リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

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湯浅誠氏講演会 「貧困は今?」@松本

2010年10月23日 | Weblog
松本で開催された生存を支える会(仮)主催の湯浅誠氏の講演会に行って来た。
一昨年に佐久の夏季大学で若月賞の授賞講演を聞いて以来2度目だ。
湯浅誠さんの作り出す空気感というのが好きで活動家として、内閣参与としてどのような活動をして来たのか興味があった。



ざっと見ても100人以上の人が来ており長野県知事の阿部守一氏も来ていた。

今回はiPhoneでTsudaりながら聴講した。
iPhoneのフリック入力ではうまく要約しながら投稿しないとついていけない。
でも、わりと集中して聞くのはいい方法かもしれないと思った。

以下、内容のまとめ。レジュメの中の図やグラフ、データなどに基づきながらの講演だったので紹介できるのは一部ですが悪しからず。

日本に貧困は無いと思われていたが、年越し派遣村などの効果もあり、貧困の存在は注目されてきてはいる。
しかし対策が進んでいるかと言えばまだまだである。
日本の若者の9割は結婚したいと考えており、子どもは平均2.1人欲しいという調査もある。しかし実際は出生率は1.38。
女性は結婚相手として年収400万円以上を望むと言うが、それを達成しているのは結婚適齢世代の2割。
6人に1人は年収200万円以下でフルタイムはたらいても200万円に達しないワーキングプアが24.5%いる。
このような状況では結婚して家庭をもつというのは厳しい状況だ。

結果として高齢者は増え、子どもは減り他国に類を見ないほどのスピードで高齢化がすすんでいる。

非正規雇用が生まれた背景として、終身雇用、年功序列の男性稼ぎ主モデルでやってきたというのもある。
企業が生活給(家族の分も含めて)を男性正社員に払い、その代わりに2-3人分働かせていた。
国も広く集めたお金を、公共事業や企業の育成に集中して投資することで間接的に国民生活を支えていた。

しかしこのモデルはもう成り立たない。

この図が今回の公演のキモだが、3つの傘が全部しぼんできて雨にぬれる人が増えている。


給与所得者数は変わらないのに給与総額はここ10年で25兆円もへった。
景気が悪かったわけではない、戦後最長の好景気にもかかわらずである・・・。

これだけ状況の変化が激しいと親世代が得てきた社会経験は使えない。
給料も右肩上がりであった親世代はじっとこつこつ頑張っていれは良くなるという皮膚感覚を持っている。
しかしデフレのこの時代、若者世代はそんなことはとても信じられないという。
世代間ギャップがありすぎて、コミニュケーションが成り立たない。
しかし「年寄りがのさばっているから自分たちがこんな目に遭っている」とか、「若いものは根性がたりん」などと、足を引っ張りあっていてもいいことはない。
精神論ではだめである。

傘がしぼむにつれ、雨に濡れる人が増え多様化してきている。
かつてはも濡れる人はいた。それは母子家庭や日雇い労働者だけだった。
非正規雇用は学生や主婦の小遣い稼ぎとしてみられており生活給としては考えられていなかったからだ。
現在、自活型フルタイム非正規は412万人いる。しかし低すぎる最低賃金では生きていけない。
生活保護支給額との整合性も言われ始めている。

これだけ非正規雇用が増え、それで生活を支えている人が増えると、もはや、かつて正社員が言っていた「あの人たちはそれで食ってない。」「俺たちに金を回せ」という言い訳が成り立たない。

しかし政府のお金の回し方は相変わらず公共事業やエコポイントや補助金など企業中心だ。

傘の外に出てしまうと、はたらいていても貧困状態である国は日本だけでワーキングプア大国だ。
もっとも母子家庭などでは昔からそうだったのだが・・。

失業して路上生活になるかどうかの分かれ目は支えてくれる家族がいるかどうか、つまり家族福祉の有無だった。
しかしその家族の支える力も落ちている。
100歳を超える死亡高齢者の年金不正受給事件などは家族の悲鳴であり、こういう事はますます増えるだろう。

では、もういちど高度経済成長を目指すべきなのか?
経済成長では貧困は解決しないし、残念ながら消費が爆発的に増える高度経済成長は一国に一度しが起きない。
その中で生まれた男性片働きモデルは破綻している。

同一労働同一賃金は賛成だが子どもの成長にともなって増える支出のカーブが増えないことが条件。
常用雇用ダブルインカムで子育てできるようにするしかない。
家庭と仕事と福祉のバランスをとる、ワークライフウェルフェアバランスが重要で、目指すのは全員参加型社会だという。

そのためには育児や介護の社会化をすすめなくてはならない。
日本は女性、障害、生活保護受給者、高齢者にはバリアフルな国であった。
しかし、そういうことをやっていると社会が持たない。

貧困は、社会の死角。制度に張り付いて光を当てて、こぼれ落ちるものは地縁血縁社縁がカバーというのがこれまでのやり方だった。
ところが家族福祉、企業福祉はどんどん縮小している。一方で公的福祉はどうか?

