもノロの検査をして欲しいという方が来ていたがこれまでは自費診療であり、特に希望のある場合にのみ集団内に流行した時にのみ一部に検査をしていた。
今年の4月から3歳以下の小児と65歳以上の高齢者、悪性腫瘍や免疫抑制剤を使用しているなど免疫低下者に関してのみ便中ノロウィルス迅速検査が保険適応となった。
ノロだからとわかったからといって特別な治療があるわけではないが・・。補液や脱水予防、整腸剤投与、五苓散の投与くらい・・。あとは感染が広がらないように注意することくらいか。

ノロウイルスに関するQ&A


今回はICT(Infection Control Team)の専任看護師が活躍したが、感染対策を徹底しプレコーションなど感染予防の知識を広めなくてはいけない。
私も病原体のインフェクシャスドクターにならないように気を付けなくては。

高齢者介護施設における感染対策マニュアル




木の芽どきのメンタルヘルス

2012年04月19日 | Weblog
【安曇総合病院の広報誌「きずな」、に書いた原稿です。】


 新年度が始まりました。この時期は進学や進級、異動や昇進などの環境変化でこころの不調をきたしやすく、また「木の芽時」、「春ボケ」などというように精神症状も揺れやすく精神科は忙しくなる季節です。

 新しい環境に適応できなかったり、人間関係で悩んだり、仕事内容のあてが外れたりして、希望に燃えているはずの時期なのにどうも空回りして頑張れない、これがいわゆる「5月病」で、大学新入生などに見られた現象でしたが社会人にも増えています。あえて精神科の診断名を付けるとすれば「適応障害」でしょうか。



 現代社会での仕事の多くは、感情をコントロールすることを強いられる人相手の感情労働で、精神的・情緒的な疲労感をためてしまいがちです。特に援助職は責任感や義務感から仕事にのめりこみやすく、何かの拍子に報われない気持ちになると、こころがポッキリと折れてしまうことがあります。これを「燃えつき」と呼び、新人とベテランは特に要注意です。チームで仕事をすることが何より大切です。

 メンタルの不調を感じたときには、「誰のため、何のため」に仕事をしているのか原点に立ちかえることが必要です。「はたらく」ということは、はやく、たのしく、らくになるように、くふうして、「傍を楽」にすることです。どんな仕事でも直接的、間接的に、「あなたは大切な人で生きている価値があるというメッセージ」を誰かに届けているはずです。

 こころに余裕がなくなると、自分にとって大切な物ほど大切にするという基本的なことも意外とできていないものです。良質な休養を取り生活全体をメンテナンスすることが必要です。身体の声に耳を傾け十分にケアしましょう。十二分に睡眠をとり、しっかり食べましょう。ただし毎日飲酒したり、寝酒をすることはアルコール依存症への第一歩です。生活のリズムを整え、街や自然の中にでかけたり、身体を動かしたり、本を読んだり、親しい人にグチを聞いてもらったりするのもよいでしょう。ベースキャンプである家は愛用品だけを残して片づけましょう。家族など自分にとって大切な人との関係や、仕事と生活のあり方を見なおしましょう。
 
 職場や仕事のことは上司と相談するのが原則なのですが、コミュニケーションがとれなかったりパワハラを受けていたりする場合は職場長や産業医など職域内の窓口を探してみてください。現場とトップが乖離していたり、責任者が無責任だったり、組織として人を大切にしないなど、職場の方が病んでいる場合もあります。

 抑うつ状態になると、気分は落ち込み不安や焦りばかりつのり、食欲も落ち眠れなくなります。柔軟な考えができず、疲れているのに自分からは休めず、自分や他人を責める気持ちや、死にたい気持ちがでてきます。そんな状態が続くようなら「うつ病」も疑われ、早めに精神科を受診することをおすすめします。

 精神科ではお話をお聞きして状況を整理し、悪循環から抜け出すためのお手伝いしています。病状や診断にあわせてお薬も調整していきますが、一番は「人薬」と「時薬」です。診断書をだして自宅での休養や入院療養を指示させていただくこともあり、患者はさまざまな社会的責務を免除される一方で、療養する義務がうまれます。治療は医療者と患者の共同作業であり、「養生」も大切です。自分の生きづらさの原因を知り、考え方のクセや対人関係のパターンを見直して練習するいい機会でもあります。

