鉄道改善案

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首都圏通勤路線の日中における適正本数

2015年12月27日 | 関東 その他
 鉄道ダイヤを考える際にすべからく必要になってくるのが、適正本数の割り出し方である。私自身、日中における首都圏の鉄道ダイヤを作る際に目安にしているのが、以下の値である。

 20m車の毎時運行総両数 / 通過人員最高区間の日あたりの通過人員÷1万

仮にこの値を輸送力指数と呼ぶことにしよう。例えばある路線の通過人員が最大の区間においてその値が20万人/日であり、そこに10両編成の列車が毎時6本運行されている場合、輸送力指数は 10×6 / 20 = 3.0 となる。

結論から述べると、混雑緩和と鉄道会社の収益のバランスから、首都圏の日中においては輸送力指数2.5が適正であろうと考えている。2.5であれば、座席がすべて埋まり、1つのドアにつき立ち客が0人~5人程という適切な状態であると思われる。2.5以上の路線は空いていると感じ、2.5以下の路線は混んでいると感じる。具体例を見てみよう。

小田急小田原線(日中混雑度☆☆☆☆)
 やや古いデータであるが、小田急線の通過人員は世田谷代田~下北沢の70万人である。本区間を快速急行10両×3本、急行10両×4本、多摩急行10両×2本、各駅停車8両×6本、区間準急8両×2本、特急6~10両×3本が運転される。特別料金不要列車のみで考えると、輸送力指数は 10×(3+4+2)+8×(6+2) / 70 =2.2 となる。有料特急も含めると、2.5-2.6 である。
:(体感)小田急線はいつも混んでいるイメージがありそれが数字にも表れている。特に急行に非常に混雑が集中しており、対して区間準急は空いている。2016年3月のダイヤ改正で快速急行の毎時6本化による急行の混雑緩和、区間準急の廃止で各種別の混雑が均等化されることが期待できる。

京王線(日中混雑度☆☆)
 京王線の最大通過人員/日は代田橋~笹塚の約70万人である。この区間を特急3本(10両)、準特急6本(10両)、区間急行3本(10両)、快速3本(10両)、各駅停車6本(8両)である。よって輸送力指数は 3×10+6×10+3×10+3×10+6×8 / 70 = 2.8 である。
:(体感)京王線は比較的空いているイメージがあるが、数字もこれを裏付けている。

京王井の頭線(日中混雑度☆☆☆☆)
 京王井の頭線の最大通過人員は神泉~渋谷で33万人/日。ここに5両×15本が走っている。よって輸送力指数は2.3である。
:(体感)全体的に混雑気味なうえ、渋谷寄りの車両に混雑が偏っており、渋谷寄り1両目では日中も朝ラッシュ時並みの混雑である。新東西線に直通して8両化することで混雑を緩和するとともに、渋谷駅を大改造して混雑を平準化すべきである。

東急田園都市線(日中混雑度☆☆☆☆☆)
 田園都市線の最大通過人員は池尻大橋~渋谷の69万人/日である。この区間を急行4本(10両)、準急2本(10両)、各駅停車8本(10両)である。よって輸送力指数は 10×14 / 69 =2.0 である。
:(体感)田園都市線は日中も非常に混んでいると感じる。数字もこれを裏付けており、本数が絶対的に足りていない。増発が望まれるが、渋谷駅に折り返し設備がないため難しい。今すぐ渋谷駅を2面3線化して折り返し列車を頻発して混雑を緩和すべきである。

東武伊勢崎線(日中混雑度☆☆☆)
 東武伊勢崎線の最大輸送人員区間は小菅~北千住の52万人/日である。この区間を急行6本(10両)、各駅停車6本(18m車8両:20m車に換算すると7両)、各駅停車3本(6両)、区間快速1本(6両)、特急1~3本(6両)である。有料特急を除いて考えると、輸送力指数は6×10+6×7+3×6+1×6 / 52 = 2.4 である。有料特急を含めると、2.5-2.8 である。
:(体感)東武伊勢崎線は日中の混雑度が適切な範囲にあると感じる。数字もそれを裏付けている。

西武池袋線(日中混雑度☆☆)
 西武池袋線の最大通過人員は中村橋~練馬で53万人/日である。この区間を快速急行2本(10両)、急行3本(10両)、準急3本(10両)、各駅停車8本(8~10両)、特急1本(7両)である。有料の特急を除いた輸送力指数は 2×10+3×10+3×10+8×(8~10) / 53 = 2.9である。有料特急を含めるとさらに高くなる。
:(体感)西武池袋線は比較的すいているイメージがあり、特に各駅停車はガラガラである。

