リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

障害を想像出来ない人への合理的配慮を

2013年05月19日 | Weblog
支援する気持ちがあっても障害を想像出来ない人への合理的配慮を、予告なしのサプライズは反則?


「五体不満足」から最近は「自分を愛する力」などの本もあり、スポーツジャーナリスト、教師、ライターなどで活躍してきた日本一有名な身体障害者である乙武 洋匡氏。
先日、銀座の個人営業の隠れ家的イタリア料理レストランに車椅子ということは伝えずに予約し、当日に入店拒否されたということをTweetしWebが炎上しているようだ。

「乙武さん、車いすだからと入店拒否 店主「これがうちのスタイルなんでね」→炎上→店長お詫びのツイート」


この出来事についてWeb上では賛否両論のようだ。
乙武氏、店長、周囲の反応もふくめて興味深い。

どの店でもバリアフリーであり飛び込みで、ハード面、ソフト面での合理的配慮を得られるような社会が理想だが、今の日本はまだそうではない。そうではない現状の中で、どうしたら理想的な社会に近づけるのかというやり方の問題で乙武さんのやり方には疑問が残る。

乙武洋匡さんは決して単なる弱者ではない。
ルックスもよく、自己肯定感も強く、言葉も持っている。
Twitterでは60万人ものフォロワーがおり、たくさんも応援団もいる。
書籍や映画の印税収入などのお金をつかって人を頼むなどの方法でなんとかすることもできただろう。

そんな乙武洋匡さんなら店の事情も想像し「障害のことをうまく想像し理解できないという障害の人」に対して、言葉できちんと伝えようとする配慮をする、あるいはガイドヘルパーに同行してもらうなどの合理的な配慮が何故できなかったのかとおもう。

店長は車椅子の客を受け入れる気持ちがないわけではないようだ。
しかし雑居ビルにある店はバリアフリーのつくりではない。
そして若い店員と店長の2人で営業する忙しいイタリア料理店のオーナーシェフは障害者支援に関しては素人であろう。
これでは店側が圧倒的にハンディキャップを背負わせられた状態からのスタートだ。

大手のチェーン店や高級レストランならともかく、そんな店に自分の状況を伝えずにいきなり現れて、満足行く支援を受けられないことは分からなかったのだろうか。
エビアレルギー持ちの人でも予約の際に「エビがアレルギーで食べられません。」などと伝えておかないとエビ抜きの料理は作ってもらえないのはしかたがないことである。

乙武洋匡さんはそういうことを伝えるプロとして仕事をし収入を得て生活しているはずなのに、どうして今回は電話予約の際に「事前に、車椅子で、こんな困難が予測されますが配慮願いますか」と予約のときに電話しておくなどの気遣いや配慮ををサボってサプライズでレストランへ行ったのだろうか。
何冊も本をだし講演もし、言葉だって人以上に上手く使えるはずなのに。

しかし今までもさんざん苦労してきているだろうに(してこなかったらしい!)今の日本の状況をわかっていた上でエレベーターがとまらない雑居ビルの2階にある個人営業の隠れ家的店に、介助出来る人も同伴せずサプライズをしかけたのは何故なのか?

あるいは車椅子だということだけで断られてしまう経験が多く(こんな経験は初めてだとツイートにはあるが・・)あらかじめ車椅子であり介助を頼みたいということが言えなかったのか。

もっともたまにはそういうことをサボりたくても、四肢が短く車椅子ではどうしても目立ってしまい、お忍びでということも難しく、マイノリティゆえの苦労もおおいのだろが・・。

今回、店側の対応に腹を立てて店名をいれてTweetしたのは、無慈悲に断られたことへ相当頭にきた個人的な感情か、炎上することで多くの人の議論にのぼることをあえて狙ったのだろうか・・。

車椅子ユーザーは(今のところ)マイノリティなので、放置しておいて市場原理の見えざる手にまかせていたら、車椅子ユーザーのアクセスは制限されたままなので、意識的に差別禁止と合理的配慮をルール化しないと状況は変わらないのだとは思う。
TPPなんかより「障害者差別禁止条約」への批准が求められるのは確かだ。

ある特性が、ある場面では障害になり、ある場面では能力になる。ある場面ではマイノリティになり、ある場面ではマジョリティになる。身体障害を手始めに目に見えず、想像することをすることも難しいタイプの障害をもつ人のことも想像することが必要だろう。

そうなるためには当事者がどんどん声を上げていくことが必要である。
ツイッターや2chでこういった議論が盛んにおこなわれているという状況はとても良いことだと思う。

乙武洋匡さん、相変わらずいい仕事していますね~w。

乙武氏:イタリアン入店拒否について
イタリア料理店店長:乙武様のご来店お断りについて。


乙武さん入店拒否問題で考える「セレブ意識の客、セレブ意識の店」

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
線維筋痛症のようなケース (H.Tsuchiya)
2013-05-28 22:12:15
先生、線維筋痛症かとも思われる患者Mのようなケースは、どうお考えですか? 

各科の間をたらい回しになりやすい患者への合理的配慮もお願いできないでしょうか。
例えば日本線維筋痛症学会診療ネットワークの専門医につなげていただくことはそれほど困難でしょうか?
線維筋痛症 (といぴ)
2013-05-28 23:17:15
合理的配慮というのとは違うと思いますが・・。
FMの診療に関して具体的にどの医師や医療機関が適当かということに関しては申し訳ありませんがわかりません。
受診希望の医療機関や医師があれば紹介状をお書きすることはできます。
Unknown (H.Tsuchiya)
2013-05-29 03:21:58
まだご関心の外のようで、残念です。

よろしければ下記ご覧ください。

日本線維筋痛症学会
http://jcfi.jp/index.html

診療ネットワーク参加医療機関マップ 長野県
http://jcfi.jp/network/network_map/nagano/index.html
FM (といぴ)
2013-05-29 21:26:58
ありがとうございます。
疾患概念的にも治療論的にもこれからの疾患ですが最新情報をフォローして活かしていきたいと思います。

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