 人にはどんな状況からも回復する力が必ずあります。投げやりにならず焦らず丁寧に生きてみましょう。キャリアの中で求められていて、やりたくて、強みの活かせる天職に少しずつ近づけるといいですね。

脅迫マーケティングと洗脳プロモーション

2012年04月11日 | Weblog
NHKなどでも認知症の番組が増え、樹木希林などが出演するテレビCMのせいか認知症外来への予約外来が急増している。
地域で生活できているのなら、普通にかかりつけ医でみてもらって困ったら相談でも全然いいと思うのであるが・・。


多少の物忘れはあるものの、近所のかかりつけ医にかかっていて90近くまで特に問題もなく過ごせている夫婦がいた。
診療所の先生に「物忘れの薬はない?」と聞いていたら「そんな薬があれば俺が欲しいわ。」と言われていたそうだ。
しかし仕事も引退し運転もやめることを考え・・と上手に隠居していっていた。
診療所の先生に看取ってもらうというくらいまでいい関係ができていた。
長野県の方言でいえば「なから(いい加減、適当)」でうまくいっていたのだ。
テレビ番組やCMをみた息子が大慌てで「物忘れ外来」に受診させた。

それはそれでいいのではあるが・・。

認知症疾患センターでは「ものわすれ外来」として認知症に関するよろず相談を受け付けている。
市町村や包括支援センターに相談したら、「こちらにかかれと言われた」といって受診してくる方もいた。
しかし、まずかかりつけ医にかかるように話してもらいたいものだ。
その上で紹介状をもらって受診していただければその後のフォローをお願いしやすいから・・。

物忘れ外来では本人の生活史や現病歴、家族の様子などを問診し(外来看護師や認知症疾患医療センター専従ケースワーカーが相談を受けた時から作り始める。)、スクリーニングの検査をし(MMSE,CDT、うちはたいてい心理士がやってくれる)、CTやMRIなど必要なオーダーする。
ほぼ、高齢者総合機能評価のような感じになる。

徘徊や暴言、暴力などのBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)が大変なときは更に大変である。
本人の話を聞き苦しみに寄り添い、家族など周囲からも愚痴を聞き、情報を集めそれぞれに関わり方などの作戦を練ってお伝えする。こんがらかった状況を整理する通訳的な役割だ。
場合によってはお薬をだしたり、介護保険サービスを中心とした支援を増やしたりする。それでもうまく行かない場合や一時的に介護者と離れたほうがいい場合で介護保険サービスのショートスティが使えない場合(急性の身体疾患を併発している、本人が断固拒否している、暴言、暴力など)などは入院、時に非自発的な入院が必要なこともある。

粘り強く本人や家族に認知症の自然史のなかの位置づけをお話しし、薬物治療や支援などの取りうる手段を考えて提示し、またケースワーカーなどにも動いてもらって関係各所に連絡をして支援体制を組み立てる・・・。
薬物調整などをおこなったり、検査を行なっていく場合はしばらくフォローする。
訪問診療が適当な方は訪問診療をおすすめする。

かかりつけの先生がいる場合はに見立てや方針を含んだ詳細な返書をお返しするようにしている。
あちこちにかかっているが主治医にあたる医師がいない場合などは大変だ。
とても手間も暇もかかり、たくさんの人は診られないから病院の収益的にも成り立たない。

そんなことを繰り返しているうちに、地域の開業の先生も認知症をよくみてくださる先生方も増えてきた。
安定している間はフォローいただきBPSDが悪化した時などにまた紹介していただいたり丸投げではなく丁寧な紹介状をいただくとこちらも嬉しくなる。

うつ病のTV番組の時にも書いたが、認知症診療の一部分でしかない薬物治療がクローズアップされすぎている現状がある。
認知症治療薬はたしかに役には立つが適応を広がりすぎているように思う。
めったやらたらに使えばいいものではない。
薬だって使い方の上手い下手はあるだろうが全てを解決してくれる魔法の薬はない。

