てくてく日々是雑感

こんにちは。てくてくねっとの たま です。
日々のあれこれをつづります。

池澤夏樹さんの講演会 @飯田市公民館

2010年10月03日 | 本棚
飯田市公民館で行われた池澤夏樹さんの講演会に行ってきた。
図書館まつりの企画で、タイトルは
「読む喜び! ~ぼくが書いてきた小説と、編集した『世界文学全集』をめぐって~」

講演会のチラシに「知っている人は『え~!池澤夏樹さんが飯田へ?』と驚喜します。」とあるが、
私も2ヵ月ほど前に地元紙で知り、この稀有なチャンスにびっくり。心待ちにしていた。

池澤さんは、茶色いチェックのカッターシャツに綿パン、トレッキングシューズというカジュアルないでたち、
まるで近所の散歩のついでにふらっと立ち寄ったかのような気軽な格好で登場された。

お話は、飯田ゆかりの日夏耿之介の全集編纂に携わったことから、その出版社河出書房との関わり、
世界文学全集の個人編集に至るまで、そして自らの作品について。

世界文学全集を編集してみたら、そこに登場するのは「辺境、移動、マイノリティ」の作家ばかり、
しかも振り返れば自分自身もそういう小説を書いてきた、という話だった。

全集に選んだ作品から一つ取り上げて解説したのが『サルガッソーの広い海』。
イギリス紳士と結婚したジャマイカ生まれの女性が異国イギリスで精神崩壊していく話なのだが、
この小説、実は裏返された『ジェイン・エア』なのだ。

かつての文学は世界を一方の側から、つまり「中心、不動、マジョリティ」の側からしか書かれていなかった。
戦後、宗主国から独立した植民地の人々の中から、自らを主題に書く書き手が現れるようになった。

『サルガッソーの広い海』は、虐げられた側から書かれた『ジェイン・エア』。
話を聞いただけで背筋がぞくっとしたが、こういう作品を全集に選ぶのも池澤さんならでは、と感じ入った。

自身の作品については北海道を舞台にした『静かな大地』、
インドネシアと西洋、日本を渡り動く『花を運ぶ妹』について説明があった。

沖縄に10年ほど住んでいたことから、今の沖縄の状況について少しはコメントがあるかと
ちょっと期待していたけど、一切なし。
まあ、これはテーマが「読む喜び!」だから仕方ないか。
というより、きちんとテーマに即した話で、しかもテーマどおり「読む喜び!」に向けて
いざなってくれたのだから、十分なのだ。
ああ、もっと本が読みたいなあ。

一緒に行った高校生の息子、途中眠そうにしていたけれど、読書熱に火がついたのか、
帰りにロビーで販売していた本をどうしても買いたいと言うので、文学全集から2冊買って帰った。
内容はまだ息子にはハードだろうけど、
少し背伸びするくらいの気持ちになる講演会だったなら、よかったと思う。





最新の画像もっと見る