日本の公的サービスは複雑であり申請主義(自ら申請しないと使えない)なため使いづらい。使うにしても役所の相談員や支援員は制度に張り付いていて他の制度に横断的に関わることが出来ない。つまり制度が不十分な上に制度があっても上手く使えないと言う状況である。
ではどうすればいいのか、その切り札として個人に張り付いて光を当てるパーソナルサポートサービス、(人的ワンストップとして)を提言しているそうだ。

的確な言葉や図示で貧困問題をわかりやすく解説するのはさすがであった。

質疑応答のチャンスがあったのでベーシックインカムについてどのように考え、実現の可能性はどうなのかお聞きした。

 所得と雇用を切り離して考えるベーシックインカムは一定の評価はするが、働く権利を曖昧にしてしまうこと、いろいろ差を付けていくと今の生活保護とあまり変わらないものになること。現物支給の公的サービスの充実やその財源も必要であること、などあり一部のベーシックインカム論者の言うように「あれがあれば全部解決」みたいにいうのは間違いであるとのことであった。

 定時制高校の先生の、進学も出来ず、非正規雇用になるであろう子ども達にどのような希望の持てる話しが出来るか?という質問に「15歳の完全装備」という本とともに「活動家養成講座」への進学?をすすめていたのは面白かった。

<働く>ときの完全装備 15歳から学ぶ労働者の権利
橋口 昌治,肥下 彰男,伊田 広行
解放出版社



今回のキーワードは全員参加型社会、パーソナルサポートサービスだった。
自分が取り組んでいる精神医療の現場は、全員参加型社会(Society for All)をめざしつつ、まさにパーソナルサポートサービスをおこなっていることに気付いた。
誰もが社会に参加し、思ったことを発言できるいろんな場をを地域にたくさんつくる活動をおこなっていきたい。


岩盤を穿(うが)つ
湯浅 誠
文藝春秋


反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)
湯浅 誠
岩波書店


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「城所望先生」的」医師の生き方

2010年10月10日 | Weblog
「山梨お口とコミュニケーションを考える会」主催の講演会に山梨まで出かけて来た.
この集まりは医療や福祉、教育関係者が集まる多職種の熱い集まりだが、なんだかんだで4回目の参加。
いつもモチベーションをチャージさせていただいている。

この会の中心である古屋聡先生は牧丘病院の院長先生だがNQ(ネットワーク指数)が抜群に高い先生で、全国に師匠や弟子や友人、仲間がおりネットワークを通じてあちこちに出かけまたいろんな方々が山梨に来る。

今回は石垣島から城所望先生を招き、講演タイトルは「「城所望先生」的」医師の生き方。」
このタイトルに惹かれて山梨まで出かけて来た。




自ら健築アドバイザーを名乗る城所(きどころ)望先生の小ネタにあふれた楽しい講演で3時間もあっという間だった。

城所先生は医学生の頃から日米学生会議に中心となって携わるなど活発に活動され、臨床研修を沖縄県立中部病院で行ったのちに主に離島医療に携わられている。
会いたい人には手紙を書いて会いにいくと言うスタンスで、循環器にやや比重をおきつつ幅広い分野を広く深く極めら、世界中の師匠のもとへヒョイと出かけホームスティや短期留学され、有名な舞鶴市民病院でも医学教育にも携わられた。
循環器分野のコンスタン先生やシャー先生、診断学のティアニー先生らとも交流のあるスゴイ先生だ。

最近の活動としては子どもたちから発信して大人を巻き込むようなピアエデュケーションをおこなっている。
これは高校生によるエイズ防止活動からはじまり、高校生が中学生にピアデュケーションをおこなったのち、今度は、中学生が小学生にタバコの害について教えるなど地域全体での取り組みが効果をあげて来ていて、まさにピアマジックだ。

最近は食育や笑いにテーマは移って来ているそうで、「弁当の日」の取り組みや曻地 三郎先生の紹介もあった。

また隠岐島前病院の白石先生もいらしていて離島医療の魅力も語ってくださった。
潜っての寮やヨットや海辺のバーベキューの紹介から始まり・・・。島々と本土の病院を共通の電子カルテで結び、ネットワークで結んだり、救急隊とICLSやJPTECをやったり診療所間で曜日でローテートしたり・・。
患者も医者も選べないから、みんなで地域の住民をみるというスタンスが大切だそうだ。
仕組みを作り、できることをやる、できないことはやらない。
地域医療のABCDE(A:アンテナ B:バランス、C:コミュニケーション D: Daily Work E:enjoy)というのを紹介してくださったが、これにF:フットワークというのを追加したい。

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