リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

貧困と無知に対するたたかい

2013年03月23日 | Weblog
山本周五郎の「赤ひげ」、黒澤明監督によって映画化もされました。
私はこの映画を学生時代に北海道のとある診療所に泊まりで見学にいったときに夜、泊めてもらった宿でみました。

赤ひげのことば。

「現在われわれにできることで、まずやらなければならないことは、貧困と無知に対するたたかいだ、貧困と無知に勝ってゆくことで、医術の不足を補うほかはない、わかるか」

「それは政治の問題だと云うだろう、誰でもそう云って済ましている、だがこれまで、かって政治が貧困や無知に対してなにかしたことがあるか、貧困だけに限ってもいい、江戸開府このかたでさえ幾千百となく法令が出た、しかしその中に、人間を貧困のままにして置いてはならない、という箇条が一度でも示された例があるか」

「そんなことは徒労だというだろう、おれ自身、これまでやって来たことを思い返してみると、殆ど徒労に終わっているものが多い」

「世の中は絶えず動いている、農、工、商、学問、すべてが休みなく、前へ前へと進んでいる、それについてゆけない者のことなど構ってはいられない、だが、ついてゆけない者はいるのだし、かれらも人間なのだ、いま富栄えている者よりも、貧困と無知のために苦しんでいる者たちのほうこそ、おれは却って人間のもっともらしさを感じ、未来の希望が持てるように思えるのだ」

「赤ひげ」はそうとう社会的な視点ももった医師のようですが、常に弱者の側にたち、地に足をついた実践をわすれてはいません。

日本医師会などが地域医療に貢献した医師に「赤ひげ大賞」なんてのをつくって初の表彰がおこなわれたそうです。

中には佐久の若月俊一先生や夕張の村上智彦先生のようにあえて目立って切り開いていった先生もいるのでしょうが、システムへと昇華できなかったものの、できる事を淡々とやりつづけすき間をうめて個人の努力で地域に貢献し文化をつくってきた医師はたくさんいるのでしょう。
彼らに光をあてるのはいいことだと思いますが、医療の実践を個人レベルの努力に押し付けるのは違うと思います。

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