tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

食に関する奈良県民の意識(Ⅰ)アンケート結果編( by 南都経済センター)

2012年03月07日 | 観光にまつわるエトセトラ
財団法人南都経済センターが発行する「センター月報」2012年3月号に、「B級グルメ等の食に関する県民意識調査結果」(ネットユーザー対象)という18ページもの巻頭大特集が掲載された。筆者は同センターの主席研究員で、中小企業診断士の島田清彦さんである。これは、昨年(2011年)10月号の「統計データから見た奈良県の産業構造」と並ぶ超大作だ。このレポートは大きく分けて、インターネットによる意識調査の結果分析と、県内外のご当地グルメイベントを実際に取材した報告の2部に分けることができる。何しろ大作なので、今日は前者を紹介することとし、後者はまた日を置いて掲載することにしたい。
※トップ写真は新大宮駅前の立ち食いうどん(250円)。冷凍うどん風の麺がうまい!

アンケート調査は、昨年12月16~20日までの期間中、奈良県在住の15歳以上のモニター2,410人(有効回答数800人)を対象に、インターネット上で実施したものである。例によって、まずは島田さんが「意識調査結果のポイント」として挙げた11の項目(青字部分)を列挙し、それぞれに私がコメントを加えてみる(このレポートは、近日中に同センターのHPにアップされる)。

1.奈良県の食の水準は「31~42位」31.0%が最多
47都道府県の中で奈良県の食(料理、価格、店の豊富さ、営業時間、接客等)の水準は何位ぐらいだと思うか聞いた結果である。「31~42位」31.0%が最も多く、次いで「21~30位」28.6%。つまり「21~42位」の中位グループにいると答えた人が6割(59.6%)だ。


三輪そうめん山本の「卑弥呼五色」(同本社で11.9.22撮影)

2.県民の65.3%が「奈良県を代表するような料理が乏しい」。
奈良県の食の現状に対する考え方・認識を聞いた結果で(複数回答)、50%を超えた回答は「奈良県を代表するような料理が乏しい」65.3%、「奈良県を代表するような、おいしい素材・食材が少ない」57.1%、「県外の飲食店と比較すると、奈良県の飲食店が見劣りする」55.5%、「奈良県の飲食店や料理がTVなどで取り上げられることが少ない」51.5%。

三輪そうめん、柿の葉寿司、茶がゆ、ごま豆腐など、奈良に美味しい料理や食材はいくらでもあるが、何しろ「不許酒肉五辛入門内」という「寺院」の多い土地柄なので、料理にインパクトが乏しいと感じるのだろうか。なお五辛(ごしん)とは、ネギ(玉ねぎも含む)、ニンニク、らっきょう、ニラ、アサツキの5種である。また、県下飲食店の絶対数が少ないのは事実(昼間人口が少ないから)なので、ここでは不利に働く。

3.過去5年間で奈良県の食の水準は「以前と変わらない」46.6%が最も多く、「改善」が37.3%。
私の経験によると、過去10年間で奈良の食の水準は大幅にレベルアップした。特にこの5年間では、劇的に改善している。中身を見ると、女性は「改善」43.7%が最も多く、男性は「以前と変わらない」53.1%が最も多い。年代別でみると「以前と変わらない」は、男性の40歳代で67.9%と最も高い。オトコは、特に中年男は何も知らないのだ。

「改善」と答えた女性は、概ね年代が上がるにつれて回答割合が高くなっている。特に女性の40歳代と60歳以上では「改善」が50%以上を占めており、評価が高い。平日のランチタイム、県下の美味しいレストランは中高年女性で一杯である。やはり女性はよく知っているのだ、脱帽!