西武新宿線(日中混雑度☆☆☆)
 西武新宿線の最大通過人員は下落合~高田馬場で45万人/日、本数は急行6本×10両、各駅停車6本×8両であり、輸送力指数は2.4である。有料特急を含めると少し高くなる。
:(体感)西武新宿線の混雑は平均的である。

東武東上線(混雑度☆☆)
 東武東上線の最大通過人員は北池袋~池袋の53万人/日である。ここに快速2本、急行4本、準急2本、各駅停車8本(すべて10両)が走る。輸送力指数は10×16 / 53 = 3.0 である。
:(体感)東武東上線もまた比較的すいている。

東急東横線(日中混雑度☆☆)
 東急東横線の最大通過人員は祐天寺~中目黒で約58万人/日である。この区間を特急4本(10両)、急行4本(8または10両)、各駅停車10本(8両)が走っており、輸送力指数は 4×10+4×(8~10)+10×8 / 58 = 2.7 である。
:(体感)混雑は平均的である。各駅停車が毎時10本は他線と比べても多すぎると感じる。各駅停車の乱発は優等列車の速達化の邪魔をするから、各駅停車は8本が妥当であろう。

中央線(日中混雑度☆(緩行線)、☆☆☆☆(快速線))
 中央線の最大輸送人員は新宿~代々木でおよそ108万人/日である。この区間を快速が10両×14本、各駅停車が10両×11本(ともに平日)である。輸送力指数は10×(14+11)/ 108 = 2.3 となる。
 快速線単独区間で見た場合、最大区間は武蔵境~三鷹の71万人/日。ここに10両×14本しか走っておらず、輸送力指数は14×10 / 70 = 2.0である。
:(体感)中央線の緩行線はガラガラで快速線に混雑が集中しており、特に特別快速が非常に混雑している。今すぐ快速は杉並3駅を完全に通過して混雑を分散するとともに、快速線列車を増発すべきである。

総武緩行線(日中混雑度☆☆☆☆☆)
 総武緩行線の最大輸送人員区間は秋葉原~御茶ノ水で72万人/日である。この区間を毎時11本(10両)であり、輸送力指数は 11×10 / 72 = 1.5 である。
:(体感)輸送力指数1.5は異常である。総武緩行線の秋葉原口は日中も非常に混雑しており、数字にもそれが現れている。これほどの混雑路線も珍しい。飯田橋と新小岩に引き上げ線を設けて秋葉原口を毎時18本程に増発して混雑緩和を図るべきである。

地下鉄東西線(日中混雑度☆☆☆☆)
 東西線の最大通過人員は木場~門前仲町でやや古いデータで66万人であり、近年特に増えている。ここに10両×12本が走っており、輸送指数は 12×10 / 66= 1.8 である。
:(体感)輸送力指数1.8は異常である。西船橋~門前仲町を複々線して毎時20-24本の運転とし、新東西線と直通運転を行うべきである

地下鉄銀座線(日中混雑度☆☆☆☆☆(平日)、☆☆☆(休日))
 銀座線の最大輸送人員区間は溜池山王~虎ノ門で38万人/日である。銀座線は16m車である。さらに幅が狭いため輸送力指数を出す際はこれを考慮する必要がある。銀座線は日中は20本の運転である。16m車×6両で全幅1600mmである(首都圏標準は1800mm以上)。よって長さ20m、幅1800mmの両数に換算すると、1編成は約4.3両分となる。よって輸送力指数は 4.3×20 / 38 = 2.3 である。
:銀座線は非常に混雑している印象がある。ラッシュ時の集中率の低い路線だから、輸送力指数の数字以上に日中は混雑していると感じる。ただし休日はそれほどでもない。


ここでは全ての路線を取り上げられないが、この「輸送力指数」は運賃体系が共通する首都圏の都市路線であれば概ね2.5が適切ということができる。2.5を超える路線は空いており、下回る路線は混雑している。収支状況が許すなら、各路線は2.5以上を目指すべきである。

いっぽうで中部圏や近畿圏では運賃が首都圏より高く設定されており、3.0-4.0が適性値と思われる。関西の路線のほとんどで着席可能であるのは運賃が首都圏よりも高く設定されているからである。高い運賃にして着席の機会を増やすか、着席の機会は下がるが低運賃にするかというのは難しい問題であるが、関西圏では前者、首都圏では後者となっており、圏内ではその基準がほぼ均一になっている。首都圏では朝ラッシュ時の大混雑がこの輸送形態を規定しているようにも思える。