現状では完全に製薬会社にやられていると思う。

精神科は関連学会があまりに多い。
精神科関連学会は主要なものだけでも数十個あり似たような顔ぶれが集まる。
これらには製薬会社の息のかかった集まりも多い。



コンシューマー向けのTVCMもますます盛んになっていくのだろう。
そのうち「だんだんだだーんボケていく、だんだんだだーん忘れてく。80代の惚けに忘れ、お医者さんに相談だ~」のような直接的なCMも出てきかねない。

相談してもらうのはいいんだけど、薬は出せるかはメリットとデメリットを考えてからですよ・・・。
と思いつつ「もういい、メンドクサイ。」って薬を出すことになりかねない。



脅迫マーケティング、洗脳プロモーションにまけず、ていねいに認知症をもつ人と家族に寄り添っていく文化をつくっていきたいと思うが圧倒的なメディアの影響力を前にめげ気味である。

プロフェショナル(個人、学会など)として、これらのマーケティングに対してどのように立ち向かっていくのか、真剣な議論が必要だと思う。


アメリカのアリセプトのTVCM。
「Talk to your doctor about Aricept,Don't wait!」
エーザイは食品医薬品局(FDA)に症状の改善効果が誇張されていると警告され放映は中止されたそうですが・・。

「ここまで来たうつ病治療」やはり残念な番組でした。

認知症の新薬と疾病の売り込み(ディジーズ・モンガリング)

同じ認知症という病気を見ていても・・。(脳外科、精神科、神経内科からみた認知症)

2012年04月05日 | Weblog
ヤンセンファーマと武田薬品が共同販売しているレミニール(ガランタミン)の発売一周年講演会が松本で開催されました。

演者はいづれも地元の病院の先生方で、脳神経外科からみた認知症(一ノ瀬脳神経外科、一ノ瀬良樹先生)、精神科からみた認知症(安曇総合病院精神科 村田志保先生)、信州大学の神経内科の池田修一教授の講演(「認知症治療薬の使い方、私はこうしている。」)の三本立てという趣向が良かったのか地域の開業医、精神科医、神経内科医など多数の参加者がありました。




遅れて参加したので全ては聞けなかったのですが、脳神経外科の一ノ瀬良樹先生(一ノ瀬脳神経外科)は正常圧水頭症や、血管手術で改善した脳血管性認知症などの治療可能な認知症の話題が主でした。
さらに脳卒中や脳血管性認知症(VaD)などを,危険因子から病態の発症,進展まで,加齢に伴う一連の脳・血管の変化「血管性認知機能障害(vascular cognitive impairment:VCI)」として捉え、それにどう介入するかという話、また拡散テンソル画像が有用かもという話でした。

精神科からは安曇総合病院の村田志保副院長が、認知症診療において地域で多様な機能を果たしている認知症疾患センターの取り組みついて講演でした。
2011年のアリセプトの売上が1442億円なのに対して認知症疾患医療センターの予算は全国で7億5000万円しかなく手あげをする施設も少ないという指摘していました。
豊富なデーターや実例を紹介しながら、中核症状が進行する時期にBPSDがでて、本人も家族もぎりぎりの状態となって精神科は関わることが多いけれども、より早くから診断し有効な介入ができないか、また終末期の看取り至るまで地域でトータルでどのようにみていけるかという問題提起がありました。
また、「診断した限りは最期まで付き合う覚悟が必要。」「(認知症治療薬の)やめ時についても議論が必要」、「認知症は定義からして社会的生活が困難になった状態、どこまで寄り添えるかが問われている」と訴えました。

座長の精神神経科天野直二教授からは、「老年期の精神科には看取りまで見据えた内科的素養が要求されるがそれにどう応えられるか?」というようなコメントもありました。
認知症は内科医がきちんと見るべきという洪英在先生(長寿医療研究センター)の意見とも重なりますね。

