てくてく日々是雑感

こんにちは。てくてくねっとの たま です。
日々のあれこれをつづります。

『かえっていく場所』

2006年05月21日 | 本棚

『かえっていく場所』

椎名誠の小説はひとつも読んだことがなくて
ときどき、旅のエッセイを読むことがあるくらいだけど
『岳物語』に始まる椎名家の物語は、ひそかに気にとめていて
『続岳物語』『春画』と、本屋で出会うたびに、つい買っていた。

先日、本屋でその私小説シリーズの続編ともいえる『かえっていく場所』を見つけて
さっそく手に取り、最近の椎名家のことを知ることとなった。

『岳物語』ではまったく姿を見せなかった娘がずいぶんと登場していて
ちょっと驚いたが、それよりなにより
あのパワーの塊のような椎名氏が心を病んでいたこと、
さらに、いつもきりっと背筋を伸ばしているイメージの一枝さんまでも、
心を弱らせていたということに
あんなに元気に好き勝手してこれた人たちでも、やっぱりそうなんだ~~と、
タメイキが出てしまった。
まあ、でも、考えてみれば椎名誠も62歳だよ。信じられんが。

椎名家の物語に惹かれるのは、この家族4人の成熟したオトナの付き合い方だ。
今の日本では珍しい個人を尊重したスタイル。
アメリカに住む子どもたちと、旅の多い親たちが、時には世界のあちこちに散らばりながら
好き勝手に暮らしているようでありながら、しかし、根っこの部分でつながっている。

いったいどこの何がその求心力なのか。
「かえっていく場所」を、それぞれに持っているということなんだろうか。
それって、どうやって培われてくるものなのだろうか。

椎名家のことが気にかかるのは、その部分。その謎を知りたくて
この家族の物語を追っているようなものだ。


明治維新を読む

2006年05月18日 | 本棚

春先に大河ドラマ「新選組!」のDVDを観て以来、
「燃えよ剣」上下を読み
「竜馬がゆく」全8巻を完読し
その他諸々関連書籍を読み散らかし、幕末にはだいぶ詳しくなった。

とはいえ、いずれも新選組、坂本竜馬の生き様を追う物語ばかりだったので
彼らが消えた後、明治維新はいったいどんなことになったのか…。
幕末という時代は、それはそれでおもしろいんだが、
激動の数年のあと、時代はどう変わっていったのか、知りたくて
『日本の歴史〈20〉明治維新』を読破。

なんというか新鮮な感動がありました。
現代の日本の有様のルーツがここにあるのか!という感じで。

アメリカはじめ列強諸国との関係、韓国・朝鮮・中国はじめアジアとの関係も
この頃にすでにその構図が出来上がり、今に至っている。
全然変わってないんだよね!
この本を読んでいる時、ちょうど沖縄基地問題のニュースで
小泉と並ぶ稲嶺県知事のしぶい表情がテレビに映っていたが
こういう結果になるのも、維新後の新政府の政策が発端なのだと
すべてはつながっているのだと、時間の感覚を越えて感じてしまったよ。

大政奉還、王政復古から数年のうちに、
征韓論が起こり戦争を仕掛けようとしたその経緯も、初めてわかった。

幕末期に活躍した西郷隆盛や桂小五郎(木戸孝允)、大久保利通らが
新政府の関わりの中で人柄も関係も変わっていく様子が、
痛ましくもあった。
西郷隆盛が西南戦争で敗れていく過程も凄まじかった。
新選組の生き残りの斉藤一が、
維新後、新政府の警察官として西南戦争に赴き、西郷軍と戦うのだが
その関係性もなんともやり切れない。

そんな上層部のいざこざに振り回される民衆も、ほんとご苦労だった。
歴史のほとんどは「政治史」なので、民衆史はほかの著作に拠らなければ、だけど。

歴史は人間の営みのひとつひとつの積み重ねであるということを
あらためて感じた1冊だった。



ある風景

2006年05月11日 | おでかけ

ゴールデンウィークに、久しぶりに実家があった町に行った。

元実家のまわりは、団地が立ち並ぶ住宅地だったが
その団地が壊されて、いまは跡形もない草莽の地になっている。

バス通りには車も少なく、
桜並木の新緑が、道路に覆いかぶさるように茂っている。

小さな公園はよく手入れされて、緑にあふれ
休日をゆっくり過ごす家族連れが佇んでいる。

つつじの甘い香り。

静か。鳥の声しか聞こえない。

時折、ディパックを背負った熟年グループが、地図を片手に歩いてくる。

江戸の面影を残す水路には、鬱蒼と草木が生い茂り
太った鯉がうようよ口を開けている。

近くにコンビニはない。

バス停を6個も歩けば駅に着く。