柿の葉すし本舗たなかの「たなかの十八番(おはこ)」(なら本店で11.10.11撮影)

4.県民の55.9%が「おいしい飲食店・レストランが増えてほしい」、26.0%が「B級グルメの動きが活発になってほしい」。
奈良県の食についてどのような変化を期待しているか聞いた結果、40%を超える回答があったのは「おいしい飲食店・レストランが増えてほしい」55.9%、、「手頃な価格で楽しめる飲食店が増えてほしい」49.5%、「奈良県を代表するような、おいしい素材・食材が増えてほしい」49.3%、「奈良県を代表するような料理が増えてほしい」44.6%。

5.県外の友人等に推薦したい郷土料理(食べた経験があるものに限定)は「柿の葉寿司」74.6%が最多、「にゅうめん」は43.4%。
この設問の前に、奈良県産の素材・食材の認知度・食事体験度を聞いた設問があった。「食べたことがある」と「食べたことがあり、また食べたいと思う」の合計の割合は、「三輪そうめん」95.0%が最も多く、次いで「奈良漬け」85.8%、「吉野葛」78.8%、「大和茶」61.9%、「ヒノヒカリ」57.1%。

「食べたことはないが知っている」は、「大和肉鶏」35 .8%が最も多く、次いで「大和牛」33.9%、「地酒」31.6%、「月ヶ瀬の梅」28.5%、「ヤマトポーク」27.5%、「黒米」24.6%、「ヒノヒカリ」22.5%。



「食べたことはなく、聞いたこともない」は、「結崎ネブカ」72.6%が最も多く、次いで「ヤマトポーク」51.3%、「大和まな」49.9%、「黒米」39.3%が続いている。島田さんは《結崎ネブカは、収穫期間が短く、市場での流通量も少ないことから、食事体験度(食べたことがある:3.6%、また食べたい:3.8%)が低くなっていると思われる》と分析している。奈良県では、野菜がとても美味しいのに、結崎ネブカも大和まなも、こんなに認知度が低いとは、情けない。生産者もJAも自治体も、もっとPRしないといけないし、県民も、もっと貪欲に情報を収集してもらいたいものである。知らないと大損だ。

なお、奈良県の郷土料理(食べた経験があるものに限定)のうち、県外の友人等に是非味わってもらいたいと思う料理は何かと聞いた結果では、「柿の葉寿司」74.6%、「にゅうめん」43.4%、「大和の茶がゆ」27.0%、「ごま豆腐」25.4%、「めはり寿司」20.5%、「飛鳥鍋」18.1%、「かしわのすき焼き」10.3%、「田楽」10.1%、「奈良茶飯」10.0%。これは設問の「食べた経験があるものに限定」という条件が足かせになっているのだろう。要するに「柿の葉寿司」と「にゅうめん」(温かいそうめん)くらいしか、食べたことがないのだ。

6.県民の70.8%が県内におけるB級グルメの取組みは「(やや)遅れている」と認識。
奈良県内におけるB級グルメの取組みの現状をどのように思うか聞いた結果、「遅れている」39.5%、「やや遅れている」31.3%と、計70.8%が遅れていると認識。「(やや)進んでいる」は1.4%。


美ノ吉の絶品「結崎ネブカうどん」。2011.1.16撮影

7.奈良県を代表するB級グルメにふさわしい素材等は、「三輪そうめん」54.3%が最も多く、「大和肉鶏」47.1%、「吉野葛」40.9%が続く。
うーん、どうも抵抗がある。奈良県産の素材・食材のうち、何を使った料理が奈良県を代表するB級グルメとしてふさわしいと思うかを聞いた結果だが、「吉野葛」の下は「奈良漬け」29.9%、「大和牛」27.8%、「ヤマトポーク」18.1%、「黒米」16.6%、「大和茶」15.0%。これらは「A級食材」であり、決して「B級グルメ」にふさわしい食材ではない。

あまり突っ込むと「B級とは」という議論になるので深入りしないが、P5に「B級グルメ」という言葉のイメージを問う設問があり、その回答は「庶民的、身近な」74.4%、「安い・安そう」62.3%だった。だから、やはり上記食材は「B級グルメ」に使う食材ではない。「B級グルメ」という言葉からどのような食べ物が思い浮かぶかを聞いた結果も「焼きそば・焼きうどん」76.5%、「ラーメン」49.0%、「餃子」36.6%、「お好み焼き」36.1%というレベルだから、こんなチープな料理には、決して吉野葛や大和牛のような食材は使わない(使えない)。


橿原市今井町の郷土料理「大和今井の茶粥」、すべて県産食材を使用したスグレモノ(09.9.12撮影)

