リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

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地域社会のリカバリーを目指す医療実践

2009年01月31日 | Weblog

 社会の最後のセーフティネットである医療の現場は地域社会の抱える苦悩や問題を最もリアルに感じられる場所である。「農民とともに」をスローガンとし実践の医療を掲げる佐久病院では、受け身ではなく地域へ出て行きニーズを肌で感じ、訴え、粘り強く実践していくことを学んだ。 しかし疲弊する地域社会を象徴するように医療の現場も疲弊しており、臨床現場の主戦場からはなれていった仲間も少なからずいた。

 いのちをまもるためにかける予算の乏しさや、システムの問題もある。しかしそれだけではなく医療をサービス業の一つと考えて過度の期待を寄せ責任を果たさぬまま権利ばかりを主張するユーザーサイドと、限られた公共財である医療資源をトリアージしつつ提供している供給サイドとのギャップも大きな問題であると気づいた。最先端の医療技術をもってしても解決しえない問題はどうしても残る。老いや死、障害に対しては苦悩に共感しつつ寄り添い支えていくしかない。そこでも医学は少なからず役に立つはずだ。

 そんな問題意識を抱えながら昨年からは精神医療を中心とした現場に移り研修、実践中である。個人を生物学的な不具合のみならず、生きていく上での障害(特に見えない障害である精神障害)を個人、家族、地域社会、環境の中でとらえエンパワメントしリカバリーを支援する。 個々のケースに対しては職域を超えた多職種の専門職のチームで関わる。 福祉や教育を後ろから支えすべての人に「医、職、住、遊、友」を保証する。 一つ一つの医療実践から出発して住民運動にまで高めていきたい。 そんな実践は地域社会を再生する鍵にもなる。

 心を病む人が増えている。心は社会を反映したものであり、 社会は心を反映したものである。経済戦争の果てに破壊された地域社会を再生したい。現場で悩みながら実践をつづけ地域をつむいでいく先に答えはあるのだと思う。