道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

噛みつきザル騒動から

2010年09月29日 | 自然観察

静岡県東部の4市1町で、これまでの1ヶ月の間に100人を超える住民がサルに噛まれ傷を負った。いまだにその凶暴なサルは捕らえられていない。    

この神出鬼没の噛みつきザル、専門家はペットとして飼われていて逃げたサルと見ているようだ。野生サルの習性は、いきなり人を襲ったりはしないという。

この騒ぎで、かつて栃木県日光市の山中で10数頭のニホンザルの群れに囲まれたことを思い出した。

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林道を歩いていて、沢に架かる長さ30mほどの橋にさしかかったら、片側の欄干の中央部に若いサルが2尾座っていた。可愛いかったので近くに寄って行った。

橋の中央部まで進み、ふと行く手を見見ると、橋のたもと付近に、森の中から現れた数尾のサルが屯している。マズイと思って後ろを振り返ると、そちらの橋詰にも、サルがやはり数尾屯して退路を塞がれていた。

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 あらためて行く手に目を凝らすと、橋の先の森の中にリー ダーと思しき大ザルの姿が見えた。進むも退くもならず、橋の中央で立往生してしまった。山歩きをしていて野生動物を目撃したことは幾たびかあったが、サルの群れの真っ只中に入ってしまったことは初めてだった。両の脇から冷や汗が出た。

日光のサルは観光客を襲うことがあると聞いていたから、刺激しないようその場を動かず、サルの動きを見守るしかなかった。

群れのリーダーは進み出て、橋詰横の電気施設の上にあぐらをかき、高みから仲間全体の行動に目を配っていたが、闖入者の私に対しては特に警戒の態度を示さなかった。胸毛が白く風格のある容貌をしていた。

その他のサルたちは私と一定の距離を保ち、分散してそれぞれ気ままに行動していた。4足でエサを探し歩く者、座って何かをを食べる者、そして2匹で身を寄せ合って毛繕いする者など。交尾の真似事をして戯れている若いカップルもいた。

サルたちの側からは、たったひとりの人間など全く脅威でなく、毛色の変わったサルぐらいにしか見えないのかもしれないと思ったら、緊張が緩んだ。野生サルの群れとの遭遇は滅多に無い機会、サルの生態をじっくり観察することに肚を決めた。

霊長類それも旧世界ザルは、われわれに近縁の動物だけあって、高等な種になるほど彼らの内面が目に表れる。類人猿までゆかなくとも、ニホンザルでも目を見れば、ある程度そのサルの気質はわかるものだ。

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観察したサルの群れにも、いろいろなタイプがいた。見るからに悪そうな猿相のサルも(上記画像)・・・

画像のサルは他のサルから孤立していた。近づくと案の定歯を剥きだしてこちらを威嚇する。これと逆に、好奇心を丸出しにして向こうからこちらに近寄ってくる友好的なサルもいた。それらはたいていまだ若い猿だった。老いたサルたちは、食欲を満たす方に熱中していた。

しばらくして、リーダー猿が動いた。彼が森の中へと姿を隠すと、他のサル達も一斉にその後を追い、瞬く間に橋の一帯からサルの姿は消えた。あっけない幕切れだった。

今回の県東部のサル騒ぎでは、ほとんどの被害者が音もなく近づいたサルにいきなり背後から脚や背中に噛みつかれている。たった一度だけの体験だけで判断するのは早計かもしれないが、集団で居るときは、サルは人に対して恐怖心をもたないのではないだろうか。はぐれザルは不安で過剰防衛的になりがちなのかも知れない。そこは人も猿も同じだろう。一般に動物は、恐怖に駆られたときに人を襲うことが多いという。

ニホンザルのような、集団で生活を営む動物は、動物園のサル山のような飼い方が適切なのだろう。自然の中での野生サル達のおおらかな生態から考えると、群れの仲間から引き離され、行動の自由を奪われたサルが、野生のときのそれと違う生き物に変わっても、不思議ではないのかもしれない。

 


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