梅雨明けが近そうである。昨年初めて実を付けたサルナシの実がが、大きくなってきた。庭の草木も夏らしい香りを漂わせ始めた。
私はアスベスト患者だけが、「健康管理手帳」の対象者とばかり思っていたが、石綿を含め十種類の発がん性物質に対しても、国は「健康管理手帳」を交付していることを知った。それも、石綿以外の対象者からの相談がきっかけであった。その方は、自動車部品工場に十八歳から六十五歳までお勤めであったが、退職後、肺がんが見つかり、昨年手術を受けられたそうである。仕事の中で、発がん性のある「ベンゾトリクロリド」という物質を扱っていたそうであるが、労災対象になることを知ったのは、この六月だそうである。労災申請の仕方を相談にお見えになり、一週間かけて調べてみた結果、石綿を含め、十種類の物質について、国は発がん性を認め、「健康管理手帳」の対象者としていることがわかった。
ベンジジン、じん肺、クロム酸等、三酸化砒素、コールタール、ビス(クロロメチル)エーテル、ベリリウム、ベンゾトリクロリド、塩化ビニル、そして石綿である。
これらの物質は、多くが自動車産業の下請け会社の、部品製造過程で使われているようである。ただし「じん肺」は微小粉塵の存在するところでは、どこでも発症する可能性がある。我が広島県にも、蝋石を粉末にして「タルク」を製造している鉱山が存在するが、じん肺の多発企業である。この企業は、中皮腫の発症も見られる。蝋石に不純物として存在する石綿を含有しているからである。なんだか社会保険労務士か、弁護士の分野を担わされつつあるように思ってきた。
なぜこうしたことになり始めたのか考えた結果、労働災害に詳しい社会保険労務士や、弁護士の不在が原因だと痛感し始めた。現在日本では、癌の中で最も発生しているのは、肺癌である。これだけ多くの発癌性物質が、日常の生産活動の中で使用されれば当然に、肺癌を発症するであろうことは、容易に考えられる。
国民の安全より、経済界の要望に沿った政策が、国民の健康を奪っているのである。とはいっても、世界一の長寿国ではないかという人もいるかもしれない。しかし、世界的遺伝子調査でアフリカ、ヨーロッパ系人種とくらべ、北方系人種の日本人のあいだでは、癌の自然発生率の差は二倍であり、同じ栄養を摂取すると、二倍生きることはわかっている。アフリカ、ヨーロッパ系人種が8-10人に1人の癌発生率に対し、日本人は、18-20人に一人なのである。癌発生率が欧米に近づきつつあると言われてきたが、こうした国の厚生行政の影から、健康を脅かしているのは、食より社会環境であることが知れてくる。
今回の福島原発事故が、20年後どのような結果を示すのか、予想されそうである。脱原発を急ぐべきであろう。