メインの池田修一教授の講演はタイトルのような認知薬の使い方についてのは話はあまり無く、病理学から病因論に迫る最新の知見やアミロイド研究の歴史、FDG-PETによるイメージングの研究などの話が主でした。
最近のアルツハイマー病の原因としてのアミロイドベーターオリゴマー仮説や、アミロイドβ(老人斑、アミロイドアンギオパチー)やタウ蛋白(神経原性変化)、αシヌクレイン(レビー小体)可溶型から非可溶型に変化する何らかのメカニズムが働き、これらの変化は脳内を神経細胞をつたって伝播していく、そのどれがドミナントかにより認知症のタイプが決まるといったような話は興味深い内容でした。
認知機能の低下のずっと前にβアミロイドの蓄積などの変化はおこっておりMCIレベルからの認知症治療薬を使っていくのがいいかもしれないという話がありました。
それに対して座長の精神神経科天野直二教授は「それよりももっと早く(予防的に)投薬するというラディカルな考えもある。」ということを述べていました。
製薬会社は喜ぶでしょうが、臨床的に、医療経済的にさすがにどうかと思いましたが・・・。

いろんな立場からの講演で、おなじ認知症という疾患を相手にしていても科によってのスタンスの違いが見事に別れていて興味深かったです。

新しい薬が登場して認知症に対して4つの薬が使えるようになりましたが認知症診療はかわるのでしょうか?

認知症という病気に対して同じ医師でも見ているものが違うということ、そしてバイオメディカルからサイコソーシャルまでバランスよく見るのはつくづく難しいなと再度認識させられました。

認知症の新薬と疾病の売り込み(ディジーズ・モンガリング)

休日はメンテナンスデーだぞ。

2012年04月03日 | Weblog
これからは「休日」は「メンテナンスデー」と考えるようにしよう。

人は人、自分は自分。メンテナンスの方法は人それぞれ。

身体のメンテナンス、こころのメンテナンス、人間関係のメンテナンス、家のメンテナンス、愛用品のメンテナンス・・・。

まずは睡眠負債の返済。
週に50時間は寝ないと体調は保てない。
自分を元気にしてくれる気がたくさん含まれたものを食べて体を動かそう。
溜まったものをすっきり出そう。

人間関係もメンテナンスしよう。
自分にとって大切な人とほどいい関係を保てるように時間とエネルギーを注ごう。



そして身の回りの片付よう。
いらないものは捨てよう。
少しのものを大切にしよう。

溜まった家事をしよう。

部屋の模様替えをしよう。
気になっていたことをしよう。
服のとれかけたボタンを付けよう。
錆びかけた自転車に手入れをしよう。
庭に花を植えよう。
買ってきになっていたけど読めていなかった本を読もう。

自分を元気にしてくれるものを自分のまわりに配置しよう。
これは外経絡の調整だ。

休日は本来、休む日だ。
いろいろな行事や用事をいれてスケジュールを埋めるのはやめよう。

遊びに行ったり、誰かにあったり何もしないともったいないように感じてしまっていたがメンテナンスデーならば認知不協和が生じないからね。

だれにだってメンテナンスは必要。
メンテナンスをせずに頑張り続けるのは「故意に自分を傷つける症候群」「ワークアホリック(仕事依存症)」かもしれないぞ。

人生の9割はメンテナンスだ。

福寿草の群生地~やっと春が来ました。

2012年04月01日 | Weblog
週末、天気が良かったので松本市四賀の福寿草群生地に行ってみました。
福寿草まつりは先週で終わりでしたが今年は雪も多く寒かったためまだまだ福寿草はたくさん咲いてました。

一眼レフカメラを抱えた人などがたくさん来ていました。
本当は雪が残っているくらいがいちばん福寿草らしくていいのですが・・。

全てiPhone4Sのカメラでの撮影です。
このメカは実はソニー製だそうです。
広角の画角の単焦点であり凝った写真はとれませんが常に手元にありますのでチャンスを逃しません。
意外と綺麗にとれるもんですね。


黄金の花が満開です。


日当たりの良い斜面に福寿草がいっぱい。

その後、穂高の大王わさび園にも行きました。


梅でしょうか。
まだまだ緑は薄く遠くの山肌には雪が残っていますが黄色のスイセン、白色のアセビや青色のオオイヌノフグリなどが淡いパステルカラーの花を咲かせいよいよ春という感じです。
安曇野で桜が咲くのは4月の後半です。
桜前線は松本から徐々に北上し連休ごろまで楽しめます。



わさびの花も咲いていました。
これもおひたしや天ぷらにして食べられるそうです。