8.食のイベントに関して県民の40.5%が「県内で統一的な大きなイベントを開催してほしい」。
県内での食のイベントに関してどのように思うか聞いた結果、「全国的に奈良県のB級グルメの認知度が高まるのは良いことである」42.0%(最高は女性20歳代:50.0%)、「県内で統一的な大きなイベントを開催してほしい」40.5%(同女性20歳代:64.6%)と、若い女性の積極性が目立つ。県内のグルメイベントにも、肉食系女子がたくさん詰めかける。

9.県民の62.8%が「安くておいしければ、発掘型と開発型のどちらでも良い」。
これは《B級グルメは、地域で主に戦後から親しまれてきた「発掘型」と地産地消やまちおこしなどの目的で地域の食材を使って新たに作られた「開発型」の二つに大きく区分できる》ということから、そのどちらが良いかを聞いたもの。「どちらでも良い」は、正直なところだろう。

10.28.9%は「行政の支援・補助金に頼らない活動」が必要、18.5%は「行政の支援」が必要。

11.B級グルメを地域活性化につなげるために必要な料理等の条件として、県民の74.1%が「安くておいしいこと」、50.9%が「奈良産の素材・食材の積極的な利用」、41.8%が「地域住民から支持されていること」をあげている。
これも妥当な結果である。安い・うまいは当然であるが、地産地消・地元の支持というバックボーンが必要なのである。島田さんは「おわりに・奈良県への期待」として、次のように締めくくっている。


B級ご当地グルメの祭典 B-1グランプリ(姫路市で2011.11.13撮影)

奈良県には、県外からの転入者やその子孫が多いことから、奈良の食に対する関心・こだわりが少なく、奈良県産の素材・食材や郷土料理やB級グルメ等の存在を知らない人が多いと思われる。また、大阪・京都等の大都市に近接しており、多数の県外就業者や学生は日常的に県外で食事する機会が多く、その他の県民もいつでも気軽に県外へ出かけて食に関する多様なニーズを充足することができる。この利便性の高さが、奈良県内での食の発達を遅らせた一因ではないかと考える。

裏を返せば、地域の食を十分に見直すとともに、いわゆる「奈良府民」を意識した取組みとして、奈良の食材や郷土料理、B級グルメ等を知る機会、体験できる機会を積極的に増やしていくことで、奈良の食の良さを認識してもらえる余地が大きいと言えるのではないだろうか。

記事の中で、中年男性の意識が低いことを指摘したが、これは県外(特に大阪)で働き、食べたり飲んだりしてから帰り、奈良県の自宅では寝るだけ、という生活パターンによるものが多い。何しろ奈良県民の県外就業率は全国トップなのである。休日だって、ショッピングセンターのレストラン(たいていは大手チェーン)やファミレスで、家族で食事する程度なのだろう。

「生駒には美味しいものがないので、飲食はいつも大阪で済ます」「奈良には接待で使える店は少ない。ミシュラン掲載は、せいぜい7か店程度(実際には25か店が掲載された)」とボヤいたのは、いずれも中年男性である。それに引き換え、彼らの奥さんは、シッカリと県内で美味しい食事を楽しんでいる。平日のランチタイムは、奥さん連中で店は一杯だ(特にミシュラン掲載店)。彼女たちは、ここ5年間での県内飲食店の改善状況や、美味しい食べ物のありかをよく知っているのだ。

この状況を打開するには、「食」情報の発信者側(関連業者、自治体、JA、メディアなど)にも頑張ってもらわなければいけないが、最も努力が必要なのは、消費者側、特に県外に目が向いている男性諸君である。新聞などはあまり書かないのであえて指摘しておくが、結崎ネブカさえ知らずに「奈良にうまいものがない」と放言したり、「県外の友人に推薦したい郷土料理がない」という欄に漫然と○印をつける県民側にこそ、問題がある。「目が県内を向いているのか」「県内で、ちゃんと食事したことがあるのか」「友人に郷土料理を薦めたことがあるのか」と詰問したい。私が口やかましく「そこに愛があるのかい」と問い続けるのは、まさにその点である。県民が愛していない土地に、他府県人が訪れてくれる訳はない。

今回のアンケートの実施時期は、25か店もの県内飲食店が掲載されたミシュランガイドの「発表後」だった。発表後にしてこのありさまというのは、残念至極である。自らの無知を棚に上げて、「奈良県の食の水準が低い」などとうそぶいていては、いつまで経っても美味しいものにはありつけない。
コメント (4)
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