リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

発達障害者へ支援に関して

2013年02月25日 | Weblog
いわゆる発達障害(発達のかたより、それからなる障害状態)には自閉症スペクトラム、注意欠陥多動性障害、知的障害、学習障害、発達性協調運動障害などさまざまな障害が含まれます。
これらの発達特性は平均的な人からそのような特性を強くもち社会生活にさまざまな支障のでる障害といえる状態の人までの連続体(スペクトラム)を形成しています。
ちなみにここで障害というのは「(特別な)支援が必要な状態」というくらいの意味合いです。
学校教育の場でこれらのスペシャルなニーズをもつ子どもは全体の1割程度であると考えられています。

なぜ、このような障害ができるのかというと子どもごとに感受性(敏感なところと鈍感なところ)や産まれ持っての特性が違うからです。このため同じ経験をしても発達しやすいところと発達しにくいところができてしまいます。
発達しやすいところは才能とよばれ、発達しにくいところは障害とよばれます。
発達がかたよっていても障害状態を呈さなければ単に発達特性に基づく発達凸凹(でこぼこ)です。

自閉症特性が強い人は過敏と過鈍が混在し、対人関係においても暗黙のルールをうまく捉えて一般化して理解することに困難があります。非常に繊細な感覚や感性をもつ一方で、世界は状況の理解しにくい混乱の多いものでパニックを起こしやすいです。その結果、世界の捉え方が独特になったり想像力に困難をかかえたりこだわりにつながったりします。
ストレスがかかり余裕がなくなると昔の辛い体験を何度も思い出すフラッシュバックをおこします。
また敏感さ故に疲れやすいのですが、疲れたことに気付けないなど身体感覚を捉えるのも困難であったりします。
周囲は特に丁寧な関わりをして理解しやすいように環境を構造化し、適切にフィードバックを返してあげないと、本人のスキルはいつまでたっても伸びずパニックを繰り返し、社会の中でうまく振る舞うことができなかったりします。
マイペースで慣れることにも忘れるのも苦手ですが、はまりこむと特定の分野には深く習熟します。支援者にめぐまれ特性にあった職人的な仕事がはまると社会の中で居場所をみつけられます。

またADHD特性の子は、不注意や多動性、衝動性があり、学童期には授業時間に座っていられない、宿題を提出できない、片付けられないなどの習慣が身につかないことが主症状となります。
発達特性に加えて家庭環境などの要因も大きいです。
不幸なことに抑えこむタイプの教育者にあたると失敗を叱られてばかりでスキルも伸びず自尊心も育ちません。
彼らには適切な支援がないと思春期~成人にかけて、挫折を繰り返し「どうせ、おれなんか。」と反抗性挑戦性障害から行為障害(いわゆる非行)、反社会性パーソナリティ障害、依存症などに発展する危険性があります。(いわゆるDBDマーチと呼ばれている現象です。)
本来的に時間の感覚やお金の感覚がリアルにとらえられず、注意の切り替えが困難で、はまりこむと抜けられず、衝動的でスリルを求めるという特性からメインストリームの学校生活などで自尊心を満たされない状態が続くと、非行グループから反社会的組織(マフィア、ヤクザ)に進んだり、覚せい剤やアルコール、ギャンブルなどに依存することになったりしがちです。
ハンター的な特性、行動力や実行力、アイディアなどが活かした仕事につきパートナーにめぐまれれば社会的に大成功する可能性はあるのですが・・。

これらの発達障害をかかえる子は思春期に入り中学くらいになると、周囲から浮き上がり、いじめの対象となりやすく不登校になったりして、さらに学力や、経験、社会性を養う機会を奪われてしまいます。
人間関係で傷つき、失敗を繰り返し、社会に適応できないことに悩み、適応障害をきたし抑うつ状態となったり、ストレスをかかえやすく統合失調症を発症したりしやすかったりします。

しかし適切な環境とフィードバックのもとでは発達障害をもつ人も発達し続けます。
基本的な戦略としては、最低限のスキルを丁寧な関わりで身につけられるように支援することです。高校や大学などでも様々な発達特性に配慮した支援をおこなう学校が増えてきているのは喜ばしいことです。
障害と才能は裏表ともいえます。
職業選択などでは得意なところを活かして、不得意なことは得意な人がカバーし、どこかで何かを生きていけるように道筋をつけてあげることでしょう。
そのためには支援者はいい通訳やガイドになり当事者に寄り添って支え続けることが必要でしょう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