道々の枝折

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脱ポリエステル衣料

2011年07月04日 | 健康管理
先月に熱中症で病院に搬送された人の数が6800人を超え、昨年の3倍にも達したそうだ。節電のためエアコンを使うことを控えていたことも要因のひとつだろうが、根本的な原因は、衣服の合繊化、特にポリエステル化にあるのではないだろうか?(前ブログ「吸汗遅乾素材のすすめ」)

熱中症の予防にはこまめな水分補給と通風が欠かせないと言われる。その理由は、発汗による体温の放熱を考えてのことだろう。ところが、その放熱を必要とする体と外気との境界にある衣服の素材については、案外顧みられていない。

今やポリエステル繊維全盛の時代、下着からパジャマ、シャツ、ズボン、ジャケットに至るまで、ポリエステル繊維を使っていない製品を見つけるのは難かしい。それほどにポリエステル衣料は普及している。

この衣料は、人間の体熱の放散という面では、綿・麻・絹などの天然繊維衣料よりも機能が低いのではないかと疑がっている。

このポリエステルという化学物質、本来は水と親和性がないという。単繊維だけでは水を吸収しないから、綿と混紡して吸湿性や風合い向上させている。更にメーカーは、単繊維に物理的な改良を加え、親水性ポリエステル繊維なるものを開発した。吸水性を高め、吸汗速乾素材という理論的に矛盾した機能をもつ素材と大々的に宣伝している。しかし、綿などの吸湿吸水原理とは本質的に仕組みが異なり、実際に験してみても効果は感じられない。

綿の衣料は汗を吸うと湿って乾きにくいが、水分を徐々に放散するときに体熱を奪い続ける。麻は水切れがよく、通気性に優れている。綿の下着と麻のシャツとの重ね着は、風速があれば、放熱の効果はテキメンで、体感温度を確実に下げる。綿素材の衣服はいったん濡れてしまうと体を冷やし続け、気温によっては低体温症を招きかねないほどだ。濡れた綿衣料は着用クーラーと言ってもよい。冬山での低体温遭難を怖れて、登山者が綿製衣料を避けるのは、その理由が大きい。

暑さにうだる夏の平地では、放熱効果の高い綿麻素材の衣料を大いに活用したい。もっとも、冷房の効いた車内・機内や室内では、高山同様綿衣料は体を冷やして冷房病を招くから、断熱性のあるポリエステル衣料を着用するのが良い。

54基中35基の原発が停止中ということで、原発事故の東電管内に限らず全国的に、家庭での節電の必要性が喧伝されている。エアコンの温度を28度以下に設定しなければならない今夏は、綿や麻など、数千年前の昔から風土に馴染み活用されてきた天然素材を見直してはどうだろう。これら繊維のもつ、汗の水分を吸収し、徐々に気化させて体熱を下げる機能は、熱中症から身を守る効果が高い。

この天然素材に対し、安価であること・保温性が良いこと・染色による発色がよいこと・強靱でしなやかなこと・軽いこと・乾きやすいこと等々、ポリエステル繊維はまさに夢の繊維だ。しかし、この中の、保温性がよい・乾きやすいという2大長所は、体熱を放散させないという大短所で、冬の衣料には好適であっても、高温多湿な日本の夏の衣料には本質的に適さないはずのものだ。ドライとかクールとかのキャッチフレーズは、乾いて通気が優れていることを示すものだが、この性能と人間の体熱を下げるメカニズムとは相関していない。薄手で手触り肌触りがサラッとひんやりしていても、着てみると暑苦しいのがポリエステル衣料の最大の特徴である。

このひと夏、試みにインナーからアウターまで、もっぱら綿または麻の衣服を着て実証実験をしてみた。取り敢えず綿100%、麻100%、綿・麻混の衣服ばかりを買い揃え、大量の夏用ポリエステル衣料を全て廃棄した。

綿、麻というと耳障りが悪く、コットン、リネンと外国語で聞かされると、何かあか抜けた衣料に感じられるのは、明治以来民族に染みこんだ拝欧根性だが、コットン、リネンこそ日本の夏に最適の衣服材料、大いに着て快適に過ごしたい。熱中症への効果はさておき、エアコンと合繊の無かった子供の頃の夏を、いま再び体験している。

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